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われわれは、ミカンや機械を作っているんじゃないんです。人間を作っているんです!

概要

3年B組金八先生 第二シリーズ』第5回・第6回のサブタイトル。1980年10月31日11月7日放送回。また同作で放送されたセリフのひとつであり、第二シリーズを通して描かれるキーテーマのひとつ。

意味は「みかん箱の中にカビの生えたみかんがひとつでもあれば他のみかんにもカビが繁殖し結果的に全部のみかんがダメになってしまう」というもの。→腐ったミカン

物語上においては、これを教育的に言い換えれば「クラスの中に一人でもバカがいれば生徒全員がバカになってしまう」という考え方で、用いられている。

物語のあらまし

ストーリー上では、キーパーソンでもあるクラスメイトの加藤優がこの腐ったみかんとして例えられており、加藤が荒くれの不良で手がつけられなくなったため母校の荒谷二中を追われ、桜中学に転校したというものだった。その考え方に対して主人公の坂本金八は猛反発しており、生徒はみかんでは無く同じ人間の一人ではないかと論していたが、荒谷二中にて加藤の担任教師だった米村は、これが自身の教育の限界だと表しており自分自身もどうすれば良いのか分からなくなる程、当時の教育は衰退していたという。米村も不良たちと一般生徒と不良たちを目の敵にする上司(教頭・生活指導担当)たちとの間で折り合いを取るために必死で疲弊しきっており、最終的に己の保身や他の生徒の安寧のために加藤を生け贄にしてしまった自身の限界とその情けなさを金八に嘆くのだった(ここが第5回・第6回)。

それでも金八は加藤に対して「お前(加藤)はみかんでは無く生徒の一人であり、教育を正しく受ける権利があるんだ」「義務教育の義務とは教師や親が『子どもが社会を生きられるようになるための知恵や知識を教える』義務であり、また『子どもが自らの将来のため望む教育を受けられる権利を正しく行使できるように取り計らう』義務だ」と教え続ける。またクラスメイトからも偏見な眼差しを受ける事なく一クラスメイトとして接してもらえた事から金八たち桜中学と周りの人たちは最終的に加藤を真人間に戻す事に成功する(このプロセスが他のテーマと平行して第二シリーズ全体で描かれる)。

だが、加藤のもともとの母校である荒谷二中は依然として「腐ったミカンの方程式」を錦の御旗にして、不良や落ちこぼれに対する締め付けをどんどん厳しくしていた。加藤を最後まで庇いきれなかった米村教諭は金八との邂逅を経て今一度、一念発起し「もう同じ悲劇は繰り返させない」と奮闘するも効果は出ず、ついに米村は過労死に倒れる。荒谷二中の不良たちを曲がりなりにも守っていた、同校の教育の良心はついに潰えた。

荒谷二中の教頭一派は「遂に邪魔者の米村が消えた」と裏で高らかに歓喜の祝杯を挙げつつ、表向きには見せかけの涙を流して見せて「米村教諭は不良どもに殺されたのだ。弔い合戦をせねばならない。彼の死に報いるためにも荒谷二中から不良どもを叩き潰し追い出し一掃するのだ」とする御題目を立て改革の大鉈として同校に強権を奮い恐怖政治を敷く(もちろん米村教諭はそんな事は望んでおらず、教頭たちの行動はむしろ彼の志に泥を塗り名誉を汚す行為である)。

不良側はこれに反発してさらに荒れ回り、ついに荒谷二中の学校運営は不登校者が出る程にまで悪化していった。

荒谷二中の友人たちから、その現状を聞かされて救いを求めて縋られた加藤は荒谷二中職員たちの横暴な行為に我慢できず、また自らを頼ってきた友人たちを見捨てられなくなる(ここで彼らを見捨ててしまう事は、自分を桜中学へ放逐した荒谷二中職員たちと同じ事をするに等しい、と加藤は考えてしまった。さらには荒谷二中の友人たちから「自分ひとりだけ逃げて幸せになれれば、それでいいのか。そんなに薄情な男だったのか」と責められた事で引っ込みもつかなくなってしまった)。

苦悩の果て荒谷二中の友たちを救う決断をした加藤は、他の不良生徒と共に荒谷二中に殴り込み、学校中を荒しまくり校長と学年指導を監禁してしまう。そして加藤は自分らは腐ったみかんでは無く生徒の一人だ、「人として」向き合ってくれ(金八先生たち桜中学はそれを教えてくれた)と訴えて今までの行為を謝罪するように要求。校内放送をもジャックして交渉の内容を校内および荒谷二中の近隣にリアルタイムで公開配信する。

結果的に荒谷二中側はついに校長が立ち、自分達に非があった事を認め謝罪。加藤たちは自分は腐ったみかんではない事を遂に認められたが、その代償として加藤は警察に逮捕されてしまう。

この時に荒谷二中側(校長ではなく、生活指導教員と教頭)は「謝罪は暴力を伴う脅迫の末に強要されたもので事態を納めるために仕方なくしたものであり本意ではない」として被害届を出そうとする。加藤に前科を付けさせて荒谷二中どころか世間から「腐ったミカン」として彼を切り離させようとしたのだ。

それを止めさせようとする金八に対して荒谷二中の教頭たちは「不良どもに迎合し、腐ったミカンに余計な知恵をつけさせて頭に乗らせた失格教師め。その理想論は現実を見ない空論に過ぎない。真面目に勉学に励み次のステップへ進んでいる一般の生徒を蔑ろにして、人間の社会秩序を壊すものだ」(意訳)と罵倒。さらに「義務教育は子どもの権利だろう」と言い募る金八に「そんな綺麗事は子どもを増長させるだけの害悪だ。それを子どもに教えるなど教育者にとって最悪の禁忌だ。見てみろ、あんた(金八)がそんな事を不良どもに吹き込んだ結果がこの騒動を招いたんだ。罪もない一般生徒まで巻き込んで。むしろこっちこそ被害者だ。どうしてくれる」(意訳)とパンドラの箱を開いたかの如く非難する。金八はそんな荒谷二中の教員たちの姿に正面から、彼らの教育へのスタンスそのものが間違っていると看破し、彼らは自らが教育者となるべき時に誓い負ったはずである「子どもを教育する義務」を放棄(つまり義務教育の「義務」を蔑ろにしているのは加藤たちではなく荒谷二中の教師たち)しており、それこそが教育者としての怠慢で、そもそもの騒動の原因だと説く。

その後、金八ら桜中学の校長や教員ら、さらに加藤が就職する事になっていた工場の社長をはじめとする桜中学のPTA役員たちが加藤を釈放させるべく警察の説得にかかる。そして事件の担当刑事(自身も過去には不良であり桜中学の君塚校長に庇われ救われた過去があった)も様々なレトリックで被害届の受理引き延ばしを図り、さらには放送を聞いていた荒谷二中の学区内の人々がその実情を改めて知った事で(今風に言えば炎上して)中学に対して猛抗議。これらが功を奏したおかげで荒谷二中からの被害届は下げられて加藤は無罪放免となった。釈放の際に担当刑事から「君塚校長や金八先生は良い先生だから困らせるな」と釘を刺された上で、金八からはケジメのビンタを受けると同時にお前は俺の生徒だ、忘れるんじゃないぞと抱擁され、加藤は金八が(そして桜中学の先生たちや、誰よりも3年B組の皆が)自分を腐ったみかんでは無く3年B組のクラスメイトかつ人間としてずっと見ていてくれていた事を悟るのだった(ここが第23回・第24回「卒業式前の暴力」)。

そして、この年の桜中学卒業式。その卒業生代表の壇上には加藤の姿があった。加藤は自分をかばってくれた社長が経営している地元の自動車修理工場に就職。働きながら定時制高校に通う事となった。自らを庇ってくれた人たちの愛情を身に刻み、社会の一員として誇りを持って働きながら勉学に励むその姿は、かつて腐ったミカンと蔑まれた男が取り戻した「人間の誇り」であった(第二シリーズ最終回「サヨナラ金八先生」)。

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