水偵とは「水上偵察機」の略称である。
主に旧日本海軍が洋上で運用していた偵察用航空機の総称である。
概要・歴史
水上機とは航空機にフロート(浮き)を取り付け水面上での離着陸を可能とした機体のこと。飛行艇も含む。
※厳密には通常の飛行機の脚の代わりに下駄(フロート)を履かせた構造のものをフロート水上機と呼び、航空機の胴体を艇体、水に浮く船のような構造にしたものが飛行艇とされる。下駄で浮いてるのか直接胴体で浮いてるのかの違い。
飛行艇は水上機という大きなカテゴリに含まれるものであって、水上機=飛行艇ではないことに注意。
日本海軍では1930年台から開発が始まり、着弾観測用の水上観測機(水観)、洋上哨戒用の大型飛行艇(大艇)とともに生まれた。ご覧のとおり、戦闘を主目的としない機体ばかりである。
これは、水上機は滑走路がなくとも給油と整備のできる港(もっと言えば随伴する艦船)があれば運用でき、索敵範囲を伸ばすのには利点があるものの、飛行中はフロートの重量と空気抵抗で速力が上がらず、敵機とまともに戦闘するのは困難だったためである。
太平洋戦争期にはそれでも水上爆撃機(水爆)や水上戦闘機(水戦)の開発、機体の高速化を図ろうとしたが、零戦の派生機である二式水上戦闘機を除くほぼ全ての新規機種でフロートに絡む何らかのトラブルが発生した。
この問題を克服し切る前に戦局の悪化・終戦を迎え、日本の軍用機としての水上機はその歴史に幕を下ろすこととなった。
なお第二次世界大戦中、他国では戦略的に航空基地を作りまくったり他の高性能機に頼ったり地理的に必要とされなかったりでやはり開発は進まず、水上機は偵察以外に広く使われることはなかった。
主な水偵(太平洋戦争期)
- 94式水上偵察機/94式水偵
- 95式水上偵察機/95式水偵
- 96式小型水上偵察機/96小水偵
- 零式水上偵察機/零式水偵
- 零式水上観測機/零式水観
- 零式小型水上偵察機/零式小水偵:潜水艦艦載用。爆弾搭載可。
- 紫雲:フロートを着脱式、いざというときにはフロートを切り捨てるという方法で高速化を狙ったものの、結局成功しなかった機体。
- 瑞雲:水偵として開発されたが、急降下爆撃ができたため水上爆撃機に分類されることもある。なお、急降下時にフロートが吹き飛び機体が空中分解する事故が相次ぎ、広く配備されるには至らなかった。