概要
江戸時代に、その者がキリスト教徒であるかを調べるために踏ませた、イエス・キリストや聖母マリアを描いた絵(正確には木板もしくは金属板)のこと。また、その絵を踏むこと。
禁教令の下で潜伏していたキリシタンを炙り出し、処罰するために発明された手法だったが、キリシタンが内面の信仰こそを重んじる解釈に切り替えて踏み絵を躊躇なく踏みつけるようになったため効果は薄れていった。
最終的には開国に伴って廃止された。
本来は踏ませる絵の側を「踏み絵(踏絵)」、絵を踏む・踏ませる行為を「絵踏み(絵踏)」と呼んでいたが、歴史の事象となる中で徐々に「踏み絵」で一括りにされるようになっていった。
近年は当時の呼称に即して使い分けるように戻りつつある。
ちなみに実際のキリスト教では偶像崇拝は禁止されており、彫像や絵画はあくまでもイメージを共有するためのシンボルでしかないという立場であるため、絵に敬意を払わず踏みつけるのは信徒として正しい態度である。
にもかかわらず、当初相応に機能していたのには理由がある。
日本に持ち込まれたカトリックには信仰にキリストや聖人の彫像や絵画を用いる伝統があり、それに伴い現物を神聖視する風習があったのだ。
(このあたりの詳細は、2024年に流行したネットミームである「踏めば助かるのに」の記事も参考のこと)
『ガリバー旅行記』にもガリバーが日本に入国した際、絵踏みを拒否する下りがあり、ヨーロッパ本土でもそれなりに有効であったと思われる資料も存在している。
転じて、その人の主義や主張・立場を試すためのもののことを指して「踏み絵」と言う事もある。
本来は「信仰心が無い」ことを証明するためのものだったが、慣用的な意味では「忠誠心や覚悟がある」ことを示すためのものに変わっている。
なおpixiv上では、江戸時代ともキリスト教とも無関係に、単に何かを踏んでいるだけのイラストにもタグが付けられていることがある。