概要
パンジ・スティック / パンジスティック(英語:punji stick)は、殺傷を目的としたブービートラップの一種である。パンジ・ステーク / パンジステーク(英語:punji stake)ともいうが、英語・日本語ともに辞事典の殆ど全てで前者が見出し語になっている。
日本語では、平安時代から用いられている「乱杙 / 乱杭(らんぐい)」がおおよそ同義と言える。
小学館『プログレッシブ英和中辞典』第5版には「(草の中に隠して敵兵の足に刺さるようにしてある)踏み抜き竹やり」とある(※1)。
Online Etymology Dictionary によれば、英語 "punji(パンジ)" は、動物や敵の罠として落とし穴に設置された、鋭く尖った竹の杭のことであり(※2)、毒が塗られていることもある(※2)。この語は、"punja(パンジャ)という語形で1872年にベンガル語の文脈で初出した(※2)。この "punja" は、おそらくチベット・ビルマ語派言語から来ているという起源不明の語である(※2)。
National Amy Musium(イギリスの国立陸軍博物館)によれば、もともと "punja" は、パンジャーブ地方の先住民が動物を捕らえるために用いていた伝統的な罠であり、19世紀になってインドの兵士が軍事転用したものであるという(※3)。
「punji(パンジ;踏み抜き罠用の竹製の杭)stick(スティック:細枝、細長い棒)」というその名のとおり、落とし穴の底に竹槍や逆茂木(さかもぎ|枝の張った樹木を外側に向けて並べ立てたもの)などの突起物が仕掛けてあり、落ちた者に突き刺さる仕組みになっている。落ちればたとえ即死しなくとも深手を負うのが必至であるため、古くから狩猟や紛争で用いられてきた。
対人用あるいは対大型動物用の大掛かりなものでは、罠に掛かって負傷した者が壊疽や破傷風を患うよう、突起物の先端に毒や糞などを塗り付ける場合もある。
この種の踏み抜きの罠である「パンジ・スパイク(英語:panji spike)」は、ベトナム戦争中にベトコン(南ベトナム解放民族戦線)がゲリラ戦を展開する中で盛んに使用し(※3)、多くのアメリカ兵がこの罠の犠牲になった(※3)。カモフラージュした落とし穴や溝に仕掛けるものであり(※3)、仕掛ける側が最も期待していたのは、敵兵に致命傷を負わせることではなく、肉体的と精神的の両面で耐えがたい苦痛を与え、負傷した兵とその仲間が戦場から撤退せざるを得なくなることであったという(※3)。
別名・表記揺れ
- パンジ・スティック[※タグあり:作品数 0→8〈2023年9月18日時点〉]/ パンジスティック(英語:punji stick)
- 乱杙 / 乱杭
- パンジ・ステーク / パンジステーク[※タグあり:作品数 3→1〈2023年9月18日時点〉](英語:punji stake)
誤記
- バンジ・ステーク / バンジステーク[※タグあり:作品数 5→4〈2023年9月18日時点〉]
脚注
※1 "punji stick" - 小学館『プログレッシブ英和中辞典』第5版
※2 "punji stick" - Online Etymology Dictionary(OED、オンライン・エティモロジー・ディクショナリー)
※3 [https://www.armymuseum.co.nz/punji-spikes/ >"Punji Spikes"]"Punji Spikes" - National Amy Musium(イギリスの国立陸軍博物館)