月の都
つきのみやこ
現代でも用いられる「月の都」
明月で有名な場所などでその都市を指して「月の都」とする場合もある。
東方Projectにおける「月の都」
月の都は東方Projectのシリーズ中複数の作品に登場している。
『東方求聞口授』における原作者ZUNのインタビューによると月の都は「竜宮」にも相当し、月人だけでなく天人も住まう地である。
東方儚月抄(小説版)においては、「竜宮」に関連した人物にまつわるエピソードも展開される。
参考→綿月豊姫
なお本記事ではその親記事を本項目の地理的特性から、便宜上「幻想郷」の項目に設定してあるが、東方Projectにおける「月の都」は実際には幻想郷に属するものではなく、地上や幻想郷に並存する存在であるところの「月」に属する場所あるいは都市である。
場所
月の裏側。
ただし、「月の裏側」は東方Projectで言うところの結界で隔てられた表裏、という意味もあり、単純に物理的な裏側、というわけではない。
東方儚月抄ではその所在地を月の裏側としたうえで、「結界の内側」を裏側と表現している。
しかし稗田阿求による「幻想郷縁起」(『東方求聞史紀』)には単に「月の裏側」とだけあるので、実際に物理的にも裏側である可能性もある。
八雲紫によれば、「 月における月の都は地上での幻想郷と同じ関係 」である。
即ち、出入りに特殊な要件を持つ大結界によって隔てられた幻想郷と同様に、月の都もまた何らかの性質をもった結界によって「表側の月」と隔てられているということである。
同時に、表側の技術による「ロケット」では月の都にはたどり着けないが、「 幻想郷のロケット 」ならばあるいは結界を超えて辿り着けるのでは、とも考察している。
なお、「表側の月」には月-地球間の距離測定のために「 人間が置いていった大きな鏡 」(アポロ11号などの設置によるコーナーキューブ型レーザー反射鏡などを指すか)があるのだが、綿月依姫曰くこれは「 霊験もな何もない鏡 」で、「 心ない兎たちがよく位置をずらしたりして遊んでいる 」。
その場に居合わせた玉兎たちが判り易く視線をそらしている様子が描かれているので、どうやら事実のようである。
特性
ただ、地上から行った人間など(博麗霊夢や魂魄妖夢)の様子や、地上に降りてきたレイセンが月の都と地上の双方で違和感なく呼吸をしていたり、あるいは月の都の通りを息を切らして走るなどの描写もあることから、呼吸に関しては何ら問題ないようである。
周辺地理においても呼吸には問題ないようで、月の都以外の豊かの海等で呼吸も会話も成り立っている他、スペルカード戦という息の切れる活動をしても大丈夫だったことからもそれは伺える。
ただしこの効果が月の都の特性なのか結界による効果なのかは不明。
また、月は一種の浄土であり、穢れのない土地である。
穢れとは生命現象における生と死によるもので、月の民はこの穢れを嫌う。
なお豊姫らが楽しみにしている桃が「熟れる」という変化やお酒が醸成されるという変化などがあるため、月の都は種々の状態が静止的というわけではなく変化を有するものである。その変化の質が地上とは異なるということである。
住人
いつから住みついたのかは不明(「幻想郷縁起」)。
儚月抄に描かれたものによれば、住人の服装は様々な洋服を着ており多様であるが、総じてレイセンに似たうさみみが付いている。
一方、兵士の玉兎にはブレザーとプリーツスカートにネクタイ、耳の出るリボン付きヘルメットなどからなる制服があり耳も鈴仙・優曇華院・イナバのようにぴんと立っている(ただし、場面や感情によって変化している)。
また後述の門番(月の都の門番)もこれとは異なる対応した装備がある。
なお、月の民から見る地上とは「重大犯罪を犯した者が堕ちる監獄」である。
綿月豊姫曰く、「地上に住む 生きる 死ぬ それだけで罪なのです」。
ZUNによれば、「プライドの高い」住民たちであるようだ。
また先述のように「穢れ」を嫌っており、月の民が長寿なのはこの「穢れ」がないためでもある。
一方月の住人たちに実際に接触した霊夢は帰還後の射命丸文からの取材に、月の住民について「 みんな明るくて 」と答えている。また月で「月の兎」達の前で神降ろしを披露した際も最後には拍手とおひねりの小銭を受け、あたたかい雰囲気であったことが伺える。
飲食や飲酒、宴の文化もあり、依姫や豊姫などによるテーブルでの会話の場面がある。
作中では、地上の者ながら月の料理を現地で味わった人物もある。
建築様式
柱や窓、扉、照明他調度品などの細かな意匠が中華風である。
また、儚月抄(漫画版)の作中に登場する門番(月の都の門番)が装備している帷子のような鎧は古代中国で用いられたものに似ている。
これについてZUNは、「 昔の日本の都は大陸の都を手本にして造ったものが多いですから、これでいいんです 」とコメントで述べている。
技術水準
八雲藍がレミリア・スカーレットをある計画に勧誘した際の発言によると、月の都には「 幻想郷にはない珍しい物や技術 」があり、それは「 今みたいに毎日遊びながら無限のエネルギーを得られるような技術 」であるとのこと。
実際に登場した技術の成果物である「月の最新兵器」は、幻想郷から見てもオーバーテクノロジーそのものの代物であった。
地上との往来
個々の能力や道具を用いるなど複数の方法がある。
- 境界を操る能力
紫などによる行き来の方法。
紫が用いた方法として具体的に解説されたケースとしては、「 湖に映った幻の満月と本物の満月の境界を弄り湖から月に飛びこめるようにする 」方法。
- 見えている月を追いかける
かつて月の民が往来の際に用いた方法。
また、幻想郷から飛び立ったロケットもこの方法と同様である。
- 月の羽衣
「月と地上を行き来できる道具」として「月の羽衣」が登場している。
作中、レイセンが使用した。
このように方法はあるのだが、いずれも誰しもが任意のタイミングで自由に利用できるというようなものではない。
阿求は「幻想郷縁起」にて「 実際に月に行く事はほぼ不可能 」としている。
地上とのつながり
- 月面戦争
『儚月抄』本編の数百年前(別の場面では「千年前」とも)、八雲紫らが月の都を侵攻したことに始まる衝突。
藍がレミリアに話したところによると、技術の奪取が目的。
その様子と結果について「幻想郷縁起」(『求聞史紀』)によれば、「 増長した妖怪を集めて行ったが、月の近代兵器の前にあえなく惨敗 」した。
藍は先の対談の際にこの敗走について「 不慮の事故 」としたが、レミリアからは「 月の民にコテンパンにされて逃げ帰って来たんでしょ? 」と返されている。
なお位置づけは不明ながら、西行寺幽々子が「 この戦いを見たことがある 」。
- 第二次月面戦争
『儚月抄』で語られた一件。
近年の動向
新勢力が誕生して月支配を企んでいる(鈴仙・優曇華院・イナバの情報)。
ただし地上の永遠亭に住まう元・月の民である八意永琳は、鈴仙の情報源をして「 兎達は大げさで嘘吐きだからどこまで本当なのかね 」と評している。
一方で、輝夜によればその新勢力と思しきものによって表側の月に立てられていた旗(アメリカ国旗)が引き抜かれ、地上に投げ返されている。なおこの旗は森で妖精がおもちゃにしていたところを永琳が発見した。
また月の都においては、かつて地上から送り込まれた「 刺客 」であるアポロ計画の脅威は取り除かれたが、中国による月面探査計画である「嫦娥計画」は警戒している。
太陽神であるところのアポロは月とは相性が悪く月の都には至れなかったが、嫦娥は今なお月に幽閉される罪人である。そのため、その名を冠したプロジェクトである嫦娥計画は月の都で危険視されている。
さらに玉兎達の間には革命の噂もあり、そのリーダーとして名が挙がっているのが永琳である。
曰く、「 八意永琳の逆襲 」。
もちろん永琳にはそのような意思はなく、彼女はこれについて「その場にいないものを悪役にする」ことで民意を逸らし、混乱を避けるために誰かが流した噂なのだろうと分析している。
むしろ永琳は「 月の都を守りたい 」とし、地上から智恵で以て独自に活動している。
そして、そんな情勢の中で起こったのが、第二次月面戦争なのである。
月のその他の地理的構成
月人の住む月の都の他、それ以外の地として以下の海の名前が登場している。
作中では、「裏側」にあるものは名前の通り実際に水のある「海」であり、広大な大洋でもある。
またこれらはすべて実際に月面(作中では前述のように「表側の月」にあたる)にある月の海(濃い色の玄武岩で覆われた平原)の名称である。
なお、漫画版儚月抄第一話冒頭に紫の台詞として
「 神酒を手に 晴れを越え 雨を越え 嵐を越え そして賢者を捜しなさい 」とあるが、実際の月にも「神酒の海」「晴れの海」「雨の海」「嵐の大洋」「賢者の海」がある。