概要
松島町とは、宮城県沿岸地域中部にあり、七ヶ浜町および利府町と共に宮城郡の一部を成している町である。
古代以来は歌枕として、中世では死者供養の霊場として、近世中期から現在に至るまでは観光地・景勝地として広く知られており、日本三景の一つに数えられている。
松島湾に面しており、観光業と並び、主に牡蠣の養殖を中心とした水産業が盛んな地域の一つである。
隣接市町村は、東松島市・遠田郡美里町・大崎市・黒川郡大郷町 、宮城郡内では利府町がある。
一般的にイメージされる「観光地としての松島」は仙石線の松島海岸駅周辺の風景である。
名前が同じだからと東北本線に乗り、松島駅で降りるとイメージとの違いに驚くことになる。
間違って松島駅に来てしまっても、徒歩15分ほどで松島海岸駅周辺まで行けるので気を落とさないように。
地形
奥羽山脈から太平洋にまで至る舌状台地である松島丘陵が海(松島湾)に没する形になっている。
鉄道
歌枕に詠まれる松島
雄島は松島にある島の一つで、死者供養の霊場「奥州の高野」とも呼ばれていた。
現在も当時の修行僧や巡礼者の手によって掘られた仏像や石塔、板碑が見られる。
源重之(9世紀。「後拾遺和歌集」収録)
「松島や 雄島(をじま)の磯にあさりせし あまの袖こそ かくは濡れしか」
三十六歌仙の一人。平安時代中期の貴族・歌人。
清和源氏、上野太守・貞元親王の孫で、三河守・源兼信の子。
殷富門院大輔(12世紀半ば。「千載和歌集」収録)
「見せばやな 雄島(をじま)の蜑(あま)の 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変わらず」
女流歌人。
この歌は、前述の源重之の歌を本歌取りしている。
東日本大震災による被害
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、犠牲者を含む被災者、史跡・観光施設・養殖施設・船舶の破壊・流失・浸水、及び自然地形の崩壊など甚大な被害が発生した。
出身著名人
青木存義:国文学者・唱歌作詞家・小説家。童謡「どんぐりころころ」の作詞者。
手代木史織:漫画家。宮城県石巻市出身、宮城郡松島町育ち。
史跡
瑞巌寺(ずいがんじ)
伊達家ゆかりの寺として有名な寺院。宗派は臨済宗妙心寺派。
昭和28年(1953年)、本堂が国宝に指定されている。拝観料は大人700円、小人400円。
平安時代に創建され、宗派と寺号は天台宗延福寺、臨済宗建長寺派円福寺、現在の臨済宗妙心寺派瑞巌寺と変遷した。古くは松島寺とも通称された。
境内の臥龍梅は、伊達政宗が手植えしたものと伝えられている。
今に伝わる桃山様式の本堂などの国宝建築を含む伽藍は、伊達政宗の造営によるものである。
元禄2年5月9日(1689年6月25日)に俳人・松尾芭蕉が弟子の河合曾良と共に参詣している。
この事に因み、毎年11月第2日曜日には「芭蕉祭」が行われる。
五大堂(ごだいどう)
瑞巌寺の境外仏堂で、景勝地・松島の景観上重要な建物。
現在は国重要文化財指定されている。拝観料無料。
大同2年(807年)に征夷大将軍・坂上田村麻呂が奥州遠征の際、毘沙門堂として建立したのが始まりと伝わっている。
現在の五大堂は、慶長9年(1604年)に伊達政宗が瑞巌寺の再興に先立って再建したもので、このため「東北地方最古の桃山建築」と言われている。
本州海岸に近い小島に建立されており、本州からは足元に海が見える「すかし橋」を渡って往来が可能。
円通院(えんつういん)
瑞巌寺に隣接する寺院。国重要文化財。
伊達忠宗(二代目仙台藩主)の次男・光宗の霊廟。
支倉常長がヨーロッパから伝えた西洋文化の影響が強く、厨子の右扉の内部には日本最古といわれる西洋バラが描かれている。
その事に因み、一時は境内にバラが沢山植えられ「バラ寺」として親しまれていた。
現在はバラが少なくなり、代わりに苔を配する事で「コケ寺」として新たに親しまれている。
観瀾亭(かんらんてい)
元は伊達政宗が豊臣秀吉から譲り受けた伏見桃山城にあった茶室。
江戸品川の藩邸に移築したものを、二代藩主・伊達忠宗が一木一石変えず松島に移したと伝えられている。
観光施設
みちのく伊達政宗歴史館
藩祖・伊達政宗の生涯を伝える博物館。
ザ・ミュージアムMATSUSHIMA
1992年にベルギー王立博物館に所蔵されていた134点のオルゴールを譲り受け「松島オルゴール博物館」として設立された。
このため、県民の間では「松島オルゴール博物館」(または単に「オルゴール博物館」)が通称となっている。
2008年8月31日にリニューアル工事のために一時閉館し、同年10月10日に「ベルギーオルゲールミュージアム」と改称、再開館した。
2011年4月18日に復旧再興を断念し閉館を発表したものの、2年後の2016年に「ザ・ミュージアムMATSUSHIMA」と改称し、新たに「北原トイコレクション」と「瀬川モードコレクション」を展示に加え再開館している。
藤田喬平ガラス美術館
ガラス工芸家・藤田喬平の作品を収蔵・展示する個人美術館。
松島温泉湯本 松島 一の坊の敷地内にある「松島一の坊 洗心」1階に開設されている。
宮城県松島離宮
マリンピア松島水族館跡地に2020年10月にオープンした複合観光施設。
昭和43年3月に焼失した松島パークホテルのレツルタワーが再現されている。
余談
- 1922年(大正11年)12月3日、アルベルト・アインシュタインが、月見をするために訪れている。
- 福浦橋の通行券に描かれているイラストは、出身著名人の項でも名が挙がっている手代木史織の手によるもの。
- 日清戦争及び日露戦争で活躍した旧日本海軍の巡洋艦で三景艦の一隻・松島型防護巡洋艦「松島」の艦名由来となっている。
- キングコング対ゴジラでは、松島湾からゴジラが上陸している。