概要
『ウルトラマンダイナ』第38話のサブタイトルにして同作に登場する戯曲の題名。実相寺昭雄監督の平成ウルトラマン第3回監督作。
一人の人間の空想が現実を侵食していき夢と現の境界線が崩れた世界で巻き起こる事件、要所要所で差し込まれる目紛しく幻想的な映像美の数々と、実相寺昭雄監督作品の中でもトップクラスの出来栄えとなっている。
予告
上がった幕はもう下りない。
この世が地獄に変わるまで、あなたは演じ続ける。『怪獣戯曲』を
次回、ウルトラマンダイナ『怪獣戯曲』
もうこの幻から逃れられない
あらすじ
開幕
一人の男が叫びながら走ってくる
「怪獣だ!怪獣が来る!怪獣ブンダーが来る!」
街で一人の男が「怪獣ブンダーが来る」と喚き散らしていた。
やがてその言葉通り、突如バベルの塔に似た怪獣ブンダーが出現する。
TPCに運び込まれたその男は記憶喪失のようだった。カメラに写された所持品から、劇作家の鳴海浩也と関係が深い事が分かり、アスカとカリヤは鳴海家に向かった。
怪獣ブンダーとは、鳴海の書いた脚本『怪獣戯曲』に登場する架空の怪獣の名前だった。鳴海の書いたこの脚本は演劇雑誌に掲載されたものの、その結末を良しとしなかった鳴海自身の手によって封印されたのだった。
そしてその本の中には、一枚の皺一つない銀色の紙が挟まっていた。
鳴海の日記の中に詳細が書かれており、ブンダーは記憶喪失の青年を利用して『歪んだ真珠を馬の糞と共にフラスコに入れ、40日間、華氏451度で熱し、更に40週間、物語の血、肉、骨格と共にマンドラゴラの根を与え続ける』という錬金術じみた方法で生み出したもので、倒す方法は「娘」に託したのだという。
カリヤとアスカは男の病室へ脚本を持っていくが、アスカは鳴海の罠である謎の階段にはまり何処か別の世界へと飛ばされてしまった。
一方、病院にて脚本を目にした男は「見える」と呟く。何が見えるのかとカリヤが尋ねると男は「舞台」と答えた。
「そう…私は俳優だった
鳴海先生は、記憶喪失だった私を拾ってくださった
そして、役者として育ててくださった」
男は自分を歴史上実在した記憶喪失の少年カスパー・ハウザーになぞらえて執事兼劇団員として傍に置いていた事、怪獣戯曲の上演が近い事、そしてある日突然劇団員を集め解散の日を告げた事を話す。
記憶喪失者で名高いのは、19世紀、ドイツはニュルンベルクに突如出現したカスパー・ハウザーなる少年である
貴族の落とし種とも別世界からの来訪者とも言われ、その存在は大いに当時のロマンチシズムを掻き立てた
「待っていたぞカスパー・ハウザー、ロウマンの申し子よ 怪獣戯曲の上演の日も近い、これで我が劇団も解散だ」
「臆する事は何も無い、書を捨てて街に出るんだ」
「私は現実の世界を、私の妄想で支配してやるんだ!」
「舞台稽古は終わった、諸君は、劇場としての街に戻ってくれたまえ
私はこの戯曲の結末を封印しよう…こんな大団円では意味が無いんだ
駄目なんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「それで、鳴海は何処へ行ったの?」
「何処かでブンダーを見ているでしょう…」
街に天下ったブンダーを倒すべく、勇者達が果敢な戦いを挑んだ
だが、その攻撃もブンダーには歯が立たなかった
ある者は、ブンダーの必殺の一撃に翼を失い
ある者は、雷に打たれ
また、ある者は逆巻く砂嵐の餌食になった
それが、勇者達の運命だったのだ
そして、最後に残った勇者が一人
だが、錬金術師は光の勇者にも巧みな罠を張っていた
スーパーGUTSは戯曲の脚本通りに次々とブンダーに倒されていく。
一方、古典的な意味での劇場に囚われていたアスカはシンジョウ・マユミに扮した鳴海の部下に「貴方は自分がウルトラマンダイナだという夢を見ていただけ TPCもスーパーGUTSもこの世界には存在しない、全部貴方が頭に思い描いた夢」と告げられる。其処に鳴海も現れる。
「私は人類滅亡の大団円の観客となる
お前に、邪魔されたくないからね」
拘束を振り解こうと懸命にもがくアスカだったが、突然苦しみ出しもがくのを止めてしまう。
その時、カリヤとマユミは真相に辿り着いた。本に挟まれていた銀紙は筒状に丸めて表紙に置くと別の絵が現れるというアナモルフォーシス、隠し絵が仕込まれていた。
光が降り注ぎ拘束が消えアスカはウルトラマンダイナに変身。
鳴海が怪獣戯曲を封印した意味が今や明らかになった
彼の想像力も大団円にウルトラマンダイナを出現させる事で戦いと戯曲を完結させていたのだ
だから、その結末を鳴海は気に入らなかったのだ
ブンダーはダイナと互角に渡り合うが自分の『空間を捻じ曲げる能力』の使い方を誤り、自分で作り出した自身の虚像に惑わされた挙句、自らの腕で自分自身を刺し貫いて自滅してしまった。
アナモルフォーシスのトリックで歪められていたダイナとは逆に今度はブンダーのフォルムが歪み始める。
砕け散るブンダー。
空に吸い込まれ消えていき、後には星だけが輝いていた。
夢と現の垣を払った鳴海は、何処へ消えたのだろうか?
また世界の何処かで、新たな怪獣戯曲を書き始めているかもしれない
そして数年後…
「今一度、現実と妄想の垣根を取り払ってやる」
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