概要
心電図とは医学において多用される図の一つである。心臓が駆動するために発する電気の電圧と電流の方向の情報を線で表したものである。英語ではECGと略される。また稀に、ドイツ語由来のEKGという略表記が使われることもある。
手術や集中治療などでは血圧及び酸素飽和度(血液中の酸素濃度)とともに必ず記録される。(なお、余談だが脳波は一般に思われるほど使われていない。これは心電図と比較して波形が複雑であり、神経内科医・脳神経外科医・精神科医などの専門家でなければ十分な解釈ができないため。)
通常は手首と足首の計4ヶ所に電極(正確には右足首は電極ではなくアース)をつける肢誘導、またはそれに加えて心臓を囲むように胸に6ヶ所の電極をつける胸部誘導という条件で記録する。それぞれ6本、12本の線が記録されるが、もっとも重要なのは「Ⅱ」の線であり、モニター表示ではこれだけが表示されている場合が多い。
肢誘導の概略図。大雑把に言うと、単純に各電極同士の電圧差を記録したのがⅠ・Ⅱ・Ⅲ、3つの電極の合計をゼロとして各電極との差をとったのがaVR・aVL・aVFである。
なお、心電図とは上記のように手足と胸に電極を付けて、体の外側から測定するものである。近年は医学の発達により心臓の中にカテーテルを挿入して血圧を記録する「心臓カテーテル法」も行われるようになったが、こちらは心電図とはまるきり別物なので留意されたい。
・心電図……心臓の電圧の変化を測る。
・心臓カテーテル……血圧や酸素飽和度を測る。電圧を測ることもあるにはあるがかなり特殊。
形
漫画内での入院中や手術、救急医療のシーンなどで「それっぽい」心電図を描くための大まかな概略を示す。
正常な心電図は大雑把に言うと
・0mVを表す水平線(基線と呼ばれる)
・P波と呼ばれる1目盛り程度の上向きの小さな山
・短い基線
・Q波と呼ばれる下向きの谷
・R波と呼ばれる上向きの急で大きなとがった山
・S波と呼ばれる谷(QRSでひとつの大きな山)
・短い基線
・T波と呼ばれる緩やかな山
・基線に戻る
というサイクルの繰り返しである。T波のあとにU波と呼ばれる小さな山が出ることもあるが、一般にはほぼ見えないので医療専門向けでないイラストでは無視してよい。
つまり、メイン画像は形状についてはかなり正確であると言える(ただしそれぞれの波の高さや幅は心臓の状態によっていろいろであるので一概にメイン画像のとおりとは言えない)。
正常な脈拍では、この一連の繰り返しがほぼ等間隔で出現する。もちろん、運動や緊張などで脈が速くなれば波と波との間隔は狭まるし、ゆったりとくつろいでいるときは間隔が広がり気味になる。
ここで気を付けてもらいたいことは、上記の一連のサイクル(P波が出てからT波が消えるまで)に要する時間(つまり、サイクル全体の幅)は、心臓が正常に機能している限り、脈が速くなろうと遅くなろうと変わらないという点である。脈が速くなるときは、前のサイクルのT波が消えてから次のサイクルのP波が出現するまでの時間が短くなっている。つまり、サイクルどうしの間が狭まっているということである。脈が遅くなるときはこの間隔が延びている。
不整脈ではサイクルの出現するリズムが乱れたり、波そのものが変形したり、基線に細かい波が現れたりする。
心臓が停止し死亡した場合は、完全に波が消え基線のみが表示される(Asystole)が、一時的な心停止はその他に再び波が出現する。なお、単に「心停止」といった場合はAsystoleの他、無秩序な波である心室細動(VF)、先述の2つのパターンに移行する可能性が極めて高い心室頻拍(pVT)、電気的には活動が認められるが実際には心筋が動いていない無脈性電気活動(PEA)の3つのパターンを含むことに留意されたい。
心電図の記録用紙(もしくはモニター画面)には方眼罫が引いてある。方眼の目盛りは原則1mm間隔で引かれ、5目盛りごとに太く描かれる。横軸は小さい目盛りが0.04秒であり大きい目盛り5つで1秒に相当する。縦軸は小さい目盛りが0.1mVであり大きい目盛りは0.5mVに相当する。
成人の心拍数は1分あたり60~90回程度であるので、1サイクル(PとPの間隔)は大きい目盛りで5~7目盛り程度である。
ただし、以上に記したのは成人の心電図についてであり、赤ちゃんや子供の場合は正常パターンが異なるので、留意すること。
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