概要
昔、ある所にえもいわれぬ美味しい「おつゆ」を毎日作ってくれるお嫁さんを迎えた男がおりました。
そんなある日、夫はどうしてこんなに美味しい「おつゆ」が作れるのだろうかと好奇心から疑問を抱き、仕事へと出かけるふりをして天井へと上がると、そっと嫁の様子を窺いました。
するとお嫁さんは大きな盥(たらい)にお湯を沸かすと、姿を蛸へと変えてその中へとザブザブと入って行くではありませんか。
そうなのです。女房は我が身で出汁を取って、それを「おつゆ」としていたのでした。
事の真相を知った夫は怒り、天井から下りると「お前ゃあこうして体洗てその汁をわしにおつゆにして吸わいたんやろ」と女房を問い詰めると、真相を知られた蛸女房は「そうじゃけに、こっで暇くれ」といって出て行ったという事です。