概要
江戸時代の奇談集『絵本百物語』に記載される、霊が宿る樹木であるとされる柳にまつわる婆の怪異譚。
『奇談類抄』という古い書物によると、常陸国鹿島(茨城県鉾田市)には、樹齢千年を超えると伝わる柳の木があり、美女に化けて人々を惑わせたり、老婆の姿で声をかけてくるなど怪異をなしたという。
同書巻第二にある柳女の項にあるように、柳は女性的な木であると古くからいわれており、さらに老いや病気、または死のイメージを持つ陰の木であるという俗信が広く語られていた。
そのため老婆姿の妖怪という伝承が生まれたと考えられている。
ちなみに同書には『盧全茶話』という書物の「金陵の絮柳は人を招く」、『契情買談』の「島原の柳は客を化かす」が引用されているが、これは「油断をするな」という戒めだけではなく、「夜の女には軽々しく気を許してはいけない」という意味も含まれていると考察されている。