概要
作者は浦沢直樹。「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)にて1986年から1993年まで連載された。全29巻、文庫版全19巻。完全版全20巻。発行部数は3000万部以上(ビッグコミックスピリッツ版のみの実績)。
浦沢曰く、『YAWARA!』のタイトルは本人が多大なる影響を受けたという大友克洋の『AKIRA』をもじったもの。
当初は(のちに発表する)『MONSTER』のような医療ものを考えていた。また、当時の浦沢は『パイナップルARMY』も連載中だったが、編集の意向もあって、あまり反応は芳しくなく、話し合いの中で「それだったら女子柔道でもやりますか。ヤワラって女の子が天才柔道家でさ、あとは『巨人の星』みたいな感じで描けばいいからさ」と浦沢が切り出すと、すぐに「これはいけますよ、ぜひ連載しましょう!」という反応が返ってきたという。
もともと浦沢は前作の『パイナップルARMY』のような骨太で重厚な作品を得意としており、ドラマから作品を構成していくことが多かったが、本作では「キャラクター作りからのストーリー構成」を意識したという。
当初は数話の読切の予定でスタートしたが、反響を受け本連載へと変更になった。浦沢自身も最初の数話を描いているうちに「これは大ヒットする」と手応えを感じていたと語っている。
とはいえ、浦沢自身の志向するところとしては、元々は数あるスポーツ漫画のパロディとしてスポ根ものへのアンチテーゼを盛り込んだ、柔道はやりたくないのに才能だけで勝っていく少女を描いたドタバタ群像劇というコンセプトだった(青年誌らしく、お色気シーンも多かった)。
ところが、実写映画版の出来に納得がいかなかった作者自ら監修に加わったというアニメ化をきっかけにお座なりな展開だと少年、少女たちに悪影響を与えるとばかり方針を転換。「どのようにしたら売れる作品になるか」を突き詰めた実験作品と定義し、様々な漫画やドラマの王道的展開を採り込みつつ骨組みのしっかりしたストーリーを組み立てて行き、劇中後半にはトレンディドラマばりの青春柔道ラブストーリー(DVDの宣伝文句をそのまま引用)になった。
そんなわけでスポーツものとして柔道の要素も強い(作者は全く柔道を知らずに始めたため、当初は女子が男子トップクラスに勝つなど無茶苦茶な描写が多かったが、前述の理由に加え古賀稔彦に強いインスピレーションを感じたことで、次第に内容を本格化させていった。しかし、それでも現実の柔道とは異なる描写が多いと指摘されている)が、あくまでベースとなっているのは猪熊柔と松田耕作の純情ラブストーリー、ヒューマンドラマ的な部分である。
そこには浦沢が得意とする緻密な心理描写や、王道の展開だけでない巧みなストーリー構成、あちこちに鏤められた布石や伏線などのロジックが評価されており、ストーリー展開に無関係な、日常シーン的な話は殆どない。
また、浦沢は苦手だった「可愛い女の子」を描くために、女子キャラクターについて必死に江口寿史の画風をリスペクトしたことを明かしており、口癖のように鼻の描き方を参考にしたと答えている。また、前述したように大友克洋の影響も強く受けており、松田がバイク乗りなのも、『AKIRA』の金田から来ているという。
ちなみに、本作ではフィクションということで女子柔道の無差別級を開催しているが、実際の五輪で女子の無差別級試合が行われたことは一度もない。また、男子柔道においても後に無差別級は廃止された(※実際は、同一レベル同士だと体重差は大きなハンデとなり埋められないということである)。
社会的影響
柔道漫画、そして青年誌でタブーとされていた、女子を主人公としたスポーツものとしては異例の大ヒットを記録し、アニメ化以後は幅広い年齢層に多大な人気を博した。
女子柔道ブームの火付け役ともなり、女子柔道選手や、その中でも有力な若手選手を「やわらちゃん」と呼ぶ発端となるなど大きな影響を与えた。また、高校時代に多かったサイドポニー姿の猪熊柔の髪型をリスペクトする女子選手も多数現れた。
特に、本作の連載・アニメ放送と同時期に女子柔道選手として活躍していた田村亮子(現在は谷亮子)の人気を後押しすることにもなり、各メディアで田村を本作にかけて「ヤワラちゃん」と呼ぶことも多かった(※小柄な体格や圧倒的な強さなどの共通点から。かつて女子の有力選手は姿三四郎にかけて「女三四郎」と呼ばれることが多く、また田村自身もそう自称することがあった)。なお、田村自身は「ヤワラちゃん」という愛称に好感を持っており、後年のインタビューで「『ヤワラちゃん』と呼ばれるようになってから、自分の思っていることを躊躇わずに発言できるだけの強い気持ちが持てるようになった」と語っている。
しかしながら田村に対する「ヤワラちゃん」の愛称は、メディアのゴリ押しに近い部分もあったようで、浦沢も『JIGORO!』完全版のインタビューで「勝手に名乗るなら使用料を取ればよかった」と本音に近いコメントを返していた。尤も、田村本人も、選手時代は親しみを持ってもらうために、自分からそう呼んでほしいと周りに呼びかけていたものの、「自身が猪熊柔のモデルである」「ヤワラちゃんは自分だけの愛称である」というような、決して一方的な権利を主張して発言していたわけではないと言及している。なお、浦沢の発言後に谷と浦沢の対談も実現した。
主人公、猪熊柔の実際のモデルについては、田村以前に活躍し、先に「女三四郎」と呼ばれていた山口香という説が根強く、また山口と同時期に活躍した複数の女子選手からと推測する意見もある(実際には、浦沢はモデルとなった人物を明言していない)。
だが、本当の意味で彼女のモデルになったのは男子柔道選手ではあるが、平成の三四郎の名をほしいままにしていた古賀稔彦である。2021年3月に古賀が死去した際には、浦沢が自身のTwitterで「古賀稔彦さんの柔道がなければYAWARA!はありえませんでした。あんなに見事な一本背負いを漫画でも表現してみたい。でもあの本物の迫力はなかなか出せませんでした。古賀さんの柔道はすごい刺激をいつも与えてくれました。」と振り返り、「本当にありがとうございました、古賀稔彦さん。謹んでご冥福をお祈りします」と追悼するコメントを発表している。
また、作者からの明言はないものの、猪熊柔の髪型や輪郭は当時アイドルとして売れていた浅香唯によく似せており、実写版では浅香唯本人が柔役に抜擢された。
柔の祖父、猪熊滋悟郎の名前は柔道の祖といわれた嘉納治五郎がモチーフである(ただし、JIGORO!には嘉納治五郎の名前が出てきている)。また、猪熊という名字は猪熊功からとも言われており、古賀稔彦以前に一本背負いの名選手として知られた人物で、昭和東京五輪金メダリストでもあるが、作者はそれについて何も明言していない。
一方で、アニメ化によって低年齢にまで読者、視聴者層が広がった弊害で、青年誌らしい描写に読者から苦情が送られてくるなどしたため、後になって封印せざるを得なくなった描写も多かったという(それもあって、後述の『Happy!』が生まれた)。
ストーリー
大きく分けて4部にわけられ、武蔵山高校時代、三葉女子短大時代、鶴亀トラベル時代、そしてバルセロナ編となっている。
基本的には柔道をベースにしているが、高校時代はドタバタラブコメディー、短大時代は富士子との友情を描いた青春物語、鶴亀トラベル時代では、より柔と松田の関係を掘り下げつつも周囲の邪魔や柔の葛藤が描かれるなど昼ドラのような生々しい展開も取り入れられ、それぞれの部で作品の雰囲気は異なる。
また、あちこちで似たようなシーンが繰り返し登場するが、その時その時の心理状況はまるで異なっているのも特徴であり、浦沢らしい緻密な描写や構成力が光るものである。
武蔵山高校時代
『日刊エヴリー』の記者として嫌々スキャンダルを取材していた松田耕作は、ある日ひったくり犯を巴投げで投げ飛ばす女子高生を目の当たりにする。松田は彼女にスーパースターの光を感じ、追い回すようになる。
女子高生の名前は猪熊柔。柔は柔道家の祖父、猪熊滋悟郎の元で英才教育を受けたまさに天才であったが、本人は思春期を迎え、普通の女子高生のようにオシャレしたり恋したりしたい思いを秘めるようになり、センセーショナルなデビューを図っていた祖父の思惑とは裏腹に、柔道から遠ざかろうとしていた。
しかしながら、滋悟郎の挑発がきっかけで、あらゆるスポーツで活躍してきたもう一人の天才少女、本阿弥さやかが「柔」をライバルと公言、また松田に正体をばらされてしまうなどして、不本意ながら柔道の世界に巻き込まれ、自宅にも戻れない騒ぎとなってしまう。責任を感じた松田は柔を部屋にかくまうが、そこで「柔道は嫌いではないけど、自分は普通の女の子でいたい」という本心を受け止め、心が大きく揺れ動く。そして、松田による助言で、デビュー戦でわざと負け、今までの騒ぎを全て丸く収めるつもりでいたのだが…。
尚、この高校時代に生涯のライバルとなるジョディ・ロックウェルと邂逅を果たし、柔道家として精神的に成長していくこととなる。
また、この頃の柔は、さやかのコーチを務める風祭への憧れが強く、さやかとの三角関係が作品の軸となっている。対する松田はまだ柔の恋愛対象として意識されておらず、岡惚れ状態だった。
ちなみに、原作にて柔が未成年飲酒をする場面があるが、電子書籍含む完全版では烏龍茶に差し替えられている(アニメDVDはそのまま)。連載当時は表現上の規制もあまり厳しくなかったことや、ワインは食事の一環であるという社会的な風潮もあってある程度黙認されていた。なお、他にもノーヘルでのバイク二人乗りや規制緩和前の高速道路タンデムなど、今となれば問題視される行動も多々見られるが、それらはそのまま。
三葉女子短大時代
「柔道部のないところに行きたい」と公言し、晴れて三葉女子短大に入学した柔だが、なかなか周囲の浮わついた感覚についていけずにいた。そんな中、後に親友となる伊東富士子と出会い、二人でゴルフサークルに入部する。
だが、富士子に誘われてディスコに顔を出した際、うっかり柔は相手の男を投げ飛ばしてしまい、「自分の柔道は他人に危害を及ぼすだけ」と大きくショックを受ける。一方の富士子は柔の一本背負いに感銘を受け、自分がバレエの英才教育を受けながら、伸び続ける身長によりバレリーナの夢を諦めざるを得なかった境遇を告白する。
柔は富士子の告白により勇気づけられ、世界を目指すためにソウル五輪での柔道エキジビションマッチ(無差別級)参加を決意(アニメでは柔道ワールドカップ)。しかしソウル大会の後、滋悟郎から父親の失踪の原因は自分の巴投げにあると知らされ、失意の中で引退を宣言する。
それで富士子は柔の柔道復帰を後押しするため、密かに柔道部を設立することを決意する。
なお、この三葉女子短大時代から柔の想いは徐々に松田へと傾いていくことになる。一方、二人とも鈍感で奥手、さらにお互いに選手と記者という立場がしがらみとなってしまっているため、そこまで順調に関係は進まない。
鶴亀トラベル時代
短大卒業後、父を探す目的も兼ねて、柔道部が存在しない鶴亀トラベルに就職した柔。しかし、彼女の教育係となったのは、全く仕事へのやる気がない羽衣という窓際社員であった。
羽衣のあまりのやる気の無さに痺れを切らした彼女は事もあろうに競合他社、本阿弥トラベルの顧客を訪問してしまうが、得意先が柔のファンだということで、羽衣と一緒に北海道への接待ゴルフに同行することに。
しかし、その旅行の日程と全日本選手権の試合日が被ってしまうことになる。風祭に相談の上、仕事を選択した柔であったが、羽衣は実は松田の記事の大ファンで柔や富士子のことも早くから注目しており、彼によってによって東京に帰るように差し向けられる。
柔は松田に送迎されて試合会場にギリギリ間に合い、全日本選手権優勝を果たす。そこで一度は幻滅した松田を見直すことになり、二人は急接近しかけるのだが…。
本編では、富士子の妊娠・結婚にともなう引退宣言や、父の現在を知ってしまったことによる柔の引退危機(完全版の帯より)など、重要な局面を迎えることになる。
また、この頃になると松田は柔に対して、相手はスーパースター(だから、自分とは釣り合うわけがない)と遠慮の気持ちが働いていくことになる。また、加賀邦子が恋敵として大きな存在感を示し始め、柔自身は松田への想いが高まるのに対し、何度も柔に嘘を吹き込まれてしまうため、後込みを繰り返すことになる。
バルセロナ編
バルセロナ五輪への切符を手に入れた柔と富士子だが、今度は松田にトラブルが発生した。なんと同僚の加賀邦子が誘拐されてしまったのだ。松田は「警察に頼っていられない」と自力で邦子の救出に向かう。一方の柔は、松田との微妙な距離感にもどかしさを感じていたと同時に、会場に松田が現れないことで、だんだん試合中でも動揺が激しくなっていく。
このバルセロナ編はテレビアニメ版では放送されず、4年後舞台をアトランタに変えたスペシャル版が放送され、ある程度展開が補完された。
余談
連載中は安定した人気を保ち、続編希望の声も高かったのだが、浦沢直樹本人が本作をあまり気に入っていないのか「続編やるとしたら、まず松田は殺しますね」と発言しており、続編が出る見込みはまずないと言っていい状態である。
これ以外にも、前述したように連載中にアニメの展開や締切、表現規制に振り回されたためか、本作を気に入っていないような発言があった。
その後に発表した『Happy!』では「浦沢が本当にやりたかった展開」として生々しい展開、描写が取り入れられている。
なお、完全版の後書きには「当時は、週刊2連載という多忙スケジュールの中、締切に追われていたので、手抜きばっかりの作品という意識があったが、改めて振り返れば全くそんなことはなかった」と自ら再評価している。
ちなみに、想像の余地を残したエンディングや、お互いに一途でピュアな男女関係、脇役の個性が非常に立っている作品ということもあり、後日談を描いた二次創作が当時から多数創作されており、連載終了から30年近く経過した現在においても、人気は衰えることなくPixiv内でさまざまな作品が投稿されている。
登場人物
猪熊家
柔の祖母。柔が物心つく前に亡くなっている。滋悟郎の恩師である牛尾先生の一人娘であり腕も相当立ち、滋悟郎も歯が立たなかったという。若い頃は柔と瓜二つで、柔は母親にも似ているが、どちらかというと祖母の隔世遺伝。
日刊エヴリースポーツ
松田の上司。人使いが荒く怒鳴ることも多いが、基本は松田の理解者で、日頃から彼の仕事ぶりを買っている。
本阿弥家関係者
さやかの父にして本阿弥財閥の会長。娘を溺愛する一方、風祭のことも買っている。母娘と比較して視野が広い。
さやかの執事兼運転手。さやかの命令には従順。名前のイニシャルはT(搭乗リストより)だが明かされていない。
伊東・花園家
二人の娘。生まれたときから大柄で、誰が見ても二人の子とわかるほどだった。富士子の柔道復帰を後押しする一方、イブの後、柔と松田の仲を取り持ったキューピッドでもある(原作のみ)。
柔道選手
黒百合女子大の柔道部員。大柄な体格で、柔が公式戦で最初に戦った相手。柔に敗れて以来ずっとライバル視を続ける一方、柔にとっては先輩、後輩の関係にもなっている。富士子はトドさんと呼んでいる。
ジョディ・ロックウェル(CV:一城みゆ希)
元ベルギー代表。柔道界の女王と呼ばれ、モデル業も兼業する二足草鞋。ソウル大会で柔の強さを目の当たりにし、彼女に女子柔道界の未来を託すつもりで引退を決意。その後は作品からフェードアウトしている。
初期のさやかのライバルとして登場した韓国の強豪。さやかは、ソウル大会で彼女に敗れたことがきっかけで、自分を取り巻いていたプライドの皮を脱ぎ捨て、強さに磨きが掛かっていく。彼女も作品からフェードアウト。
ユーゴの世界選手権から登場したソビエトの強豪で、テレシコワの知人。同じく裏投げを得意とする。バルセロナ48kg以下級銅メダリストの実力は持っていた一方、柔、さやか、マルソーにまで立て続けに敗れた、当て馬、噛ませ犬キャラ。
クリスティン・アダムス(CV:さとうあい)
当初は柔のライバルとして登場したカナダの新鋭。ジョディとは対照的に寡黙な性質。結果的には富士子のライバルとして彼女に立ちはだかる。
ユーゴ世界選手権から登場したキューバの強豪。藤堂は彼女との相性が悪い一方、彼女もジョディ、富士子、柔に破れるなど、あまりいいところがない。
柔道関係者
西海大学の柔道部顧問兼バルセロナ柔道女子代表コーチ。滋悟郎と馬が合い、柔を編入させようと画策するが、何度も振られてしまう。顔はでかいが気は弱い。富士子と花園の結婚式では仲人を務めるも、そこでも号泣してしまう。
フランス代表元監督で風祭の知人。さやかを鍛えるために一役買っている。滋悟郎を私淑しており、「ですぢゃ」という口癖が特徴。
本阿弥錦之介と昵懇の間柄で、キンちゃん、タマちゃんと呼び合う仲。柔に感銘を受けて彼の一存で、無差別級開催を決定させるなど絶大な発言力を持つ。元ネタは旧IOC会長のサマランチ。
打倒猪熊柔を掲げる筑紫大学(元ネタは筑波大学)柔道女子の監督。「計算通りー!」が口癖だが、その直後に部員が柔に惨敗し情けない顔を見せるのがお約束となっている。
解説として登場し、柔のファンだが面と向かって言われると照れくさくなって実況を突き倒すのがお約束。元ネタはソウル五輪金メダリストの斉藤仁。
柔の父、猪熊虎滋郎とはライバルの関係にあった。同じく解説としても盛んに登場する。ほかはフィクションなのに、なぜか彼だけが実名であるが、原作では山下としか名前が出ていない。
三葉女子短大
三葉女子柔道部員。登場時には13人に振られていたなど男運がない。男を投げ飛ばしてやるために柔道部入部を決意。振った相手を罵倒する「◯◯のバカヤロー!」の掛け声とともに決める出足払いが得意技。小田真理とはよく口論している。本人は気に入ってないが、周りからはナンダと呼ばれている。卒業後は婦警となったが、振られた男の人数が19人以上に増えていた。名前の元ネタは当時アイドルとして知られ、ナンノの愛称を持っていた女優の南野陽子。
ダイエット目的で柔道部入部。根は明るい性格でいつも食べ物とダイエットの話題しかしない。実家はとんかつ屋で両親とも肥満体質。日陰今日子と仲がよく、グループ交際で木村君と知り合う。名前の元ネタは吉永小百合。
三葉女子柔道部員。豊満な胸を持つボディコンで、痴漢から身を守るために柔道部に入部するが、彼女だけは公式戦で一勝もしていない。松田のことを気に入っているような描写がある。あだ名はマリリン。卒業後は女優を目指しているが、売れっ子AV女優にもなっており、一等地の高級マンションに自宅を構えるほど。時間には相当ルーズ。元ネタはセクシー女優で知られたマリリン・モンロー。
鶴亀トラベル
鶴亀トラベルの代表取締役社長。けっこう心配性なところもある。経営者ゆえに狸親父なところもあるため、松田は彼をあまりよく思っていないが、柔は彼の実直な人柄に惹かれて入社を決意している。
狭山(CV:山田恭子)
柔の先輩。ウェーブヘアーの茶髪で気が強い。視聴者人気も高い『最高のプレゼント』の回でキーパーソンだったため、ファンからの認知度は高いものの、アニメでの扱いは社員Aである。
塚本(CV:こおろぎさとみ)
柔の先輩で狭山と仲が良い。セミショートの黒髪。アニメでの扱いは社員B。
武蔵山高校
柔より一つ下、赤髪リーゼントの不良少年。柔道経験者で柔に一目惚れしストーカーのごとく追い回すが、柔が鍛えた柔道部員らに一矢報いられる。その後は柔に惚れ込み更生、卒業後は髪を黒く戻し、寿司職人として修行していた。アニメ版ではかなりキャラを掘り下げられ、オリジナルストーリーが多い。
河野、安井、畑山、富岡(CV:左から金丸淳一、菅原淳一、桜井敏治、巻島直樹)
武蔵山高校の弱小柔道部員。万年一回戦敗退だったが、柔に鍛えてもらい一回戦を勝ち進むようにはなる。卒業後は皆大学生となり、花園の披露宴に招待されていたが、誰一人として柔道を続けていなかった。その後も4人交流を続けているが、就職難や不況にさいなまされていた。
清水今日子、かおり、和美(CV:順に冬馬由美、松岡洋子、光野栄里)
武蔵山高校時代の柔の親友で、仲良し4人組として行動していた。清水は吊り目の長髪、かおりは大柄の短髪、和美は眼鏡をかけておちょぼ口。ともにオシャレや色男に興味を持つ思春期の女の子であり、風祭とも仲が良かった。彼女たちが登場したのは高校編までで作品からフェードアウトするが、3期OPアニメーションに成人となった3人が登場している。
錦森広之(CV:三ツ矢雄二)
高校時代のアイドル的美男子で、卒業後はジャニーズへのデビューも決まっていた。しかし、売れたのは最初だけで後はズルズルと後退、スターダムから消えて深夜バラエティ番組の端役しかもらえなくなっていた。腐っていたところ、バルセロナで活躍する猪熊柔を目の当たりにして、もう一度精一杯打ち込むことを決意する。なお、彼が登場したのは第1話とバルセロナ編の後半だけで、劇中ではほんのチョイ役だが、柔が片想いしたことがある相手でもあり、柔道が原因で彼に距離を置かれたことが、彼女のコンプレックス(柔道なんかしてたら彼氏ができない)にもなったなど、柔の人格形成に大きく影響を与えた一人でもある。
その他
『民宿まつだ』を切り盛りする肝っ玉母ちゃんだが、父親が脳溢血で入院するまでは心配性だった。松田の一番の理解者でもあり、猪熊柔に対しても「普通の女の子に変わりねえ」と彼の気持ちを後押しした。後に彼が記者をやめると考えていたときも「バカこくでねェ!」と発破をかけている。
松田の父(CV:藤本譲)
『民宿まつだ』の経営者。脳溢血で入院するまでは積極的な性格だったが、退院してからは性格もすっかり丸くなり隠居に近い生活をしている。なお、アニメ版では松田の相手を見定めるために上京しており、そこで猪熊柔本人と面会しており(彼女はそれが松田の父親とは知らない)、彼女の人柄を認めていた。
富士子の母(CV:巴菁子)
夫とともに家業の茶屋『伊東園』を営む。彼女も背が高く175cmある。娘がどうしても一等賞がとれず、そしてバレエで挫折した過去を背負っているため、物事に対して悲観的な思考が多く、夫となった薫のことも当初は信用していなかった。
富士子の父(CV:坂東尚樹)
妻とともに家業の茶屋『伊東園』を営む。感情の起伏が激しい性格で、一人娘を溺愛する余り、原作の披露宴では花園の父と衝突する。彼も最終的に花園のことを認めている。
パッパラーおじさん(CV:松尾銀三)
松田がユーゴスラビアのザグレブで知り合ったタクシードライバー。猪熊柔の大ファンであり、彼と意気投合し、彼をベオグラードの会場まで連れて行く。その後はユーゴの政情不安もあって、バルセロナで劇的な再会をし、そして誘拐された加賀邦子救出に一役買う。運転は荒いが、テクニックは超一級。パッパラーおじさんとはアニメのタイトルからで、名前は不詳。なお彼が運転中に口ずさんでいるハミングはフォスターの草競馬。
片桐専務(CV:大矢兼臣)
トヨ産自動車の専務。猪熊柔の熱烈なファンとして登場するが、素性はガチ勢の女子柔道ファンだった(伊東富士子のファンでもあった)ことで接待旅行中に羽衣係長と意気投合する。
実写映画
1989年の春休み映画として東宝系の映画館で公開された。主演は浅香唯、相手役は阿部寛。
当時現役の柔道選手であった山口香、元柔道選手の山下泰裕(原作漫画にも実名で登場)がカメオ出演している。他にも、プロレスラーの前田日明、高田延彦や、現役のスポーツ選手らが出演している。
ストーリーは概ね原作前半の雰囲気を踏襲しているものの、ほぼ別物となっている。
浦沢や編集部はこの実写版を受けて「原作漫画が志向しているものとは異なる」「この作品は原作の意図を守って作るのは非常に難しい。やっぱり映像化は作品のためにも許可しない方が良いのではないか」と、映像化そのものにも難色を示しており、これによってアニメの放送が延期になったことがアニメ版のプロデューサーを務めた諏訪道彦によって示唆されている。→参考:諏訪のnote記事
放映終了後VHSが発表されたが廃盤となり、DVDやBlu-ray化もされていない。
テレビアニメ
『YAWARA! a fashionable judo girl!』というタイトルで、1989年10月から1992年9月にかけて日本テレビ系列局全21→24(放送終了時点)局ほかにて放送された。
全124話だが、2話連続の総集編が放送されたため、実際には122話である。また、本編は119話であり、あとの3話は柔の祖父・滋悟郎の若き日の思い出(のちにスピンオフ作品「JIGORO!」として単行本化されている)をアニメ化したものとなっている。
基本的には原作通りに進行したものの、ストーリーや設定は尺の都合や原作との進行の兼ね合いもあって一部改変・短縮されている。特に鶴亀トラベル編からはかなり駆け足の展開が続いており、例えば原作ではキーパーソンの一人となる羽衣係長の出番が大幅に削られてしまった。一方で、三葉女子短大受験後~入学直後は、柔と富士子の先輩となる独自キャラクターが登場したり、コメディテイストのオリジナルストーリーが続いたりしている。
途中で原作に追いついてしまったため、バルセロナ五輪編は放送されず終了した。
その後、オリンピック出場から完結は1996年に金曜ロードショーで『ずっと君の事が…』の副題で放送されたが、すでにバルセロナが終了していたため舞台がアトランタに変更された。名シーンがカットされていたり、描写に矛盾があったり(具体例として富士子の娘の年齢など)といった点から、ファンからの評価は賛否が分かれる。
また、テレビアニメをベースとした映画版も作られており、1992年の夏休み映画として公開された。
「(雪印アワー・板東英二の)わいわいスポーツ塾」(TBS系列局)を向こうに回しまずまずの視聴率を取っていたので、主題歌も永井真理子、今井美樹、辛島美登里、原由子などといった、時代を彩る大物アーティストを起用できたという。
アニメーション制作はマッドハウス、代理店はキティフィルム、ホスト局はよみうりテレビ。
一説では「らんま1/2」の放送権を獲得出来なった代替導入と言われていた。
主題歌
オープニングテーマ
「ミラクル・ガール」(第1 - 43話)
作詞:亜伊林、作曲:藤井宏一、編曲:根岸貴幸、歌:永井真理子
「雨にキッスの花束を」(第44 - 81話)
「負けるな女の子!」(第82 - 102話)
「YOU AND I」(第103 - 124話)
作詞・作曲:陣内大蔵、編曲:根岸貴幸、歌:永井真理子
エンディングテーマ
「スタンド・バイ・ミー」(第1 - 43話)
作詞:松本隆、作曲:矢萩渉、編曲:萩田光雄、歌:姫乃樹リカ
「笑顔を探して」(第44 - 81話)
作詞・作曲・歌:辛島美登里、編曲:若草恵
「少女時代」(第82 - 102話)
作詞・作曲・歌:原由子、編曲:小林武史・桑田佳祐
「いつもそこに君がいた」(第103 - 124話)
作詞・作曲:LOU、編曲:松浦晃久・LAZY LOU's BOOGIE、歌:LAZY LOU's BOOGIE
関連イラスト
ちなみに松田耕作と猪熊柔のカップリングは、かつて掛け算と俗称された言い方、松田×柔で通っている。少し前だと松田柔、今風だと松柔となるのだが、それで呼ばれることは少ない。
松田×柔(女子高生) | 松田×柔(女子大生) |
---|---|
松田×柔(OL) | 松田×柔(after) |
※いつの頃かは髪型で判断でき、高校、大学、社会人となるにつれて左分けの髪の密度が薄くなっていっている。
関連タグ
美味しんぼ:アニメの前番組。この作品自体は放送枠を移動した上で放送継続。しかも発表された漫画雑誌が同じ。