私がこうすることで喜ばぬ女はいなかった

わたしがこうすることでよろこばぬおんなはいなかった

アニメ映画『かぐや姫の物語』における「御門」の台詞。

概要

かぐや姫に背後から抱きついた御門が言った台詞。

このシーンにおいて、かぐや姫は痴漢に遭ったが如き凄まじい生理的嫌悪感と拒絶反応を露わにしている。

これまでに抱きついてきた女性達が、最高権力者である自分に対し「なぜ拒否の態度を見せなかったか」「なぜ喜んでるように振舞いさえしたのか」という想像力を決定的に欠いた男のセクハラ＆パワハラ発言である。

もっとも、かぐや姫の教育係である相模は、女の幸せは位の高い人間に嫁ぐことであると語っており、事実、当時の社会では文の交換といった間接的な接触から始まり、両家公認の夜這いを経て正式な結婚に至ることが常識であったため、見合いの一幕としか捉えられずとも無理の無い話ではあった。

そのため、かぐや姫に誘いを拒否された御門は、彼女を非常識であると言わんが如くの反応を見せている。要するに、「かぐや姫がこの世における最大の幸せを拒否した」と映ったのである。

それを理解できないかぐや姫は、「この世」に生きていく事を自ら否定し、月からのお迎えを呼んでしまうことになる。

かぐや姫（そしてそれを見てきた観客）が持つ現代的な感覚と、その他の登場人物達が持つ当時の一般的な感覚の齟齬を象徴するワンシーンである。