概要
円筒形で、不用のときは小さく畳んで懐中に入れて携帯のできる提灯のこと。童謡「お猿のかごや」の歌詞にも登場することで有名。
東海道五十三次の宿場町であった小田原(後の神奈川県小田原市)は旅人の往来が多く、江戸時代中期に小田原の甚左衛門(じんざえもん)という提灯職人が旅人が携帯しやすいよう考案したものが起源とされる。
①上下の蓋が大雄山最乗寺(南足柄市)の霊木で作られているので、道中の魔除けになると信じられていたこと。②折りたたむと懐中に入るので懐提灯ともいわれ、携帯に便利なこと。③本体の胴部蛇腹部分に使われている竹ひごが四角形に削られているので糊付け面が多く、雨や霧にあたっても剥げにくく丈夫なこと。これら三つの特徴を「三得」と呼ぶ宣伝文句により、江戸時代には全国的に普及し、小田原土産としても知名度が高かった。
ただ、実用品としての価値が高かったぶん、近代に入ると提灯の役割は懐中電灯などにとって代わられ需要が落ち込み、今では小田原市内に存続する提灯屋はたった2軒のみとなっている。
しかしながら、JR小田原駅の改札口の上には巨大な提灯がぶら下がっていたり、毎年夏には「小田原ちょうちん夏まつり」が開催されているなど、現在も小田原提灯は小田原のシンボルとして市民に親しまれている。