どうなってんの?ぼくがおとなになったら、このまんがおしまいじゃないか!
概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』のエピソードの一つ。TC14巻収録。
家出を決意したのび太が無人島へ行くも、自身の手違いで野比家へ帰れなくなってしまい、そのまま10年間無人島で過ごし続けることになるという衝撃のエピソードである。
上記ののび太によるメタ発言は然る事ながら、「10年間も1人で生き延びるなんてのび太は凄まじい鋼メンタルではないか?」「ドラえもんとのび太の精神年齢は20歳を超えていることになるのではないか?」という指摘等、ファンの間でも度々話題にされている。
水田わさび版アニメで初めて取り上げられた際にはタイトルが「のび太が無人島で3000日」となっている。
ストーリー
夜遅くに帰ってきたのび太は、両親から叱られた上にドラえもんにまで説教されてしまい、怒りのあまり家出を決意する。その様子を見て家出を止めようとするドラえもんだったが、のび太にネズミのおもちゃを見せられて気絶してしまう。その隙をついてのび太はドラえもんのポケットからひみつ道具を適当に取り出し、「タケコプター」で家出先を探していると無人島を発見する。
翌朝、持ってきたひみつ道具を試すのび太だが、ほとんどが役に立たない道具だった為、使い道がなかった。数少ないまともなひみつ道具「モグラ手ぶくろ」を使用した際、この島には真水がないことに気が付き、流石にここにいたら死んでしまうと考えたのび太は家へ帰ることにする。しかしタケコプターだけが飛んで行ってしまい、のび太は無人島から出られなくなってしまった。
のび太は仕方なく先程掘った穴を住処とし、「さすとあめがふるかさ」で真水を確保。いつか必ずドラえもんが助けに来てくれると信じ、そのまま無人島でサバイバル生活を続けることを決意する。
しかし10年の月日が流れてもドラえもんは一向に現れず、のび太は完全に絶望してしまう。
その後、のび太は10年前に捨てた道具を見つける。寂しさのあまり道具を起動して「あの頃が懐かしい」と涙ぐむのび太だったが、空を見上げるとドラえもんが助けにやって来たのだ。
ドラえもん曰く、のび太が役に立たないと捨てた道具は「SOSはっしんき」であり、スイッチを押すとSOS信号を発信する為、すかさずその信号を拾い、のび太の位置を特定して助けに来ることが出来たのだという。
ドラえもんはのび太を連れて野比家へ戻るが、のび太は「10年間もどこへ行ってたって怒られるから家に入るのが怖い」と言い出す。そこでドラえもんは「タイムマシン」で10年前へ戻り、のび太が家出したという事実そのものを無かったことにした。
だがのび太は既に大人になってしまっている為、ドラえもんは「タイムふろしき」を使用し、のび太を子供の姿に戻す。のび太は10年振りに両親と再会出来たことで「お懐かしい!お母様!」と言いながら涙を流すのだった。
余談
原作エピソード及び上記のストーリーを読んでいて疑問を抱いた方もいるかと思うが、このエピソードにはいくつかの矛盾点が存在する。
- のび太を救出したドラえもんは10年前の方?10年後の方?
上記の通りドラえもんは10年後にのび太を助けに行き、その後はタイムマシンでのび太を10年前へ連れて行くのだが、その際、ネズミを見て気絶している10年前のドラえもんがその場に存在していないのだ。
その為「実は10年前のドラえもんがタイムマシンでわざわざ10年後に行ってのび太を迎えに行ったのでは?」という疑惑が生じてしまっている(無論「10年前のドラえもんは野比家に滞在せず、10年間外でのび太を探し続けていたのではないか?」「原作者が書き忘れただけでは?」等の指摘も存在するが)。
ただし水田わさび版アニメ「のび太が無人島で3000日」では、ドラえもんが「ずっと探してたんだけど信号をキャッチ出来なかったんだ。ごめんよ」と言っている為、のび太を救出したドラえもんは正真正銘10年間のび太を探し続けたと考えることが出来る。
- ドラえもんはとんでもなく抜けているのではないか?
諸君らも知る通り、ドラえもんは数多くのひみつ道具を持っており、中には全知全能の力を行使出来る道具さえ存在する。
すなわち、家出したのび太を瞬時に連れ戻すこと等造作も無いはずである。特に珍しいひみつ道具を使わなくとも「どこでもドア」でのび太をすぐに迎えに行くことが出来るし、「とりよせバッグ」でのび太を強引に連れ戻すことだって出来る。その気になれば「タイムマシン」でのび太が家出する前に戻り、彼を説得することだって出来る訳である。
それにも関わらず、ドラえもんは10年間必死にのび太を探し続けていた。これではあまりに抜けていると指摘されても仕方ないかもしれない。
- 今もなお家出し続けているのび太はどうなるのか?
上記の通り、10年間無人島で過ごしたのび太に対し、ドラえもんがタイムマシンとタイムふろしきを併用することで、彼が家出した事実を無かったことにしている。しかし10年後ののび太はそれで良かったとしても、10年前(現在)ののび太は正に無人島へ向かっている途中である。
このまま10年後から戻って来たドラえもんとのび太が現在で日常を過ごすことを考えると、無人島でサバイバル生活をしているのび太は一体どうなってしまうのだろうか?ドラえもんにとっては10年後ののび太が傍にいる以上、無人島にいるのび太を助けに行く理由が存在しないことになる。
すなわち、無人島でサバイバルしているのび太は10年以上経過しても救出されないままとなり、その結果、かつて救出されたのび太が野比家で過ごすことが出来るようになったという事実が無かったことになってしまい…というタイムパラドックスが生じてしまう。
ただ、これについては上記の「10年前のドラえもんは外でのび太を探し続けた」という解釈が事実だと仮定とすれば、いずれドラえもんが10年後にのび太を救出することになるので問題は無い。あるいはドラえもんが10年経過した時点でもう一度無人島へ行き、のび太を救出してタイムマシンで10年前に送り込めば一応の辻褄は合う。
尤も『ドラえもん』の矛盾はこのエピソードに限ったことでは無い為、あまり深く考えずいつも通りギャグ漫画として楽しんだ方が良いかもしれない。