概要
兵庫県の姫路城の天守閣に隠れ住むと言われている妖怪であり、年に一度だけ城主と顔を合わせ城の運命を伝えるとされている。
その正体は有力なところでは姫路城が経つ前の姫山で祭られていた「刑部大神」を祭る神社に祀られていた神と言われているが、諸説があるための祀られていたモノの正体は不明である。
他にも稲荷信仰からの稲荷神、城に住み着いた妖狐、天皇に寵愛されていた女性の霊、姫路周辺では蛇の事を「カサフ」と呼ぶ※ため蛇神等も正体とされているが、やはりどれが本当の姿かは定まっていない。
初期の伝承では特定の名を持たず「城ばけ物」とも呼ばれていた。
現在では後述する宮本武蔵の逸話で登場する狐の姿が正体として一般的に知れ渡っている。
また、大変な人嫌いとも伝えられており、城主が彼女の機嫌を損なう行為を行えば祟り、呪い殺すとも伝えられている。
これは関ヶ原の合戦後に城主となった池田輝政が姫路城の大規模改修を行った際、天守閣が完成する間近で病に臥し、そのまま病死したことが刑部姫の怒りに触れたからだと伝えられているため。
この一件で祟りを恐れた親族と家臣達により、姫路城の場内に刑部神社が建立する事となった。
長壁姫、小刑部姫、小坂部姫などの様々な名を持ち、その姿も様々な姿で描かれている等とらえどころの無い姿は正に妖怪そのものであろう。
※姫路周辺で蛇を「カサフ」と呼ぶか疑義あり。「姫路市史15巻上民俗編」「播磨方言集綴」「兵庫県姫路市新市域言語地図集」のいずれにも「カサフ」の語無し。「言語地図集」では「ヘビ」「クチナ(クチナワ、クツナ)」のみ。
容姿について
刑部姫はいくつもの名を持つと同時に、その姿も様々な姿で描かれている。
一般的には狐あるいは稲荷神が正体とされているので狐をモチーフとした姿が多いが、蛇神としての姿などもあり、鳥山石燕の描いた姿では蝙蝠を従えた老婆とされており、こちらもイメージソースとして有力となっている。
また、別の伝承では十二単を着た美しい女性の姿で現れるとも言われていたり、6メートルを越す鬼神となったとも言われている。
余談
なんと、かの剣豪宮本武蔵と面識がある。
地元の姫路市では武者修行の旅に出ていた武蔵が天守閣の怪異を起こしていた狐を退治する話が伝わっており、この昔話が刑部姫=狐とされているルーツとなっている。
また、弟は源義経と静御前を助けたとされる源九郎狐と言われている。
ちなみに、この説を採用した場合、元々は宋の生まれという事になる上、両親は初音の鼓の素材にされている事になる。