概要
五経のうちで最も重要とされ、その首位に立つ。
本来うらないの書で、万物の変化と倫理の関係を説く。
殷代の亀甲による卜法に代わる周の筮という占い方にともない、『周易』ともいう。
「易」とは、色が変わるカメレオンや、背中が七色に光る綺麗なトカゲといったものの象形文字であると言われる。
その変化という意味を取り、英訳された際の題名は「The Book of Changes」とされた。
また、易という言葉には上記の変易にあたる意味のほか、
「簡易(誰でも簡単にできる)」と「不易(変わらぬ真理)」の意味も含まれると解説する人もいる。
内容は、基本的な占いの言葉を中心にした六十四卦の説明である経と、その敷衍的説明である経に対する伝(十翼)に分かれる。経は卦(か)の象徴である図とその説明とによって成立し、十翼にはかなり難解かつ抽象的な記述がある。
※卦…乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤。
※十翼…彖上下・象上下・繋辞上下・説卦・文言・序卦・雑卦。
東洋の古典として日本でも尊重され、国家の基本である元号の典拠としてもしばしば採用される。近代では『易経』を典拠として「明治」・「大正」の元号が建てられている。
占い方
筮竹を使う易者の姿が一般的なイメージであるが、3枚もしくは6枚の硬貨、または8面ダイスなどを投げて行う擲銭法という方法もある。
また6枚を一度に投げるやり方の際、6枚のうち1枚を種類の異なる硬貨とし、その異なる硬貨を変爻とする方法も散見される。
詳しくは「擲銭法」で検索すると詳細を載せた多くのページが出てくるので、そちらをご参照されたし。
また、人によっては「筮竹を使う方法こそ正統なもので、コインやさいころを使う方法は正統なものではない」と主張していることがあるが、特に根拠はない。
易から出た言葉
易の中の言葉はなじみのある熟語が非常に多い。
乾坤
同人(卦の一つ。字面の通り、同人誌の語源)
文明(同人・賁の卦)
観光(観の卦四爻より)
革命(革の卦)
講習(兌の卦。また、同卦から名前をとった大学が麗澤大学。)
化成(賁・離の卦。旭化成の社名もここから)
庶政(賁の卦)
天文・人文(賁の卦その他)
口実(頤の卦)
形而上・形而下(繋辞伝上)
虎視眈々(頤の卦)
君子豹変(革の卦より。良い人が突然心変わり、裏切りをするという使われ方をよくされているが、これは誤用。正しくは、君子は誤りがあれば素直にこれを改め、常に自己改革するという意味)
虎の尾を踏む(履の卦)
招かれざる客来る(需の卦)
霜を履んで堅氷到る(坤の卦)
君子以て自ら彊めて息まず(自彊不息)(乾の卦)
登場する作品
高い城の男 : 登場人物が易占いで出た卦を読み解いていくことで、話が展開されていく
国訳・研究・関連図書
- 赤塚忠『易経(抄)』(中国古典文学大系)平凡社、昭和47年6月
- 赤塚忠『易経』(中国古典文学大系)明徳出版社、昭和49年3月初版(平成24年九版)
- 宇野哲人『易経』(国訳漢文大成)国民文庫刊行会、大正年間初版(平成12年再版)
- 高田真司『易経』岩波文庫、昭和44年7月初版(平成25年五十七版)
- 公田連太郎『易経講話』明徳出版社、昭和33年初版(平成25年二版)
- 本田済『易』(中国古典選)朝日新聞社、平成9年2月初版(平成26年八版)
- 鈴木由次郎『易経』(全釈漢文大系)集英社、昭和49年
- 鈴木由次郎『周易』(アテネ新書)弘文堂、昭和32年
- 聞一多『易経新義』
- 于省吾『易経新証』
- 平木場泰義『易学大事典』
- 加藤大岳 著作多数。その著作の発刊元であった紀元書房は既に倒産しているため、多くの人が初学者の参考資料にと名を挙げる易学大講座は古書店以外では手に入れにくい。図書館から借りてデジタルカメラで全ページを撮影、破壊せずに自炊して保存するのが、気の長い作業にはなるが、最も安価に入手できる方法であろう。地元図書館にない場合でも、他館からの資料取り寄せ制度を使って借りることができる(その場合、かなり遠方から借りることになると送料を負担せねばならない場合もあるので注意)。
ほか、関連図書は数多く存在する。また近年では解説サイトもいくつか出ているため、
それらを比較し見ていくのも易経理解の助けになるであろう。