まず初めに
「天よりの宝札」とは、元々は遊戯王OCGの原作マンガ「遊戯王」に登場した、非常に強力な効果を持つ魔法カードである。
後にOCG化され、実際のデュエルでも使用できるようになるのだが、原作での効果があまりにも強力過ぎるためにかつてはOCG化されたらどんな事態になるかと囁かれていた。
天よりの宝札(原作)
原作の「天よりの宝札」は、現実のカードテキストに合わせた表記をすると以下のような効果である。
(1):お互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにデッキからカードをドローする。
ライフも手札もコスト無し、リリースなども一切不要、発動後も特にデメリットが無いドロー加速カードという、どこからどう見てもぶっ壊れている究極レベルのパワーカードである。唯一の弱点は相手にも全く同じ恩恵をもたらしてしまう点だが、これだけの効果が適用されるメリットと比べればそんなものリスクのうちに入らないだろう。
あの海馬瀬人をして「最強の手札増強カード」と言わしめる恐るべきカードである。当然というべきか、原作やアニメでは多くのデュエリストがこのカードをデッキに投入しており、ここぞというタイミングで使用され、様々な形でデュエルを盛り上げた。
ちなみに原作においては「手札から召喚・発動・セットできるモンスターカード・魔法カード・罠カードはそれぞれ1ターンに1枚まで」「場に出せるのはモンスターカード・魔法カード・罠カード全てを合わせて5枚まで」というルールが存在するため、実はこの効果で大量にドローしたとしても「天よりの宝札」が魔法カードであるためにそのターンはもう魔法カードは使用できず、次ターン以降も大量に魔法カードだけ来てしまったりすれば手札を持て余す事態にもつながりかねないというリスクがあった。無論、相手側も大量にドローするため、そこから逆転の糸口をつかまれたり、相手側の戦力を増強する結果になったりする危険性もある。そのため、確かに強力ではあるものの、ルール上の理由により相応のリスクは覚悟して使う必要があるカードでもあった。
しかし、アニメ版では実際のOCGに限りなく近いルールになっているため、完全にトチ狂ったカードとなってしまっている。
天よりの宝札(OCG)
さて、前述したように現実世界の遊戯王OCGにおいては、原作には存在した1ターン中の魔法のプレイに関する制限は無い。つまりこのカードが原作の効果を丸ごと再現してOCG化された場合、大変な事態になってしまうのは明白であった。そのため、「このカードは決してOCG化されない」「仮にOCG化されるとなれば大幅な弱体化を喰らう」と予想されていた。
そして多くのデュエリストの予想は的中。ついにこのカードがOCG化される事となったが、かなり弱体化されてしまった。
いや、弱体化というか、全くの別物となってしまった。
以下がOCG化された「天よりの宝札」の効果である。
通常魔法
(1):自分の手札・フィールドのカードを全て除外して発動できる。
自分は手札が2枚になるようにデッキからドローする。
自分の手札とフィールド上のカード全ロストという甚大な発動コストの割にドローできるのは2枚だけ。また、相手には一切影響を与えない。再現されたのは通常魔法である点とカードのイラストのみであった。ちなみに発動コストのせいで手札やフィールドにカードが無い場合は発動できない。タイミングを選ばず発動できる魔法カードの強みにまで制限が掛けられている。
原作効果そのままのOCG化はあり得ないというのは仕方ないにしても、これほどまでに弱体化されるとは誰も予想できなかったと思われる。というか、繰り返しになるがここまで来ると完全に別物である。
決してメリットが全くないわけではないが、いかんせんコストが重すぎるため、現状としてはOCGにおいて天よりの宝札を採用するデュエリストは極めて稀。
どうしても採用したいのであれば異次元の偵察機やジャイアント・レックスといった除外されると帰還するモンスターも投入したいところである。
なお、一応原作出身のカードだからなのか、その使いづらさの割に初登場時はスーパーレアカードだった。
その後…
このカードのOCG化から17年後のOCG第11期、カードのインフレが進んだこの時代において原作(どころか上記のトチ『狂った』アニメの)仕様がほぼ再現されたオシリスの天空竜専用サポートカード「蘇りし天空神」が登場した。
「オシリスが墓地にいないと発動できない」「魔法カードではなく罠カードである」という違いがある為完全再現とは流石にいかなかったが、現代におけるインフレの象徴の一つであると言えるだろう。
こらちのカードを使えば遊戯が行っていた「天よりの宝札と手札増刷とオシリスの攻撃力上昇のコンボ」を再現出来る他、もう一つの効果やイラストも「闘いの儀」の死者蘇生を巡るクライマックスシーンを再現した物となっている為、原作・アニメファンにも嬉しいと一枚と言えるであろう。