「魂……ちょうだい……。」
「自由……?」
概要
声:ゆかな
第一妖怪・神無
奈落が生み出した「無」の分身であり、長女。0歳(人間換算年齢は10歳)。
一人称は「私」。星印はうお座。
見た目は白髪で白装束に身を包んだ幼い少女の姿。奈落曰く「無の妖怪であり、無口かつ無表情に加え、気配や臭いはおろか、妖気・妖力すら持たない」と言っている。
※妖気という気配が無いだけであり、妖力自体は存在している。
常に大きな鏡「死鏡(しかがみ)」を抱えている(35~45巻までは、鏡ではなく赤子を抱いている)。その鏡は魂を吸い取り、攻撃を跳ね返すこともできるが、容量には限りがある。妖気も臭いがなく、清浄な結界内すらも自由に行き来できる。心臓はガラス玉やミラーボールのような形をしている。
彼女は心や感覚もなく、恐れも痛みも悲しみも、相手の行動の意味すら理解できないと評される。
しかし、彼女は非常に強い妖力を持っており、その妖力は白霊山編より前に生み出された分身の中では最も強力である。妖気という気配を発する事なく持前の妖力を駆使する事で、十分な戦闘を行う事ができる。
最初期の分身でありながら、時として7人の分身中でも、最強の戦闘力を発揮する。
性格
上述の通り、「無」の分身らしく意思・感情も希薄であり表情に表さない。自律心を抑制されているため、反抗しまくる分身達の中でただ一人、奈落に対しても従順だった。
奈落もそれを理解しており、自身の心臓である赤子を常に預けるほどに彼女を信用していた。
しかし、奈落はそんな彼女を「何も感じない。痛みも恐れも悲しみも……」、「ましてや情けなどかけたところで、その意味すらわからない……」と切り捨てていたが…?
終盤では妹にして一番付き合いの長かった分身である神楽の死により心境に変化が出たようで…?
能力
主に鏡を媒介にしてあらゆる妖術を用いる。
鏡には神無の妖力が蓄えられており、あらゆる妖術を行使する媒介に使われたが、本来はただの鏡である。戦う相手によっては、最高位の分身・赤子をも上回り、敵が強ければ強いほど力を増す合わせ鏡の性質を持っていた。そのため、序盤こそ大きな脅威とはならなかったが、犬夜叉が成長し鉄砕牙が強大化していくと共に神無もまた絶大な力を発揮するようになった。
- 吸魂
鏡に映した相手の魂を吸いとり仮死状態にする。そのまま殺害することも可能。村一個分の住人なら余裕で吸える。しかし、鏡に吸い込める魂には許容量があり、かごめのような巨大な魂を持つ相手に対しては決定打にはなり得なかった。
作中では神楽の屍舞と組み合わせて村人を操り、犬夜叉たちを苦しめた。
- 反射
鏡に映した相手の攻撃を跳ね返す。作中では珊瑚の飛来骨や犬夜叉が放った風の傷を跳ね返し、彼に重症を負わせた。
ただし、これを披露したのは最初だけで、終盤でも犬夜叉の技を跳ね返せたのかは不明。
- 投影
鏡に別の場所の光景を映すことができる。
これと最猛勝の偵察により、奈落は絶大な情報アドバンテージを得ていた。
- 鏡の影
敵を鏡の影で覆い、鏡武者の肉体の中心部から発生させた斬撃を神無を経由して鏡の影に囚われた敵に送り込む。結果、敵は鏡の影に降り注ぐ斬撃を無制限に受け続ける事になる。
カウンターが主体となる神無が自ら攻撃に出る珍しい術である。
鏡の影は敵を自動で追尾するため、神無はその場から動くこともなく敵を斬撃で攻撃し続ける。神無が放つ斬撃の威力は凄まじく、妖怪化した犬夜叉も大きな手傷を負い、鉄砕牙もその攻撃を受け続けると破損した。しかし技の威力が高すぎる上、神無本人の肉体が脆弱であるため、敵がこの技をこらえると、斬撃の衝撃が鏡の影と繋がっている神無本人にも伝わってしまい、神無もダメージを負ってしまうという欠点を持つ。
- 鏡の妖
神無が扱う妖術の一つであり、死鏡を解放することで発生する巨大武者のような妖怪。見た物をそっくりそのまま写し取り、相手の力を奪い取ることができる。鉄砕牙をコピーした。体の中央にある斬撃を発生させる空洞は神無があらゆる位置に発生させる「鏡の影」とつながっており、神無と連携することで敵を逃がさずに斬撃を与え続けることができる。妖の受けた傷は全て使い手の神無が負う。
アニメでは、神無のために花を摘むなど神無と独立した意識を持つ描写がなされた。後に鏡の妖の破片が奈落に回収されていて、夢幻の白夜を通じて殺生丸に渡される。破片の状態でも鏡の妖の力で、かつて鉄砕牙とひとつであった天生牙に破片の粉を塗した際には、鉄砕牙としての力を奪い取る形で取り戻させた他、鏡の妖同様、鉄砕牙の能力を奪った。
来歴
15巻から登場していたが、48巻では奈落の命令でついに鏡の妖を解放し、犬夜叉と激突した。強化に次ぐ強化で凄まじい武器と化していた鉄砕牙の能力を鏡の妖を介して映し取り、鉄砕牙の能力を使えなくなった犬夜叉を変化させるまでに追い詰めるが鏡の妖のダメージを自らが肩代わりすることで体中がボロボロになり戦闘不能になってしまう。
そんな神無を見て犬夜叉たちは彼女に情けをかけて見逃そうとするのだが、最期は奈落の指示に従って、心臓を潰され自爆させて消滅した(自爆は浅いが、かなり広いクレーターができるぐらいの威力だった)。その際にかごめが見たうっすらとした悲痛な表情が、彼女の最初で最後の表に出した感情である。
神無の死について、かごめは「(神無は本当は)死にたくなかった」と語っており、奈落も「死んだか、神無……。結局やつらのひとりも殺せぬまま……無念だったか……?ふっ、そんなことも感じていなかったか……心を持たぬおまえは……」と言っている。自分から切り捨てたくせに多少思うところがあったのか珍しくどこか寂しげな様子を見せていた。
余談だが、死に際にはかごめに「光が奈落を殺す」という言葉を残し、汚れた四魂の玉の中にある一点の光を見せた。なお、最期の瞬間に奈落の持つ四魂の玉に一点の光があり、それが弱点になるとかごめに伝えたが、後に奈落が四魂の玉を完全に穢れで塗り潰したため無駄になってしまった。
奈落に従順とは言い難かった他の分身(夢幻の白夜は除く)と違い、最後の最後まで奈落を裏切りこそしなかったが、その一方で、自分の側を吹き抜けた風に亡き神楽を思い浮かべたり、アニメでは神楽が亡くなった花畑に赴いて彼女の扇子を拾い、「神楽、風になれた…?自由を手に入れた?私は…私には、私には何もない…」と言い、それを湖に水葬するなど、最も長い付き合いであった妹の死を悼んでいた。彼女の内心では自由を渇望していた様子である。
追記
作者はワイド版20巻のインタビューでは、「全ての従順さを神無が全て持って行った。結果、後の連中はみんな奈落に逆らう図式になりました。」と発言している。つまり、奈落は自分への従順さを全て込めた分身を最初に生み出してしまったのである。
また、公式キャラ解説本『奥義皆伝』や作者・高橋留美子の発言によると、
「神無が一番奈落を理解している」「奈落が他の分身に与えるはずだった忠誠心を、神無が全部持っていった」という。
しかし、アニメでは尺稼ぎの都合もあり、奈落が一度自身の中核である人間の野盗・鬼蜘蛛を切り離した際に「誰……? 弟……?」と問いかけたり、映画『鏡の中の夢幻城』の影響で以降も短歌を詠むようになる等、本当に僅かながら感情豊かになっている。