「あたしは風だ。自由な風だ…」
「これが……あたしの求めていた自由——」
概要
声:大神いずみ
第二妖怪・神楽
奈落が生み出した「風」の分身。0歳(人間換算年齢は17歳)。
神無の妹で、以降生まれる分身たちの姉になる。一人称は「あたし」。蓮っ葉な口調を用いる。
外見は作者曰く「勝気な美人」であり、炎のように赤い瞳を持ち、羽の髪飾りを付けた艶やかな着物を身に着けた勝気な表情の和服美人。髪をほどくと腰まで伸びる長髪である。
美意識が高く、ストーリー毎に衣替えを行っている。また、地味に胸を完全に露出した回数が一番多い女性キャラでもある。他の分身もそうだが、半妖の奈落から生み出された分身とはいえ、奈落とは違い完全な妖怪であるため妖力を失う日がない。
性格
外見と同様に男勝りな性格で、基本的に荒々しい口調で話すが、登場初期に限り女性らしい言葉使いをしている。また、彼女は風のように自由に生きたいと考えており、奈落からの離反を幾度も企図するが、彼女の心臓は奈落の手中にあり命を握られている状態であるため、奈落には嫌々従っている。さらに、体に心臓がないため、どんな攻撃を受けても再生し、死ぬこともできない。
そのため、奈落打倒の計略を何度も廻らし、奈落を殺す算段がつくと度々殺生丸を頼っていた。
能力
風を支配する妖怪であり、手に持った扇を振るい自在に風を操って戦った。ただし、彼女の扇は単なる扇であり、風を操る力は神楽本人によるものである。
腕力は外見通り、人間の女性とほとんど変わらない。神楽の風の支配領域は奈落の城を丸ごと覆うほど広大であり、妖気の風をも支配下に置ける神楽の周辺には風の傷が存在しない。
初期の分身にもかかわらず、神無と共に妖力ではトップクラスである。
この能力の特性から、登場当初は犬夜叉も神楽相手に風の傷を容易に放たず、苦戦を強いられた。
他にも、多数の死体を操って数的に優位に立つ、相手を騙して誘き出す、竜蛇の舞に骨ごと巻き込ませて攻撃に利用するなど用途は様々である。
移動する際は、髪飾りの白い羽を術で大きくした羽根に乗って、空を飛ぶこともできる。
- 風刃の舞(ふうじんのまい)
周囲の風に妖力を込めて三日月状(鎌鼬)の刃を精製して攻撃する。神楽の最も基本的な技。
刀や槍はおろか犬夜叉の火鼠の衣も簡単に切り刻む。一度の動作で何発も放つ事ができるため、神楽のコントロールにより非常に命中率が高い。また、射程距離も長大で、神楽はこの技により上空から一方的に攻撃ができる。
- 竜蛇の舞(りゅうじゃのまい)
周囲の風を支配して竜巻を作り出し、その切っ先で敵を突き刺す。小規模だが、竜蛇の舞を展開したままにする事で、身を守る盾のようにも使用した。巨大な竜巻に身を隠しつつ、同時に風刃の舞を放って敵を攻撃するほか、刀や骨といった固形物や武器を竜蛇の舞に巻き込む事で、竜蛇の舞の威力を底上げする事もできる。
神楽が扱う風の例に漏れず、竜蛇の舞も神楽の妖気によって生み出されており、破魔の矢による浄化の力で竜巻は消滅する。
- 屍舞(しかばねまい)
死体の周辺の大気を操る事で、死体をまるで生きているかのように自在に動かせる。
死体を単に動かすだけに留まるだけでなく、その妖力によって肉体をかなり巧みに操作することができ、一時的になら言葉を話させる事もできた。
死体の臭いで鋼牙や犬夜叉などの嗅覚に優れた妖怪たちには屍舞だとすぐにバレるが、死亡直後の死体を使えば犬夜叉の嗅覚をもってしても屍舞には気づけない。
発動に必要な動作は扇を開くのみであり、その後は扇を閉じない限り持続する。神楽は屍舞を継続したままで、風刃の舞や竜蛇の舞といったあらゆる攻撃を同時に行った。
この技は意識ある生物を操る事はできない制約があるが、気絶や昏睡により意識を失っていれば生きていても屍舞は使用できる。
そのため、神楽は神無によって魂を抜かれた生きた人間も屍舞で操作する事が可能だった。
来歴
本編では、当初奈落の命令で犬夜叉の命を狙っていたが、自分の力では奈落を倒して心臓を取り返すなんて不可能だと判断をしてからは、密かに犬夜叉一行を支援するようになる。
また、琥珀の記憶が戻ったことを知った後は利害の一致もあり、実質(半ば本人同意の上で)利用する関係になる。さらに犬夜叉より強い殺生丸にも注目し、犬夜叉同様に殺生丸一行にも奈落を倒してもらおうと接触する。また、それ以前から既に弥勒から「命を取る気はなくなっていた」と言われている。
殺生丸も当初は神楽と会話もしてくれなかったが、何回も交流する事で少しずつ打ち解けていき、殺生丸が魍魎丸から神楽を庇った事もあった。
特に中盤、あの世とこの世の境に四魂の欠片があると判明し、それを取りに行くには牛頭と馬頭が門番をしている門を通るしかないが、死者ではないと門を通る時石化してしまうという厳しい条件があった。この石化を防ぐ手段がなく犬夜叉一行はおろか奈落も他の行く手段を探すしかなかったが、殺生丸だけは天生牙の力を認められ門を通る事が出来たため、神楽は殺生丸こそが奈落を倒せる存在だと確信する。
こういった交流のなかで神楽は殺生丸に恋慕というか、殺生丸の自由さに憧れていたというか、とにかく殺生丸に惹かれていく。
犬夜叉が朔の日に妖力を失うことを知っても、それを奈落に報告しなかった。自分と同じように奈落を裏切る弟・白童子や魍魎丸とその体内の赤子と手を組むが、後に魍魎丸とその体内の赤子の陰謀に気付き、琥珀を逃がすと同時に奈落一味から離脱する。
白童子との死闘の末、奈落に心臓を返してもらうも、同時に瘴気を注ぎ込まれてしまう。
瀕死になりながらも逃亡する神楽だが、たとえ僅かな時間とはいえ束の間の自由を手に入れ喜びながら、死に場所を花畑に決める。
薄れゆく意識の中で神楽は、「一人寂しく死んでいく……本当にこれが求めていた自由なのか?」と思っていたが、そんな時殺生丸がやって来る。
最初は奈落を追って来たのかと思ってガッカリしたものの、神楽がいると分かった上でやってきたと分かり喜んでいた。
「(…天生牙では救えん)逝くのか…」(殺生丸)
「ああ、もういい…。最後に…会えた」(神楽)
最期は、殺生丸に看取られながら風となって消えていった。殺生丸が天生牙で助けようとした数少ない人物の一人でもある。なお、神楽の死は殺生丸に大きな影響を与えており、心を持たぬはずの姉・神無でさえ、死後も神楽の姿を思い出す事があった。また、魍魎丸に神楽の死は「無駄死」と侮辱された時は怒りの表情を見せ、闘鬼神が壊れるのも厭わず攻撃を加えるなど、彼女の死が殺生丸に慈悲の心を芽生えさせる一因となった。さらに、神楽の死を蔑まれた殺生丸はその生涯で初めて「自分以外の者の為に怒り、悲しむ心」を抱く。これ以降、殺生丸は神楽が無駄死にではなかった事を証明すべく奈落を追い始める。
神楽は奈落に一切の忠誠心を抱いていなかったが、それを知っていた奈落は神楽の心臓だけで手元にとどめ、生殺与奪を握る事で神楽を支配していた。心臓を取り戻す方法は、奈落が心臓返還の意志を示すか、奈落の死だけである。一度は奈落を裏切り四魂のかけらを持ち逃げした事もあった神楽だが、奈落は四魂のかけらを蓄え、体を組み替えながら強大化する一方だった。
余談だが、神楽は奈落に握られている心臓が傷つけられない限りは不死身であり、どれほどの傷を負わされても肉体が再生する。本人の耐久力は、犬夜叉が大怪我をした状態の風の傷の威力ならば切り傷で済む程度にはあるが、胸に穴が開くほどのダメージを受けると一時的に気を失い、再生には時を要する。
追記
ワイド版19巻の作者インタビューで高橋留美子は
「神楽は人間タイプの妖怪。ずっと「自由になりたい」という希望を抱いていましたが、それは絶対無理だった、それでも彼女は一生懸命生きていたと思います。神楽の最期に関しては、その数ヶ月前からずっと考えていて、いざ本当にその時を迎えた時は、なんかシミュレーションやり過ぎたかなという所はあります。でも盛大に送ってあげたいみたいな思いは叶えられたかな」とコメントを残している。
そのキャラクター性や最期からファンからの人気も高く、2019年の『全るーみっくアニメ大投票』ではキャラクター部門で総合20位(作品別でみると7位)にランクインしている。
映画『鏡の中の夢幻城』では、奈落が死亡(実際は仮死状態)した際、一時的に心臓が戻っている。しかし、作者曰く、実際は奈落が死んでも心臓が戻るかは不明で、神楽が自由になれる保証は無かったらしい。酷な言い方にはなるが、神楽が本当に自由になるには退場という手段以外なかったらしい。作者としても、彼女の死は印象に残っているエピソードの一つとして挙げている。
声を担当した大神いずみの本業はアナウンサーであり、夫は元木大介である。