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曖昧さ回避
ハイパーインフレーション(英語:Hyperinflation)とは、非常にペースの早いインフレーションのことである。詳しくは→ハイパーインフレ
概要
漫画家住吉九による経済+帝国主義+絶頂漫画。ジャンプ+の漫画賞「超速!連載グランプリ2019」ゴールドグランプリを獲得して、2020年11月27日より少年ジャンプ+で連載開始、2023年3月17日に完結を迎えた。単行本は全6巻。
次にくるマンガ大賞2021Webマンガ部門第6位、第6回アニメ化してほしいマンガランキング第1位に輝いた。
掲載先の少年ジャンプ+では「ハイテンションギャグ」と分類されており、実際に台詞回しなどにギャグ漫画のようなシリアスな笑いが随所に盛り込まれている。
その一方で能力を駆使した知略サスペンスのような一面や、近代の通貨製造技術を紹介する場面も見られており、内容を高く評価する声も多い。
あらすじ
ヴィクトニア帝国の奴隷狩りによって両親を失ったガブール人の少年ルーク。奴隷狩りにより最愛の姉ハルまでも攫われたルークは、リビドーにより彼自身の細身から偽造紙幣を射出する特殊能力を駆使した知略で帝国を倒すことを決意する。
作風と特徴
本作における最大の特徴が、ハイパーインフレーションというタイトルの通りに、「経済」に主眼を置いた頭脳戦が繰り広げられることである。
作中に登場する用語の金本位制の解説や、インフレーションの理屈。それがもたらす影響の説明はかなり本格的かつ、分かりやすいもので、一種の経済学入門と言えるほど。
この作中における偽札製造の流れやそのことが国家転覆に繋がる説明が作者の体験談かと思えるほどに詳細で分かりやすいことから、作中のセリフを用いて「作者さん(偽札製造とか)やってたでしょ!?」と読者からネタにされることもある。
また、奴隷制度による差別や、奴隷の悲惨な生活、民族差別などの社会や歴史の暗部に踏み込んだ描写もストーリーに大きな影響を与えている。
頭脳戦について言うと、合理的な心理戦や、お互いの手の内を読み合う情報戦など、かなり本格的な戦いが繰り広げられる一方で、相手の頭が悪くて手の内が読めない、そもそも対等な人間として見られていないから交渉のテーブルにつけない、上層部が有能で良識的であるが故に主人公の能力を信じられない、などの今までに無い角度からの展開を見せており、従来の頭脳戦とは一味違った戦いを楽しめる。
その一方で、頭は良いが変態的なキャラクターや、変人じみた強烈な個性を持ったキャラクターが登場しては、それらのキャラが状況を引っ掻き回すので、冷静に見ればシリアスな場面のところで、ぶっ飛んだギャグやコメディチックなシーンが散見される。
特に、主人公であるルーク、ルークの宿敵であるレジャット、本作最大のトリックスターであるグレシャムの三人は、それぞれがそれぞれの方向にぶっ飛んだキャラクターである為に、高度な頭脳戦を繰り広げる傍ら、シュールで思わず笑ってしまうような掛け合いを繰り広げる。
このしっかりした知識とキャラクターのぶっ飛び具合から、『ゴールデンカムイ』のキャラクターたちが引き合いに出される事がよくある。
登場人物
ルーク一味
主人公の少年。別名「贋王ルーク」。元より帝国の書物を読みヴィクトニア語を理解しており、贋金作りにも明るく、領地警備する帝国の人間と密かにこの贋金とベルク札の「両替」をしていた。姉のハルを攫われたのを契機にガブール神から生殖能力と引き換えに「ベルク札」の贋札製造能力を得た。服の露出度が高い。
「大きな赤ちゃん」の通り名をもつ奴隷商。儲け話に目がなく、どんな非常時にも金儲けを最優先に考える。その際に非常に頭が切れるカリスマ性も持つ。人、モノ問わず目に入るものに値段を付ける癖がある。(ベルク換算)
グレシャムの部下で没落貴族。おそらく本作で最も律儀かつ最も影の薄い人物。雇い主となったグレシャムに尽くしているが、同時にルークの人生が狂うことを危惧している。後に出身国でハイパーインフレが起こっていたことが判明する。
森に捨てられて育ったガブール人の野生児。ハル姉(の人形)が好き。女性でありほぼ全裸なのだが、行動が野生児的なせいか、あまりエロくはない。作中において野生で培った腕力や俊敏さを活かした戦闘をみせている。ルークからヴィクト語を教えられたため、片言で会話はできるが、文字までは理解できない。
クルツ
帝国で高利貸を営むガブール老人。60歳まで奴隷であったが解放後にガブール人の取り立て人組織を構成して財を成し、一門でルークに協力する。
ビオラ
芸術家の女性。贋札作りの技術面を担当する。共に贋札作りを働いた職人たち曰く「だらしないし傲慢きちだ」「性格も悪いし口も悪い」「そのくせ人一倍繊細で」「猫みたいにときどき優しくなる」。
ヴィクトニア帝国
ガブール人反乱軍のリーダーだが、実はガブール系ヴィクトニア人で帝国情報部所属のスパイ。ルークの特殊能力を探っている。なお、「レジャット」は偽名らしい。
レジャットの部下。小柄な若い女性で、銃撃が得意。銃に対してただならぬ愛着を見せている。
レジャットの部下。頭に髷のある東国の大男で、剣技が得意。ヴィクトニア帝国には髪結床がないため、髷はかなり大きい。
偽造不可能とされる帝国の紙幣製造を担当する美術工芸家。用紙やインキをはじめ、原図や原版の作製、印刷、仕上など全工程の知識を持つ。美術工芸において他者の追従を許さない、認めない。そして、紙幣の判別方法は文字通り紙幣を食べること。
その他の人物
ハル
ルークの姉で、ルーク達の村の巫女。「力」について何らかの秘密を知っている。過去にレジャットと会い、「力」の秘密を探ろうとした彼を退けている。その後ヴィクトニア帝国に捕まり、彼女に似せた人形が製造・オークションに出品された。
用語
ガブール人
ルークをはじめとする民族。白い髪と赤い瞳と尖った耳を持ち、ヴィクトニア帝国本土からは遠く離れた大陸に生きているが、帝国による奴隷狩りにより数百年前から奴隷として世界各地に散らばっている。
最大の特徴として、ガブール神により時折り特別な力を与えられた男の子が現れる。
ヴィクトニア帝国でも、ガブール人のこの能力については伝えられているが、概ね迷信として受け取られている。
ガブール神
ガブール人が崇める、「モアイ」のような姿の神。
本人(神)によれば生殖能力を全ての子供達に与える存在との事なのだが、時に、それすらも凌駕する「欲望」を持つガブール人の子供に、生殖能力と引き換えに特別な「力」を与える。「力」が与えられ、同胞のガブール人達を救った少年達は「救世主伝説」としてガブール人の巫女(ハルなど)から語り継がれている。過去の救世主は「銃の量産」や「蝗害」を引き起こしたことが確認されている。
ちなみに、ルークは父母を見殺しにされたと感じていたため、ガブール神を象った金貨や銀の仮面、銅製の像から「地獄のフルコース」と称して「贋金」(=名前だけで中身のない存在)を偽造していたのだが、「力」を授けに現れた際にその扱いには傷ついたと語っていた。
ベルク札
本作の根幹を成す紙幣である。ヴィクトニア帝国やその植民地で広く流通しており、恐らくはこの世界の基軸通貨。金本位制に則り、金の兌換券として使用される。世界でも最高水準の偽造防止技術によって製造されており、贋札製作は困難となっている。
ハイパーノート
ルークの能力によって作り出された贋札の通称。「ノート」とは紙幣を指す言葉であり、今までの贋札を超えた贋札として、ハイパーノートの名前を与えられた。
作品の根幹をなすアイテムであり、ある点を除けば材質や透かし等の偽造防止技術は本物のベルク札と全く変わり無い。
贋札としての唯一の欠点は、ベルク札には偽装防止のため表面にそれぞれ異なる番号が印字されているが、ルークの出すベルク札は番号が全て同じということである。また、番号ほど致命的ではないが、質感やシワの付き方も一枚一枚全て同じである。
つまりこのハイパーノート、大量に出してそれをそのまま使用すると贋札と即バレてしまうという致命的な弱点がある。この欠点をどうごまかし、巨額の金を動かしてルークの野望を進めていくかというのがこの作品のストーリーの中核となる。
また、ルークがハイパーノートを射出するには結構な体力を消耗し、無限に産み出せるというわけではない。ルークが射出できるベルク札の量は1日あたり約1億ベルク。
このハイパーノートは幾つかの種類があり、作品の展開に応じて内容が変遷している。
1:ルークの能力によって生み出されたベルク札。
2:1を材料にして生み出されたベルク札。元の贋札よりも精巧になっている。
3:2をより進化させた贋札。通称、真・ハイパーノート。物語の最終局面に登場する。