概説
キリスト教において“聖人と認定された人物の遺品”とされるもの。
2世紀ごろにローマ帝国のキリスト教迫害で命を落として逝った殉教者たちを偲び、圧政に負けず信仰に殉じた姿を敬うために、手厚く葬って彼らの生き様から学ぶために始まったとされる。
遺物といってもその種類は多岐にわたり、生前の愛用品から当人の遺骨や遺髪、果ては処刑に用いられた器物など、かなり混沌としている。
中世初期のキリスト教では、「教会の聖餐をおこなう祭壇には聖遺物を埋葬しなければならない」と定められていたため、その信仰が過熱していった。
そのため、新たな聖人の遺体や遺品が発見されると、争奪戦が起きることも珍しくなく、遺体ならば寸刻みにバラされて配布されることもままあった。
また偽物も多数存在し、特にキリストの手足を貫いた「聖釘」については判明しているだけでも30本以上も存在している。
代表的な聖遺物
- 聖十字 …… キリストを磔刑に処した十字架
- 聖骸布 …… キリストの遺体を包んだという布
- 聖釘 …… キリストを磔刑にした際に手足に打ち込んだ釘
- 聖杯 …… キリストが最後の晩餐で用い、磔で滴るキリストの血を受けた杯
- 聖槍 …… キリストの絶命を確認した槍、いわゆるロンギヌスの槍