「…俺は見たぞ。お前の正体を…黙ってるつもりはないからな」
「GUYSクルー、ヒビノ・ミライです!…もちろんGUYSの連中もグルですよ。奴の正体を知りながらずっと隠してたんです!」
「はぁ? 声援して勝てれば苦労しないぜ」
演:加藤厚成
ウルトラシリーズにはウルトラマン第23話『故郷は地球』や、帰ってきたウルトラマン第33話『怪獣使いと少年』など、時として人間側の過失や人間の持つ醜さなどを表現し、批判している話が少なからず存在するが、その中でもこのヒルカワというキャラクターは人間の醜さをそのまま具現化させたとも呼ぶべきキャラクターで、シリーズの中でもかなり特異な存在である。
劇中では終始、人として最低な行動ばかりとり、主人公達(そして視聴者)の苛立ちを募らせた上、ウルトラシリーズにおいては珍しく最後の最後まで改心する事もなく、挙句の果てには、(一応断罪は受けたものの)敵怪人・怪獣のような決定的な制裁は受けないままフェードアウトするという観る側からすれば非常に後味の悪過ぎる退場の仕方をした事から、全国の子供達や往年のウルトラシリーズファンから怒りや反感を買い、一部からは『ウルトラシリーズ史上最低最悪な地球人』という声も上がり、その嫌われぶりは、演じた役者本人も否定的な意見を出したり、後に同じ役者が出演したウルトラシリーズのキャラが非業な最期を遂げた際に喜ぶ声が上がった程(詳しくは後述を参照)で、放送終了後の現在でもネット上などで特撮作品における最も悪名高い人間の一人として必ず名前が上がる。
概要
フルネームは蛭川光彦(ヒルカワ・ミツヒコ)。職業はフリーのジャーナリスト。
陰湿、狡猾、傍若無人、傲慢、強欲、粗暴、不誠実、不作法、無慈悲、恩知らずといった醜悪な性格や感情ばかりをこれでもかと言わんばかりに寄せ集めたような外道の中の外道な男で、地球人の面汚しである(※1)。
その醜悪な性格は仕事面でもフルに発揮されており、ゴシップやスキャンダルといった他人の粗を探ったり、他人が不幸になる様な記事を常に追い求め、そのやり方も実に悪質なもので、(実際のマスゴミがよく使う手である)相手の心境や事情を顧みない強引な突撃取材は勿論の事、他人の弱みに付け込んで利用したり、果ては盗撮などの卑劣な手段を使う事も辞さない典型的な悪徳記者だが、その一方でジャーナリストとしてのスキル自体は優秀という、まさに才能の無駄遣いという言葉を悪い意味で体現している。
『正義感』、『思いやり』といった良心の類は欠片も持ちあわせておらず、正義や平和をモットーとする地球防衛隊「GUYS」に対して、嘲笑している様な態度をとり、彼らの評判を貶めるための粗探しに余念が無い。
また、GUYSが地球防衛組織という立場上、下手に民間人に対して暴力などの強行手段をとる事ができないのをいい事にGUYSメンバーを好き放題に挑発する等、自身が民間人(にして報道関係者)である立場を最大限に悪用する一面もある。
長年に渡って地球を幾度も怪獣や侵略者の脅威から守ってきてくれたウルトラマンに対しても異星人であるという理由だけで差別感情を抱いており、単に宇宙人呼ばわりしたり、果ては化け物と侮蔑するなど、それまで彼らが戦ってきた怪獣や侵略者達と同等に見ており、さらには「アイツら(ウルトラマン)がいるから地球が怪獣や宇宙人に狙われる」と(一方的な偏見のみで)疫病神扱いしている(※2)。
このように心の芯まで腐った人間性故に、出会った人物の殆どからは不快感を抱かれ、GUYSメンバーからは「ハイエナ」や「人間のクズ」と評されている他、さらには狡猾さや陰険さではウルトラシリーズ随一ともいえる異次元人ヤプールをもってして「下等な人間」と言わしめた程(※3)。
※1……2015年3月現在、wikipediaのウルトラマンメビウスの項目内におけるヒルカワの紹介文においても「救い様がないほど腐り果てた外道」と表記されている。
※2……ヒルカワの意見を擁護するわけではないが「ウルトラマンが地球にいる事自体が怪獣や侵略者達が出現する原因になっているのでは?」という懐疑的な発言はこれまでの歴代シリーズでも度々上がっており、ある程度ウルトラマンの存在する世界における定説の一種となっている模様。
※3……元々「A」の頃から幾度となく人間を見下す発言を繰り返してきたヤプールであったが、意外なことに個人を指してその手の発言をしたことは殆どなく、度々自分が利用してきた悪人達の醜い様を目の当たりにしても、大抵は「人間」という種全体を指す形で見下していた。その事からも、個人的に「下等」呼ばわりされたヒルカワが、如何に非道な性格をしていたのかがよくわかる。
登場以前
GUYS入隊前のイカルガ・ジョージのバッシング記事(さらに後述するヒルカワ初登場時のジョージの言葉を推測するに、その記事も実質は虚構記事であったと思われる)を書いており、入隊後もしつこくインタビューを迫っていた様子。
初登場時
初登場の28話ではGUYSのアマガイ・コノミの幼なじみで、傷害事件を起こして芸能界から干され気味になっていた俳優スザキ・ジュンと結託(実際はスザキの弱みを握る形で利用していた)し、スザキの友人と偽って、コノミに接触する。
いち早くその正体に気づいたジョージを中心としたGUYSメンバー達から詰問されるも、本人は開き直る様な態度をみせただけでなく、スザキがコノミを騙していたと知り、激昂してスザキに殴りかかろうとしたウルトラマンメビウスことヒビノ・ミライの様子をカメラで盗撮し、それを使ってバッシング記事を仕立てあげようと企んで、逃亡した。だがその後、自分の過ちに気がついたスザキにカメラのデータの入ったディスクをGUYSに引き渡されてしまい、目論見は失敗に終わる。
再登場時
43話で再び登場。街で海洋学者ジングウジ・アヤと遊びに来ていたミライを偶然発見し、28話での一件の逆恨みを兼ねて、今度こそGUYSを貶める為のスキャンダルのネタを仕入れようと、彼に強引な取材を試みる。その時はアヤの毅然とした応対によって退けられてしまうが、その後も密かにミライやアヤを追跡する。その結果、後に巻き込まれる形でミライやアヤと共にヤプールに異次元に拉致される事となる。
そこから続く44話では、自分が異次元に拉致されたと知るや否や、「(自分がこんな目にあったのは)お前(ミライ)のせいだ」と完全にお門違いとしか言いようのない言いがかりを喚きながらミライに八つ当たりした上、ミライがウルトラマンである事を知ると、彼の事を「化け物」と拒絶しただけでなく、ヤプールからの「メビウスを殺せば助けてやる」という誘惑に乗ってミライを殺そうとするなど持ち前の醜悪で下衆な人間性を余す事なく見せつける。
そのあまりに屈辱的過ぎる仕打ちによって、歴代ウルトラ戦士の中でも特に人間に対し深い敬愛を抱き、そして自身もそれまで人間に裏切られる様な事が無かったミライは、大きなショックを受け、彼の中で僅かながら人間に対する失望の念が生じ、そのせいで危うくヤプールに付け入られそうになってしまったが、実はそれらも全てヤプールの作戦のひとつであり、ヤプールはヒルカワの外道ぶりを見せつける事で、ミライに人間の愚かさや醜さを思い知らせ、その上で仲間に引き込もうと企んでいた。それでもミライを信じ続けようとしたアヤや、ウルトラマンAの激励によってミライはヤプールの誘いを退けると、メビウスに変身してヤプールを倒し、アヤやヒルカワも助け出されたが、この時ヒルカワは微塵の反省や悪びれる様子も見せず、ミライに向かって不吉な笑みを浮かべながら上記した台詞(一段目)にもある「黙ってるつもりはないからな」という意味深な言葉を残しつつ去っていった。
本編終盤時
44話終盤に残した言葉のとおり、最終三部作の序章である48話にて彼は週刊誌に「GUYSに宇宙人が潜伏」という記事を公表。ミライの正体をマスコミに暴露するという、恩を仇で返す行動を平然とやってのける。さらに自らワイドショーに出演して、上記の台詞(二段目)を宣言して、ミライとGUYS双方を非難する事で世間に動揺を走らせ、GUYSやメビウスの信頼を失墜させようとする。さらに間が悪い事に、この時地球は、侵略の為に迫りつつあったエンペラ星人から「メビウスを差し出せ」という要求を受けている最中であり、この公表は結果的にミライを地球追放の危機に立たせる事となった。しかし、GUYS隊長にして総監のサコミズ・シンゴの世界に向けた演説(その最中も、サコミズを嘲笑って茶々を入れようと上記の台詞(三段目)を言い放つが、即座に同席していた女性アナウンサーから「静かに!」と一喝されてしまった)によって、人類はミライの引渡しを拒否する意向を示し、エンペラ星人を前に団結力を強くし、GUYSやウルトラマンをより強い信頼を向けるようになるというヒルカワの意図とは真逆な展開と進む事となる。これによってヒルカワは逆に自分自身の面目や信頼を世界的に失うという自業自得なしっぺ返しを受ける羽目になり、最後は周りから完全に無視される形で、愕然とした表情を浮かべながら物語から退場した。
余談
ヒルカワ最後の登場回となった第48話における『エンペラ星人の侵略に対するGUYSや人類の団結』というメビウス最終章序盤の山場ともいえるこの場面の、直接のきっかけはサコミズの演説であったものの、その大元を作ったのは他ならぬヒルカワである。つまり彼は自分が壊そうとしていた人類とウルトラマンの絆を逆に強くさせるきっかけを作った立役者となったのだ。
『絆』や『友情』とは程遠い一人の犬畜生の行動がきっかけとなって、人類とウルトラマンの絆や友情がより強くなった事は実に皮肉な話である。
また、ヒルカワが何故、そこまで正義や優しさを微塵も持たない人間になってしまい、ウルトラマンやGUYSの事を異様に敵視する様になったかは、劇中では一切明かされる事はなかったが、中には
怪獣に襲われた時、ウルトラマンが来てくれると信じていたがウルトラマンは来てくれなかった。
もしくは
ウルトラマンと怪獣の戦いに巻き込まれて家族や友人を殺された為、ウルトラマンや防衛チームを信じる事ができなくなってしまった。
と、彼にも哀しい過去があったからと推測する声や…
怪獣頻出期の後の世代の人間故に、怪獣・宇宙人と戦うウルトラマンや、地球防衛隊の苦労を知らず、彼らの心境を顧みる事が出来なかった。
とヒルカワの悪行を(ある程度)仕方なしに考える意見もある。
また、ヤプールとの決着戦にあたる43、44話の演出上、ヤプールが過去にAとの戦いでも度々利用した手であった『人間のエゴを利用した、ウルトラマンを心理面から攻撃する作戦』を展開させる上で、それまで人間の負の一面を明確に目の当たりにしてこなかったメビウスに大きなダメージを与える程の凄まじい人間性を持った悪人をぶつける必要があった事から、その適任者であったヒルカワはある意味、メビウスとヤプールの最後の戦いにおける重要なキーキャラクターとしての役割を担い、その点から考えてみれば作品全体を語る上で、一種の必要悪であったと認識する声も少数ながら存在する。
ちなみに、ヒルカワを演じた加藤厚成氏は前々作において主人公の仲間でありながら実は全ての諸悪の根源という衝撃的な役どころを演じており、今作のヒルカワ然り、後述するダイル然り、ウルトラシリーズではそれぞれに個性の強い悪役を演じ続けている事で有名だが、そんな加藤氏にとっても、ヒルカワは良くも悪くもかなりの印象に残った模様で、後に自身のブログでヒルカワを役者として演じる上ではインパクトのあったキャラとして評価しながらも、彼が劇中で起こした一連の悪行に関しては、「男の風上にもおけない」と苦言を呈していた。
メビウスの放映終了後、加藤氏はメビウスの次々作にあたるウルトラシリーズウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEYにて、主人公の所属するZAP SPACYのライバル的存在であるキャラクターペダン星人のレイオニクスハンター・ダイルとして出演。
『主人公であるレイとの幾度の戦いの中で少しずつ心境に変化が生じ、最後は自分の身を犠牲にして窮地に陥っていたZAPクルーを救うも、致命傷を負い、レイに未来を託して命を落とす』というヒルカワとは真逆ともいえる勇敢で悲劇的な悪役を演じ、その演技力と悲壮な人物設定が高い評価を受けていた。
しかし、一部のウルトラシリーズのファンの中には加藤氏=ヒルカワのキャラが根強く残ってしまっており、ダイルの死に際して、ネット上に上がった感想の中には「メビウスの時の仕返し」「あの時の鬱憤が晴れた」「当然の報い」「ようやくヒルカワに天罰が下りた」「自業自得」「ヒルカワざまぁwww」といった虚実混合の声が上がるなど、メビウスでは実現しなかった“ヒルカワ”の死に様を見れた事に喜んだ者も少なくなかった。
二次創作において
前述したとおり、放送終了から既に数年以上経った現在でもヒルカワの本編での数々の卑劣な悪行と退場の仕方に不満を持つ者は数多く、pixivやその他の二次創作作品まとめサイトなどに投稿されている一部の特撮系の二次創作品などには、その後のヒルカワを描いた作品も存在するが、いずれもメビウス本編同様の悪逆非道ぶりを見せるも、最後はその因果応報と言わんばかりに、他の作品の変身ヒロインを脅そうとして絶対に敵に回してはいけない大財閥に拉致られたり、他の作品の敵怪人に袋叩きにされたり、ニセウルトラマンに化けたザラブ星人に光線技で殺されたり(ウルトラマンに殺されるようにも見える)、怪獣に食い殺されたりと、本編で果たされなかった分、各作者達の思い思いな形で悲惨ながらも自業自得な最期を遂げている。
2ちゃんねるの関連スレやヤフーなどの質問広場などで行われた希望する死に方のアンケートでもドルズ星人やギマイラに怪獣にされて無残な最期を遂げる、本編でも蔑まれたヤプールに支配され一生奴隷にされるなどの末路がリクエストされている。
また、一部の作家の作品には特撮の負の一面、ひいてはヒルカワのキャラクターそのものに対する風刺の意味を込めて、ヒルカワをモチーフにした外道なキャラクターを登場させている作品もある。
関連タグ
ウルトラマンメビウス 円谷プロ 吐き気を催す邪悪 マスゴミ 人間のクズ 外道 嫌われ者
ヒルカワのクズっぷりが特に顕著だった第43、44話はウルトラマンAやその宿敵ヤプール、その配下の超獣(メビウスキラー、ルナチクス)が登場するなど、全体的にAをリスペクトした内容の話であったが、そもそもAは他のウルトラシリーズと比較しても、前述した高倉司令官然り、ヒルカワと同じ様な醜悪なエゴイズムを抱いた人間がゲストとして数多く登場し、時にそんな卑劣な人間達の汚れた心をヤプールが打倒ウルトラマンの為に利用する事も少なくなかった。ヒルカワのキャラクター像や一連の行動は、Aの世界観、ひいてはその作中で描写された『人間のエゴイズム』に対する皮肉を含んだオマージュともいえる。
ヒルカワと同じく加藤厚成氏が物語の黒幕である石堀光彦=ダークザギ役(ヒルカワの本名「ミツヒコ」もこの役名が元ネタとなっている)で出演している。黒幕だけあってこちらの役でもヒルカワに劣らぬゲスっぷりを見せたが、ヒルカワとは違い、最後はきっちりとウルトラマンに倒され、制裁されている。
ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEVER ENDING ODYSSEY
加藤氏が主人公のライバルの一人であるレイオニクスハンター・ダイル役で出演したウルトラシリーズの三作品目。前述したとおり、こちらの加藤氏が演じるダイルはネクサス(ダークザギ)、メビウス(ヒルカワ)とは一転して、悪役というよりは“ダークヒーロー”と呼ぶべきキャラであり、これによって「卑劣漢」の悪印象を持たれていた加藤氏に対するウルトラシリーズファンからの評価は好転している。