概要
生誕 弘治2年(1556年)
死没 文禄4年2月7日(1595年3月17日)
近江国の生まれ。織田信長や豊臣秀吉といった実力者に仕え、会津91万石の大大名となる。天下人への夢を抱くも志半ばで病没した。
生涯
弘治2年(1556年)、六角氏に仕える蒲生賢秀の三男(嫡男)・鶴千代として生まれた。
永禄11年(1568年)、六角義賢が上洛を目指す織田信長に倒され、賢秀は信長に臣従し、鶴千代は人質として岐阜に送られた。鶴千代と対面した信長は「目付常ならず、只者にては有るべからず」と述べ、彼を人質ではなく家臣として重用し、娘の冬姫と許婚に決めるほど気に入ったという。
元服して「忠三郎賦秀」と名乗り、伊勢での北畠具教との戦いで初陣を果たし、姉川の戦いや長篠の戦いなどの合戦に従軍。本能寺の変後は豊臣秀吉に仕え、小牧・長久手の戦いでは峰城、戸木城、加賀野井城を攻めて秀吉を後方から支援した。この戦いの際に氏郷は銃弾を3発受けている。
その後も秀吉の手足となり、九州征伐では岩石城を攻略し、小田原攻めでは韮山城の攻撃部隊に加わった。
天正16年(1588年)、伊勢(三重)に12万石を与えられ、居城の松坂城を築いた。この前後に名を「氏郷」に改めた。
秀吉も氏郷の才能を認めていたが、逆にその実力を恐れていた。天正18年(1590年)、東北の伊達政宗を監視する理由で会津へ移封され、42万石の大名となる(後検地により91万石)。この待遇に氏郷は内心不服であった。政宗と対立しながらも、商人や職人を集めて殖産興業を伸ばして街作りに努め、自らの幼名からとった鶴ヶ城(会津若松城)を築いた。
文禄元年(1592年)、朝鮮出兵のため名護屋まで出張。この頃から体調を崩すようになる。養生のために上洛し、秀吉が開いた宴会にも無理して出席するが、氏郷の重病は誰の目にも明らかで、心配した秀吉が医者を派遣している。
文禄4年2月7日(1595年)に京都伏見で亡くなった。39歳という若さであった。政宗や石田三成、直江兼続などによる毒殺説もあるが、実際は直腸か膵臓の癌による病死とされている。
人物
茶道に興味を示し、千利休の高弟の一人にも数えられた。同じ利休の高弟であるキリシタン大名の高山右近と親交があったため、キリスト教に帰依し、洗礼名「レオン」を持っていた。
話好きで怪談や武辺談話を好んだという。家臣を大事にしていたが、気に入った家臣に蒲生姓をやたら与えていたため、家中に蒲生姓の家臣が乱発していた。一方で規律には厳格で、約束を破った家臣を処罰したり、「子供なんかいくらでもいるから1人くらい捨ててもいい」等と発言した家臣に激怒し、処分している。
武勇に秀で、戦場では自ら先陣を切って戦った。秀吉もそれこそが氏郷の弱点だと暗に指摘しており、蒲生軍の兵を5人打ち取ればその中に氏郷の首も入っているだろうと述べている。
勘の鋭い男でもあり、家康の野心を早くから勘付いていた。「江戸の家康が西に兵を上げれば、俺が東北から攻めてやる」と言っていたという。
氏郷は天下人の素質があったと言われ、彼自身も天下人を目指していたという。彼は「秀吉様や前田利家殿はご高齢で生い先が短く、家康は人望がない。将来は俺こそが天下人になる」と語っていた。しかし皮肉にも、氏郷は秀吉・利家・家康の3人よりも早く世を去った。
側室を置かなかったため子は少なかった。氏郷の死後30年で蒲生家は断絶してしまう。
伊達政宗とは犬猿の仲であった。どちらも若くして才を発揮した野心家であったため、似た者同士であったのだろう。
評価
千利休曰く、「文武両道で、これほどの人物は日本で1、2人しかいない」「天下一気の長い人」
キリスト教宣教師のオルガンティノはローマ教皇に、「優れた知恵、万人に対する寛大さ、戦場における特別な幸運と武勇により、傑出した将軍である」と報告している。
関連イラスト
殿といっしょ
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戦国無双・・・彼が身につけていた兜が一般武将のデザインで使われている。