定義
警察庁の定義によれば、「被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪」を指す。
呼び方の変遷
かつては、電話越しに「母さん、俺だよ、俺」などと名乗ることなく身内を騙って相手から金品をだまし取るオレオレ詐欺が横行していた。
警察がこの手口について啓発を進めたところ、名簿を手に入れるなどして「オレオレ」と名乗らずに被害者の名前をはっきり言ったりすることで信頼を得る手口が登場した。
また金銭について振り込ませる振り込め詐欺が横行するようになった。
振り込め詐欺についても啓発を進めた結果、銀行の窓口などで詐欺に気づき、水際で被害を防止できた事例も増えたが、更に受け子を派遣して直接金銭を受け取る手口が登場し、「振り込まなければ安心」ということもなくなってしまった。
「母さん助けて詐欺」という名称も登場したが、あまり定着しなかった。
このため、上記のような電話で金の支払を要求して受け取る詐欺を包括した名称として特殊詐欺と言う言葉が使われるようになったのである。
もしかしたら、特殊詐欺という言葉もやがて時代遅れになって新たな言葉に変わっていくかも知れない。
特殊詐欺の被害
あまりに被害が多い為、警察や銀行等もこの詐欺への対策や検挙に色々と手を打っているのだが、その都度詐欺グループ側もまた、次々と対策の盲点を突いた手段を行使する形で詐欺を繰り返し、いたちごっこが続いている。
特殊詐欺の被害は日本中で発生しており、令和3年の統計では日本全国で14,498件の特殊詐欺事件が発生、被害額は282億円となっている。
騙されたまま、あるいは恥ずかしいなどの理由で警察に通報されていない隠れ被害も考えられ、実際にはもっと被害が出ている可能性もある。
事前に見破るなどで被害が出なかった件を除いて、被害1件当りの被害額は202万円である。
また、被害は家にいることが多く比較的金銭的余裕がある高齢者中心ではあるが、高齢者だけでなく中高年や若者でも標的になっている。
特殊詐欺で金銭を奪われた被害者は、重要な生活資金などを奪われてしまっただけでなく、精神的な負担も大きい。
被害者が家族から騙されたことを責められ、被害者は自責の末自殺してしまい、家族までも「被害者を責めてしまった自分」を責め自殺してしまうという痛ましい事例もある。
被害防止の対策
上記の状況からその被害防止が喫緊の課題となっている。
・自治体によっては、電話があったら通話を録音し、かつ相手にそのことを告知するシステムを無料で貸し出している所もある。録音から足がつくことを恐れて諦める詐欺集団も少なくないので、地元で実施しているなら積極的に使おう。
・家族の中でも、しっかり情報を共有しよう。家族を名乗る電話には、合言葉などを決めておくのも有効である。
・お金に関連する電話の話には、応じないようにしよう。
・もし特殊詐欺を見破れたなら、一刻も早く警察に通報しよう。事前に読めていれば、警察は待ち伏せ作戦で犯人（受け子）を捕まえている。
・家族が被害に遭ってしまっても、そのことを責めてはいけない。悪いのは加害者で、騙された被害者ではない。
しかし、上記のような対策を警察が必死に訴えているにもかかわらず、特殊詐欺の被害は今なお根絶に至っていない。
被害者の多くは特殊詐欺について知っており、にもかかわらず「自分は引っかからない」と信じていたケースが少なくない。
自分は特殊詐欺に引っかからないと信じ込むのは油断と同じことである。
加害防止の対策
特殊詐欺は、一歩間違えば被害者だけでなく加害者になってしまうと言う問題もある。
振り込め詐欺ならば振り込ませた口座から金の払戻しを受けたり、直接人を派遣して金銭を受け取る場合に受け取り役を担当する受け子は、特殊詐欺関係者の中では比較的検挙されやすい。
そのため、詐欺だと知らなかったり、特殊詐欺について軽く考えるアルバイト、通称闇バイトを使うケースが多い。
こうしたアルバイトに応募してしまうと、組織を抜け出したくとも家族などへの危害を種に脅迫されて抜け出せないまま犯行に至ってしまうケースもある。
そして、脅迫されて抜け出せなかった場合でも無罪になることはなく、また社会問題になっているため、裁判所も厳罰で対応することが多い。
また、闇バイトを軽く考えてはならないのはもちろんだが、闇バイトは巧妙に姿を隠しながら受け子をリクルートしている。
例えばSNSで募集している美味しいアルバイトや、地域の先輩が「金銭や書類の受け渡し役」で募集しているアルバイトが実際は闇バイトであるという危険性はかなり高い。
近寄ったら最後手遅れになりかねないので、近寄らないのが大事である。
関連タグ
強盗…特殊詐欺同様に電話で探りを入れた上で、強盗で金を稼ぐ犯罪組織も増加しているといわれている。
