CV:肝付兼太
人物
不動高校ミステリー研究会の顧問を務めている初老の男性。
挙動不審な性格。
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※ネタバレ注意
実は彼こそが、事件の真犯人「放課後の魔術師」であった。
的場は30年前、とある製薬会社の社員であった。
かつて同社の研究所として使われていたのが不動高校の旧校舎であったが、同社はそこで起きた薬品による過失致死の隠蔽のため、敷地内に被験者の死体を埋めるという悪行に及んだ。
(ここまでの行為自体に的場自身が関与したかどうかは明言されていない)
その後、廃屋となった建物は不動高校の校舎として利用されることになってしまったため、死体が発掘されないか監視するため、製薬会社から監視役として教員の建て付けで派遣された元社員こそが的場だった。
そして死体の発見を防ぐため、旧校舎に関する「六不思議」とした噂をそれとなく流し、生徒達が旧校舎へ近づかないよう画策していた。
その後20年にわたり「死体が見つかるかもしれない」という恐怖心を抱きながら、夜も眠れない日々を過ごしていた。
そして10年前のある日、六不思議に興味を持った生徒の青山ちひろが校舎の過去を調べあげた結果、製薬会社の不祥事の内情を知られるに至ってしまう。
告発を主張する彼女ともみ合いになった結果、明確な殺意はなかったものの、彼女は階段から転落し死亡してしまう。
そして自らの意思で彼女の遺体を今のミステリー研究会の部室となっている壁に埋めて隠し、その壁に近づく人が現れないよう新たに7つ目の噂を流したのだった。
こうして青山ちひろは「失踪」し、今に伝わる旧校舎の「七不思議」が成立したのだった。
本編の終盤にて、金田一によって今回の殺人事件の真相、青山ちひろの真相、そして過去の製薬会社による事件の顛末のすべてが明らかにされる。
追いつめられた的場は必死の形相で「怖かった」「あんなこと(最初の事件)がなけりゃ私も平穏な日々を遅れた」などと述べ開き直った。
そして青山ちひろの死を彼女自身が悪いと発言したところで、彼女の失踪の真相を探るために警備員として学校へ潜り込んでいた、彼女の実父である立花良造により腹をハサミで刺される。
倒れ込んで「死にたくない」「死ぬのが怖い」「助けて…」と金田一に縋りながら死亡した。
評価
彼は『金田一』の中でも同情しにくい犯人は誰か?という話題になると今でも必ず名前が挙がると言っていいほど、犯人の中では割と有名な存在である。
ドラマ版の複数シリーズでもアニメ版でもこの話が第1の事件であり、そういった意味で印象に残りやすい犯人であるとも言える。
『金田一』は被害者の側が外道であるケースが多い中で、この事件の被害者は全員、何の罪もない生徒たちである。
結果的に自らの保身のために罪なき生徒を複数、それも途中からは明確な自発的な殺意を持って死に至らしめており、その悲惨な最期は自業自得としか言いようがない。
ただ、彼に降りかかった役回りそのものに限れば一縷の同情の余地はある。
年齢的に当時は若手社員だっただろう彼が組織ぐるみの隠蔽を主導したはずもなく、またこのような損な役回りを自ら買って出たとも考えにくい。
その気弱な性格が仇となり、会社の上層部に全てを押し付けられたのだろうと容易に想像できる。
そのような事態になってしまったことそのものは、確かに的場の言う通り彼にとって災難だっただろう。
しかし、そこで警察やマスコミに出向くなり、青山ちひろの進言を聞いた時点で思い直すなりしていれば、彼自身の罪はここまで重くならなかっただろう。
最悪、青山ちひろを故意ではなく死なせてしまった時点で観念していれば、まだ会社の悪辣な行いの被害者の一面もあるとして多少の同情を得ることもできただろう。
しかし彼は反省するどころか、青山ちひろの死を「首を突っ込んだ彼女が悪い」と責任転嫁し、さらなる隠蔽を自ら率先して行ったうえ、挙げ句それをさらに隠蔽するために自らの意志で積極的に殺人を犯すに至っている。
それらの行為については自己保身以外の何物でもなく、弁解の余地は乏しく、やはり同情は得られにくい犯人である。
どこまでも小心者で現状を変える勇気を一切持ちあわせなかったせいでどんどん事態を泥沼化させてしまった、哀れな男といえよう。