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多砲塔戦車の編集履歴

2019-05-05 22:48:33 バージョン

多砲塔戦車

たほうとうせんしゃ

第一次世界大戦からの戦間期に各国で研究された砲塔が複数存在する戦車。

概要

第一次世界大戦

第一次世界大戦から誕生した戦車は、第一次世界大戦時に、欧州での西部戦線において

塹壕突破兵器としてニーズが生まれた。

1917年に登場したルノーFT-17 軽戦車が採用した、全周旋回可能な砲塔を車体上部に搭載する形状が、効率的な戦車のレイアウトとして確立され、その後の多くの戦車がそれに倣うようになった。


多砲塔戦車の誕生

第一次世界大戦後も戦車の研究開発が続けられた。しかし、未だに戦車は塹壕突破兵器という認識であり、あくまでも歩兵支援が主であった(戦車同士の戦闘が定着したのは第二次世界大戦前後の頃からである)。

そんな中イギリス軍参謀本部の構想に基づき1925年にビッカース・アームストロング社で「A1E1 インディペンデント重戦車」が製造された。これは、歩兵と共同ではなく戦車単体で塹壕を突破する狙いのもとで開発され、車体に砲塔が大小合わせて5基搭載されていた。これが世界で最初の多砲塔戦車である。


世界の反応

インディペンデント重戦車は各国で注目され各国で多砲塔戦車が次々と誕生したが、世界恐慌による影響などの諸事情で試作機にとどまり量産されることはなかった。しかし、世界恐慌の影響をほとんど受けないソ連ではインディペンデント重戦車を参考にした。T-28中戦車やT-35重戦車などが量産されることになり、特にT-28の生産数は500輌を超えた。


問題点

複数の方向へ死角無く機銃を配置することで、側方や後方からの攻撃を防御しようという意図があり、単独でも歩兵の肉薄攻撃に耐えうることを意図した発想である。

特に側面攻撃から守られることは、戦車の敵陣突破を容易にすると考えられていたが、デメリットも大きかった


  1. 大型化と重量増による機動力の低下
  2. 重量軽減のために全体的に装甲が薄い(T-35の前面装甲は30mmで、初期のⅢ号戦車と同程度)
  3. 操作人員の増加による戦車内の指揮混乱
  4. スペース不足による整備性の低下
  5. 高価格
  6. 設計コンセプトが実戦にそぐわない

第二次世界大戦が始まると……

多砲塔戦車の設計コンセプト(塹壕突破用兵器)とは裏腹に、第二次世界大戦においては塹壕戦は殆ど行われなかった。

当初のコンセプトの通り、『塹壕を踏み越えて機関銃で敵を蹴散らす』という目的なら上手くいったのだろうが、戦車による機動戦術が主体となり、戦術的にもそぐわない多砲塔戦車は重要性を失った。

ソ連でも第二次世界大戦の独ソ戦前のフィンランドとの冬戦争で実戦投入されたT-28やT-35、試作車のSMKやT-100が使い物にならないことが明らかになり、その後の独ソ戦を最後に姿を消した。

かのスターリン「君たちは何故戦車の中に百貨店など作ろうとするのかね」と皮肉をこぼしていた。

(ちなみに、その後単砲塔にして軽くなった分装甲を厚くしたKV-1は結構活躍した。)


ただし、T-28は継続戦争でフィンランド軍に鹵獲されて運用されていた。

当時のフィンランドは兵器が著しく不足しており、いくら「使えない」戦車でも贅沢は言えなかったのだ。

それでも1951年までは運用が続けられ、T-34/85を撃破する活躍も見せたという。


スピードは遅く、周囲に機関銃で弾幕を張るのが目的だから火力も低い。

そのうえ一番弱いのは防御力で、そのくせやたらと重かった。

結局は戦争のスピード、そして時代からも取り残されてしまったのである。


活躍した多砲塔戦車

前記フィンランド軍鹵獲のT-28の他に、多砲塔戦車の形式で比較的活躍した戦車としてはアメリカのM3中戦車があげられることがあるが「二つ以上の全周旋回式の戦闘室を持っていない」ので厳密には多砲塔戦車には当てはまらない(一応、全周旋回式の37mm砲塔の上にこれまた全周旋回式の車長用の銃塔が設置されていた)。


ドイツのIV号戦車が登場すると、アメリカがそれまで保有していたM2中戦車はあらゆる面で前近代的になってしまった。そこで、急遽75mm砲装備の中戦車が開発されることになった。


しかし、IV号戦車に対抗するための長砲身75mm砲は重く、アメリカをもってしても短期間で全周砲塔でこれを搭載する戦車を開発し量産することは困難だった。

そこで、とりあえずケースメイト式として車体前面に限定的な旋回砲として搭載することになった。

だが、これでは主力中戦車としては死角が大きくなってしまい、流動的な戦場に対応しきれない。

そこで、車体の上に37mm副砲塔を搭載したのである。


他の多砲塔戦車とスタート地点は異なるが、主砲の死角を補う為の副砲という意味では結果として多砲塔戦車そのものといえ無くもない。


M3中戦車はアフリカ戦線でそれなりの戦果を上げ、当初は重宝された。実践に耐えなかった他の多砲塔戦車に比べると、それなりに活躍したのである。


もっとも、75mm砲を全周砲塔で搭載したM4シャーマン中戦車までのつなぎ、という意味では、やはり主役と言える兵器ではなかった。


実はイギリスのクルセーダー巡航戦車も、初期型は車体前部に小型の旋回式の銃塔が装備されていた。

ただし熱気と発射ガスが充満しやすかったため使用されなくなり、もっぱら荷物置き場として使われていた。

後期型では銃塔自体が撤去されている。


よみがえる多砲塔戦車思想

だが1990年代に入ると事情が少し異なってくる。


1960年代から1980年代にかけて、戦車の最も厄介な敵は戦闘ヘリだった。

そこで80年代後半から高度な電子制御技術を使った地上部隊用の近接防空システムが登場し始める。

さらに90年代に入るとこれの小型軽量化が進み、嘗ては防空システム専用に装甲車両が必要だったものが、主力戦車のオプションとして装備できるまでに小型化したのだ。


近年においては、対テロなどの非対称戦においては装甲の外に上半身を出している車長が狙撃されるなどが起きており、TUSK(Tank Urban Survival Kit:戦車市街地生存キット)の一環として被害低減のためにもそういった装備は必要が高まっていった。

赤外線暗視装置や熱赤外線映像により車内にいながらに索敵と攻撃が可能なRWS(Remote Weapon System)と呼ばれるものは主に軽機関銃重機関銃が搭載されているが、汎用性を高めて40mmグレネードマシンガンや30mm機関砲などの搭載も可能なものも登場している。


そんな中登場したロシアT-90は、主砲塔の上にデカい近接防御銃塔を装備して登場。第二次世界大戦前のブームとは異なり主砲塔に防御銃塔が宿り木する形だが、明らかに複数の動力旋回砲/銃塔を装備したことになる。


  • イラストはT-90Aだが、最新型のT-90MSなどはもっと端的に“動力銃塔”と化している。

すなわち、かつての多砲塔戦車の問題を高度電子制御技術が解決していったのである。

  1. 重量増の問題:プラットフォームたる本体が充分に大きくまたエンジン出力に余裕があれば問題ないサイズにまで小型軽量化。
  2. 装甲の問題:戦車本体の装甲は削る必要がなく、また防御銃塔は電子制御なので中に人がいることを前提で装甲する必要はない。
  3. 指揮・操縦上の問題:近接防御銃塔に対しては乗員は最低限の指示をすればよく、後はコンピューターが自動的に照準・戦車本体の機動に伴う補正などをする。
  4. 操作人員の増加の問題:近接防御銃塔に専用の人員の配置は必要としない。また、主砲も自動化が進み省力化されているため、搭乗員はT-72より減少。
  5. スペース不足の問題:上記に加えて内燃機関技術の飛躍的進歩により、搭載火器に必要とするスペースは充分確保できるようになった。

といった具合である。


価格については、(T-72より)高価であるが、それに見合った能力を持っているとされるのが現状の評価である。


そして何より、戦車の役割が第一次世界大戦時のそれに近づきつつあるのである。

T-90はソ連時代末期に開発されたが、それらはソ連のアフガニスタン侵攻における戦訓がふんだんに取り入れられていた。アフガンでの戦闘はムスリム抵抗組織とのゲリラ戦であり、アメリカの主力戦車と撃ちあうことを前提に開発されたT-72は当初、ゲリラ兵の携行対戦車兵器によって甚大な被害を出した。この為T-72のアップデートですでにこのような装備の思想は取り入れられていたものを、T-90ではシャシー設計の段階で前提にしたことでより充実させたのである。


そしてソ連が崩壊、ロシアがそれまでのソ連程の力を持たなくなると、戦車同士の撃ちあいは遠い過去のものとなり、再び戦車の敵は建造物等に隠れ潜む歩兵・ゲリラ兵となったのである。

またたとえ同世代の戦車同士による大規模な戦車戦が展開されたとしても、その最中に邪魔な存在となる航空機や歩兵の攻撃など、従来は随伴部隊に期待する他なかった阻害要因を(ある程度まで)自力で排除できるようになり、この面でメリットはあると言える。

この為T-90ほど極端なスタイルではないが、西側各国の第3.5~第4世代主力戦車も、オプション品として電子制御の近接防御システムを装備可能にしている。(更にRWSを船舶の主兵装として搭載し、高速航行中に比較的精密な銃撃を可能とするまでになった)

それはまさしく多砲塔戦車思想そのものであった。


同志スターリン戦車の中に百貨店はつくれるようになったのですよ!!


各国の多砲塔戦車


イギリス

ソ連

フランス

  • シャール FCM2C重戦車

ドイツ

  • NbFz(ノイバウファールツォイク)
  • ラーテ(ペーパープランのみ)

日本


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