白鞘とは、日本刀の形状の一つである。
概説
白木(無加工の木材)で作成された鞘のこと。
登場は江戸時代後期とされ、刀身を長期保存する際に用いられるようになったもの。
白木は一切の加工を施していないため、湿度に敏感であり、それを吸収する性質を持つ。
それを利用し、鞘の中の湿気を吸収して刀身が錆びにくくなるとされている。
いわば「刀身のための“寝間着”」といえる。
勿論、白木に収めているといえど、適度な手入れは必要であるが、その手入れに関しても、鞘や鍔といった芸術性の高い部品を、不注意で痛めずに手入れできるという利点も備わっている。
白鞘が爆発的に普及したのは、廃刀令以降とされる。もともと刀を白鞘に入れて保管する風習は上位の武士の間にしかおらず、一振りしか持っていない一般の侍は日々腰に帯刀しているのでわざわざ丁寧に保管などしないためである。明治以降に帯刀を禁止された後、保管を余儀なくされ白鞘に移したものが現代に残っていると考えるのが自然だろう。
構造
「目釘」という柄の真ん中に空いた釘穴1つで、刀身を固定する非常にシンプルなスタイル。
鞘は2つの木の板を接着剤ではり合わせた構造になっており、大変簡素な接着しかされていないのが一般的。これは手入れを怠ってしまい、万一刀身がさびてしまった際に、鞘を縦に割って刀を引き出すためである。
また、白鞘の接着剤も飯粒を糊代わりにするなど、余計な力を加えて刀身を傷めないように、簡単に壊せる工夫がなされている。
その他
よく任侠映画などで、“極道の組員が白鞘一本で敵のシマにカチコミに征く”シチュエーションがあるが、元来は白鞘にそれだけの耐久性はないので、結構な無茶と言える。
また、白鞘は一般的な柄より太いため握りにくく、汗で滑りやすいため、すっぽぬけて飛んで行ったり、持ち手がズレて刀身を握ってしまう事故などが起こりやすい。
このような常識から、時代劇などでは一般的には使用されないのだが、
漫画などでは、奇をてらった武器として稀に刀を白鞘のまま使用するキャラクターも存在する。
その影響か、白鞘の使い手には並行して居合の習得者も多い。
現代ものドラマなどの作品では、むしろそれを表わす演出でもあるのだろう。あえて白鞘を持ち出すケースが多い。
流血が必至なので、大切な本来の鞘などの服属品は汚さないため、また、一目で「日本刀」と分かっては奇襲の意味を成さないということから、隠しやすい白鞘を使用する。
もっとも、一番あり得るのは“白鞘で保管していた刀をそのまま持ってきた”という線だろうけど……。