老人の火
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ろうじんのひ
江戸時代の奇談集『絵本百物語』に記載される怪火をともなう老人の怪異。
江戸時代の奇談集『絵本百物語』に記載される、山中において怪火をともなう老人の怪異。
信州(長野県)と遠州(静岡県)の境の山中に、雨の降る日になると妖しい火をともなった老人がどこぞから現れる。
この火を恐れて逃げだしても、老人とともにどこまでも追いかけてくるといい、雨中に燃えるばかりかいくら水をかけても消すことはできないのだという。
この火を消すためには獣の皮を被せると良いとされ、頭上に履き物を乗せると脇道にそれて追いかけてこないとされる。
別名老人火もしくは天狗の御燈(てんぐのみあかし)とも呼ばれる。
なお獣の皮で消すことができるのは、老人の本性が深山に棲み人心を惑わせる天狗であり、天狗は江戸の有識者によれば獣の肉を嫌うとされていたことからであると考察されている。
あの天狗に攫われたことで有名な天狗小僧寅吉が、国学者・平田篤胤に「天狗は魚や鳥を食べるが獣は食べない」と語ったと文政5年(1822年)に刊行された『仙境異聞』に、寛政11年(1799年)に刊行された岡田新川の随筆『秉穂録』にも、山中で出会った巨大な山伏が肉を焼く臭いから逃げ出したと記述されているのだという。
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