概要
「書」、「尚書」または「書経」という。
「書」とは「書かれたもの」「記録」という意味であろう。「尚書」は「上代(古代)以来の書」であるというのが通説である。「書経」は経書の一つであることからの命名だが、その起源は不明である。
その内容は、主として上代の聖天子といわれる堯・舜を始め、夏・殷・周三代の帝王の政治および詔誥を収めたもの。
編者は全く不明。孔子といわれているが、信じ難い。
政治上の根本的な主題として、君主自身が自己の人格を修練して徳性を発揮することと、刑罰を与えることを慎重にすることとが説かれている。
今文で伝わった篇と古文の篇とがあり、今文は漢代から伝承されたものである。
古文は真の古文でなく偽作であるが、それにも拘わらず朱子の学説の根本をなすべき語句が擬古文中にあり、受容されてきた。偽古文はまるまる偽作されたのではなく、その中には「真古文」と匹敵する古いものが含まれているのである。
注釈は、漢の孔安国の注といわれるものと、それを敷衍する孔穎達の正義、朱子の門人・蔡沈の集伝が重要なものである。
東洋の古典として日本でも尊重され、国家の基本である元号の典拠としてもしばしば採用される。 近代では『書経』を典拠として「昭和」・「平成」の元号が建定されている。
研究・国訳・関連図書
- 野村茂夫『書経』(新装版中国古典新書)明徳出版社、昭和49年6月
- 白川静『金文の世界』平凡社、昭和46年1月
- 池田末利『尚書』(全釈漢文大系)集英社、昭和51年7月
- 小南一郎『尚書』(世界古典文学全集)筑摩書房
- 赤塚忠『尚書』(中国古典文学大系)平凡社、昭和47年6月
- 加藤常賢『真古文尚書集釋』明治書院、昭和39年
- 貝塚茂樹『中国古代史学の発展』弘文堂書房、昭和42年