「人生はくじ引きで 僕は当たりくじだ」
概要
カラス銀行所属のギャンブラーの一人。ランクは1/2ライフで伊藤班が担当権を保有している。担当行員は蔵木慎之介。
職業は弁護士。ひき逃げ事件の被告人を弁護し無罪判決を勝ち取る程優秀だが、人生をくじ引きと例えるほどに運否天賦を地で行く人物。自分たちはたまたまハズレを引かずに生き残っているだけと考えており、自分や他人も皆価値は無いとも考えている。
ただし本人曰く運命論者というわけではなく謙虚なだけとのこと。
同じく伊藤班の牙頭猛晴とは高校時代からの友人関係であり、互いを「伊月」「ガッちゃん」と呼び合うほどの間柄。
主席である自分でも敵わないかもしれないと他が認める天才にもかかわらず皆から嫌われている牙頭に興味を抱いたことが交流のきっかけであり、この頃はライバルとしていた上杉という人物に勝利し、主席で大学に入るという目標を笑顔で話すなど現在のような性格ではなかった。
しかし大学受験当日に上杉が飲酒運転をしていた車と事故を起こし死亡したことで不戦勝で主席合格してしまったこと、自身が「クソ」と蔑むような悪人が弁護により助かる一方で善人が理由もなく死んでいくなどの経験から徐々に歪んでしまい、最終的には現在のようなすべてはくじ引きで決まる無価値なものという価値観へと変わってしまった。
ただしすべては無価値と断じておきながらも親友である牙頭のことは大切に思っており、自分の欲が重要であり他人はどうでもよいと考えるようになってしまった彼の変化を止められなかったことを悔やんでいる。
実力
主任である伊藤が対抗戦のメンバーに選ぶほどの実力者であり、人生の不条理を知っているからこそ運命を言い訳にしないように取れる選択を徹底的に考える謙虚さを持つ。そのため己の力を過信して足を掬われるようなこともない点が強み。
また牙頭に絶大な信頼を置くことで余計な感情を持たず防御に務めることができ、それにより村雨礼二が見抜くことができないほど感情を隠し通すことができる。
しかし親友である牙頭を大事にするがあまり無意識的に庇おうとしてしまうため、その点を見抜かれると逆に利用されてしまうという弱点も抱えている。
活躍
ひき逃げ事件の無罪判決を勝ち取った弁護士として初登場。しかし車に乗った後無罪を勝ち取ったことにはしゃぎながら被害者に文句を言い、注意をしていたはずの飲酒までして出廷していた被告人に呆れていた。
しかし、被告人が「漆原がわざとロックしておらず半ドアにしていたドアに寄りかかった」ことで高速道路に落下し、被告人は更にはトラックにひき逃げされる。(「半ドアに気づかないほど注意散漫」「鍵を確認しない」「シートベルトをしない」「不安定な体勢でドアに寄りかかる」等ほんの少しでもマトモならやらない過失を多種多様に犯しているうえ、再三注意している様子もドライブレコーダーに残っていると思われるので、突き飛ばしたわけでもなんでもない漆原は当然無罪である)
救急車を呼ぶよう懇願する彼に「当然呼ぶさ、じゃなきゃ僕が罪に問われる」と言いつつも「ハズレ」を引いたことと助からないことを冷徹に告げ、直後にかかってきた牙頭からの電話で彼を「ガッちゃん」と親しげに呼ぶ姿を見せた。
その後牙頭と共に宇佐美班の村雨、天堂と「ピーキー・ピッグ・パレス」で対戦。
第1ラウンドの1戦目ではいきなり実力を見せる牙頭の姿を悪い癖だと言いつつ、「藁の家」を出し牙頭に天堂のブタを奪わせた。
2戦目では「レンガの家」を出し牙頭と共に天堂の「オオカミ」をスルー。3戦目では村雨に対し勝つ選択肢がないことを示し「木の家」で「平和な世界」が成立させ、敵の「オオカミ」を空振りさせた。
第2ラウンドの1戦目では「木の家」を出すも親番である天堂がなぜか「藁の家」を出したことに困惑。
しかし2戦目では「オオカミ」を選択し牙頭のブタを奪うことでお互いの手札に「レンガの家」を残し、3戦目でブタが減らされることを阻止した。
その後村雨に己の神の声を聞けと説く天堂のアドバイスを非難する牙頭を言い過ぎだとたしなめるも、自身も「くじ引きに理由を付けているに過ぎない」一蹴。しかし天堂の「神の声(本当の自分の価値基準)に従っていない人間に心当たりがあるのか?」という指摘には動揺を見せていた。
続く第3ラウンドでは相手側から「オオカミ」の手番が始まる不利な状況な中にもかかわらず「平和な世界」の成立と天堂に村雨のブタを奪わせることで依然圧倒的に有利な状態でゲームを進める。
しかし追い込まれたことでついに村雨が覚醒。第4ラウンド1戦目は牙頭が天堂からブタを奪い死にリーチをかけさせるも、続く2戦目では安全策を採り天堂の「オオカミ」は村雨のブタと同時に出してくると考え「オオカミ」を出すものの、それを読まれ同時に「オオカミ」を出されたことで「オオカミの憤怒」が成立しブタを失ってしまう。
第5ラウンド1戦目では自身の身を顧みず牙頭にブタを渡そうとするも、「平和な世界」で阻まれてしまう。さらに2戦目でも「オオカミの憤怒」が成立すれば死亡する村雨が「オオカミ」を出すことはできないという考えを見透かされブタを奪うことができず、第6ラウンドの1戦目では天堂の攻撃でブタを失ってしまう結果となった。
さらに天堂が意図的に勝つことをやめた結果ライフが削られていき、第11ラウンド3戦目で牙頭と共に「オオカミ」と「レンガの家」なし、残りブタ1つと即死圏内に追い込まれてしまう。
自分の命を犠牲にすれば親友が助かるという状況下に追い込まれたことで、ようやく自分が全てのものを無意味で無価値と思っていた理由に漆原は気づく。
「全部無価値であって欲しいんだ」
「全てのモノは理由もなく突然消える」
「善人も悪人も大人も子供も金持ちも貧乏人も」
「不幸は降りかかる相手の顔など見ようとしない」
「全てのモノは 無意味で無価値」
「そうじゃなきゃ 悲しいじゃないか」
「あんなに素晴らしいモノが 理由もなく消える世界なんて」
親友とのかけがえのない日々が突然消えてしまう世界への悲しみ、そしてその日々を作った親友の重要さを認識したことで自らを犠牲に牙頭を守るために「藁の家」を出した。
...しかしそれは牙頭も同じ。互いに親友を守るため出した「藁の家」を見て二人は困ったように笑い合うのだった。
天堂は「オオカミ」村雨は同じく「藁の家」を出し最終ラウンドの札が出揃い、天堂の「オオカミ」は
「愚かさに愚かさを重ね」
「死の淵に立つまで 幸福に気付けなかった咎人共よ」
「神の恩赦だ 愚かさを引き摺りながら生きろ」
「村雨を攻撃する 私の宮殿は完成だ」
なんと天堂は村雨からブタを奪い宮殿が完成。この奇行には牙頭と共にピカソ顔で驚愕の表情を見せた。
その後天堂の一連の奇行や互いに罵り合う二人の姿に困惑を見せるも、迷いを晴らし誰も犠牲にすることなくゲームを終わらせた二人を「最高の当たりくじ」と例えた。
これにより宇佐美班はまず一勝。そして対抗戦は新たな戦いへと移ることになる...
余談
ちなみにスーツは牙頭に選んでもらったもので、自分で買った私服は、「上京したての天狗」「盗品を盗んだ順に着ているのかと思った」「執行猶予なし(懲役)20年」と表現されるレベル(なおこの感想を聞いて真顔で(キレるかどうか決めるために)鉛筆を転がし始め「フツーにキレて貰っていいスか?」とツッコまれていた)の犯罪的にクソダサいコーディネートと化す。(「二の腕や膝、手首に至るまでありとあらゆるところに着いている謎ファスナー」「各所についているがどこも締めていない謎ベルト」「手を挙げると開く脇腹に空いた謎の穴(これもファスナー)」「継ぎ接ぎ模様の六分丈ズボン(左右別模様)」「前衛的デザインのシャツ」「ジャンパー下部の腰の部分からファスナーで繋げられている羽のような腰飾り」etc...)
「僕の服見て人が死ぬってのか!?」
その理由は「ファッションに疎いことを自覚しているためか何も考えず1番高いのを買う」かららしい(牙頭曰く「炊飯器と同じ買い方」)、そのため「高い物を何も考えず着ている」と言う意味で「盗品を盗んだ順に着ている」という感想は非常に的を得ているといえる
また、そもそものセンスも壊滅的で、上記の矯正のために新しい私服を買い付けに行く際、襟巻き付きの凄まじい服(逆転裁判に出てくる敵弁護士か証人辺りが着ている様な服といえば伝わるだろうか)を嬉々として選ぼうとする様子が描写されている
また、放っておくとスーツも自分で選ぼうとし始める(牙頭曰く「宇宙人みたいな色のスーツ」)
なお、私服の買い付けの最中、ストリートファッション雑誌ネット版の撮影依頼を受けたのだが何をまかり間違ったのか漆原の謎私服が週間トップを飾ってしまい、その事で良くない自信をつけたのか、ただでさえ多い謎ファスナーが倍に増えた模様