概要
硬骨魚綱フグ目フグ科に属する185種の魚の総称。漢字表記は『河豚』。
豚と表される通り、膨らんだ丸い体型に愛嬌のある表情が特徴で、デフォルメされたマスコットやモチーフとしてしばしば用いられる。
フグ目にはハコフグ(ハコフグ科)やハリセンボン(ハリセンボン科)、マンボウ(マンボウ科)、カワハギ(カワハギ科)などの魚も含まれる。
大多数は海水魚だが、一部汽水や淡水に棲むフグも存在する。
淡水性フグの一部は観賞魚として人気が高い。
危険な毒『テトロドトキシン』
剽軽な外見とは裏腹に、アルカロイド系の猛毒テトロドトキシン(通称フグ毒)を体内に含むことで知られる。
毒は内臓や皮膚など一部にのみ存在する種から体全体に毒がたまる種まで様々であり、肝臓・卵巣が最も毒性が強い。
また、肉自体や精巣(白子)は無毒の種が多い。
フグ毒生成のメカニズムについては、フグが餌としているヒトデや貝が由来とする説や、フグの腸内細菌がフグ毒を生成している説などがあるが、餌や季節によっては無毒のフグが育つ事もあるという。
なお、ヒトデ、ナマコなどにはフグ毒は効かないと言われているが、これは対応する神経がないからでは、とという見解がある。
テトロドトキシンを服用した場合、全身の神経が麻痺して呼吸困難となり、人工呼吸など即座の救命処置がなされなかった場合は死に至る。
この為、素人による調理は大変危険である。
また、このテトロドトキシンは熱に強いため煮ようと焼こうと毒が残り、知らずに食べて死に至るケースも多くある。
だが、テトロドトキシンは医療用の麻酔薬として使用される場合もあり、ブードゥー教など一部の宗教では毒薬や麻薬の材料とされていた。
生ける屍として知られるゾンビの正体も、テトロドトキシンによってトランス状態に陥った人間だったのではないかという説がある。
テトロドトキシンはフグ特有の毒ではなく、タコやスベスベマンジュウガニ、ヒトデ、一部の両生類も持っている事がある。
食材として
猛毒の魚として知られる一方で、一部の種は高級食材として扱われる事が多いのも特徴である。
毒を含む部位を除去し、洗浄した上での刺身や、鍋料理に使われる。
ただし、調理には専用の免許である都道府県が発行する「ふぐ調理師免許」(自治体により多少名称が異なる場合がある)が必要となる。
にもかかわらず、現在も素人の調理による中毒や死亡事故が後を絶たない。
また、2年ほど塩漬けにした後に糠漬けや粕漬けに加工することで食用可能とした卵巣が金沢や佐渡の一部の業者で製造・販売されている。
しかし、無毒化のメカニズムは未だ解明されておらず、出荷前の検査はマウスに毒見させるのだとか。
これは、明治時代に日本で最初にフグ食を解禁したのが同市であり、以降フグを専門とする料亭が繁栄したためである。
現在でもフグは下関市のシンボルであり、市内にはフグをあしらった公共物(提灯、マンホール、銅像など)が多数存在する。
呼称
特に関西圏ではフグそのものを指して「テッポウ」(鉄砲)と呼ぶが、それは「当たれば死ぬ」事への洒落である。
なお、山口県(特に下関市)や九州(特に北部九州)では「フク」と濁らずに呼んでいる。
また、同じ九州でも長崎県島原地方では「がんば【島原地方の方言で「棺桶(ガン)を(ば)そばに置いてでも食べたい」の略】」と呼ばれている。
余談
大型のフグは非常に発達した顎と鋭い歯を持っており、硬いものでも易々と噛み切ってしまう。
取り扱いの際には絶対に口に指を入れない事。
また、ネット上ではイルカにつつかれたりする等の画像がきっかけで『不遇なフグ』として有名。
関連タグ
ふぐ刺し/てっさ てっちり 河豚の日 温泉トラフグ 水を吐くフグ