解説
これまでの話にも名前だけ登場してきた、若くして死んだ資産家・寺月恭一郎が大きく関与してくる。
第1作「笑わない」にも登場したキャラクターが再登場する、世界を裏から操る統和機構について具体的に語られる、そしてとある人物がある表情を見せるなど、シリーズの完結編という側面もある(当時の電撃文庫は、おおむね5巻程度で完結する作品が多かった)。
2019年版アニメで映像化された。
あらすじ
2月14日のバレンタインデー、亡くなった資産家・寺月恭一郎が最後に手掛けた巨大ビル「ムーンテンプル」が開業した。
開業イベントには多くの人々が招待され、その不思議な構造と雰囲気を楽しむが、突如としてビルの出入り口が閉鎖され、人々は閉じ込められてしまう。
事件の裏にいる「歪曲王」と名乗る人物は誰なのか、寺月恭一郎は何の目的でムーンテンプルを建てたのか。
謎が交錯するなか、「世界の敵」を感知したブギーポップがその姿を現す――
登場人物
キャラクターとしての歪曲王
ムーンテンプルの開業イベントのさなか現れた存在。
人の心残りを「隠された歪み」として引っ張り出す能力を持ち、それをイベントに訪れた人々に対して行使する。
人の精神を"指さす"事で隠された「歪み」を引き出し、その歪み=人物の姿をとって各個人の精神に現れる。
ゆえに、歪曲王の姿は人の数だけ存在し、それらは共通して恐ろしいほど光がない目をしている。
別世界に吹き飛ばす事も可能とし、効果範囲は一度に数百人にも及ぶ。
(以下、『歪曲王』のネタバレ)
『笑わない』で紙木城直子に告白され、その好意に対してどう返すべきか悩み、答えが出る前に彼女がマンティコアに殺されたため、自らの中の歪みを抱え込んでいた。
そんな彼の心が、歪曲王の存在を生み出したといえる。
歪曲王の目的は、人々が普段目を背けている「歪み」と向き合い、それを乗り越えて精神を成長させる(歪みを黄金に変える)ことができるかどうかの実験である。
その行動原理から「世界の敵」とはならず、ブギーポップの粛清対象ではない。
また宮下藤花の心から浮かび上がるブギーポップと同様、志郎の心から浮かび上がる「自動的」な存在の一人でもある。