概要
『バビル2世』は超能力を主題とした一大アクションシリーズである。
それまで日本の漫画界では見られなかった”超能力”を主題にしたエポックメイキングな作品であり、その後も脈々と続く「超能力もの」の礎を築き上げた。
また「学生服を纏った少年が異能の力を駆使して戦う」という現在ではありふれたプロットの元祖でもある。
横山光輝の作品の中でも一際高い完成度を誇っているためか、横山光輝の代表作と評価するファンも多い不朽の名作である。
特に自分に対する人質として狙われないように他人との関係を断とうとする孤高のバビル2世と自身の思想に賛同する部下達を同志として大切にするヨミとの対比は、それまでの他作品で描かれてきた善玉・悪玉の描写とは一線を画しており、単純な勧善懲悪物の枠を超えた物語を展開した作品である。
メディア展開
原点となるマンガ「バビル2世」は、1971年から1973年まで週刊少年チャンピオン誌上にて横山光輝によって連載された。全12巻。
マンガ完結編「その名は101」は、1977年から1979年まで連載された。全5巻。
OVA版「バビル2世」は、1992年に元創美企画から発売された。全4巻。
アニメ版「バビル2世」は、1973年1月1日から同年9月24日まで放送。全39話。
新アニメ版「バビル2世」は、2001年にテレビ東京系で放送された。全13話。
派生マンガ「バビル2世 ザ・リターナー」は、2010年2月ヤングチャンピオン6号から連載されている。「バビル2世」、「その名は101」両作の設定を引き継いだ、野口賢による続編である。
ストーリー
はるかな昔、宇宙船の故障によって地球に不時着して帰れなくなった宇宙人のバビルは、救難信号を発するために巨大な塔を建造したが、地球人の不注意で塔は崩壊してしまった。
故郷への帰還を諦めたバビルは、彼の子孫に己の全てを譲り渡そうと決心した。後の世に突然変異で自分と全く同じ能力を発現させる子孫が誕生することを予見していたのである。
それから五千年後の日本にその男は誕生した。彼の遺産であるバベルの塔と三つのしもべロデム・ロプロス・ポセイドンを受け継いだ超能力者である山野浩一はバビル2世を名乗り、世界征服を企む悪の超能力者のヨミと戦うことを決意。
かくして、バビル2世とヨミの壮絶な戦いが始まった・・・。
登場人物
バビル2世
本名は原作では山野浩一。ごく普通の中学生であったが、バベルの塔が発する電波を感じ取ることができたため、塔のコンピュータに正当な後継者と認められ、バベルの塔と三つのしもべを受け継いだ。
5000年前に地球にやってきた宇宙人バビル1世の遠い子孫で、バビルと同じ体質を持ち、多種多彩な超能力を使用することができる。テレパシー・テレキネシス・催眠術・発火能力(パイロキネシス)・仮面ライダーも真っ青な超体力や強靱な再生能力の使い手。必殺技は己のエネルギーを直接相手にたたき込んで内部崩壊を引き起こすエネルギー衝撃波。
性格は剛胆で中学生とは思えないほどの肝っ玉の持ち主である。口にこそ出さないが強い正義感と義侠心の持ち主で、誰に頼まれるでなく世界平和のためヨミと戦う道を選んだ。
ヨミ
世界征服を企む秘密結社の総帥。バビル2世とほぼ同じ能力を持つ超能力者である。バビル2世最大のライバルであり、世界の命運を賭け凄絶な戦いを繰り広げる。
実は彼もまたバビル1世を先祖に持ち、バビル2世とは遠い遠い親戚とも呼べる存在である。そのため、三つのしもべは彼の言うことも命令として聞いてしまうので、バビル2世は幾度となく窮地に立たされた。
明晰な頭脳とカリスマの持ち主だが、喜怒哀楽のはっきりした性格をしているためか人間くさい人物でもある。
三つのしもべ
バビル1世が後継者を守るために残したバビル2世の護衛団。強大な威力を発揮するが、バビルの血を引く宿敵ヨミの命令も聞いてしまうので両刃の剣である。
ロデム
スライムのような不定形生物。普段は黒豹の姿をしている。その特性を活かしどんな物にでも化けることが出来、主に諜報活動を担当している。バビル2世とはテレパシーで会話出来る。
ロプロス
巨大な怪鳥型ロボット。超高速で空を飛び、口からは超音波やミサイル攻撃を繰り出すことが出来る。バビル2世の足として活躍している。
ポセイドン
全身に武器を満載した水陸両用の巨大ロボットで、切り札として使われることが多い。非常に頑丈なロボットで、あらゆる攻撃にさらされてもびくともしない。
バベルの塔
5000年前に地球に飛来したバビル1世が築き上げた難攻不落の大要塞。
元は信号塔として建設されたが、バビルが乗っていた宇宙船の部品を組み込んで要塞に作り替えた。建物の各所をメインコンピューターと呼ばれる電子頭脳が管理し、バビル2世をサポートしている。
五十嵐局長
国家保安局局長を務める壮年の男性。数少ないバビル2世の理解者であり、世界征服を企むヨミと戦う彼を公的な立場からサポートし続けた。偉いさんなのだが、幾度となくバビル2世と一緒に修羅場を潜る羽目になった。
伊賀野晋作
国家保安局の腕利き調査員。当初はバビル2世を只の子供と見て相手にしていなかったが、人知を越えた彼の力を目の当たりにしたことで認識を改め、良きパートナーとして活躍することになった。
アニメ版登場人物
バビル2世(1973年のアニメ)
ロデムが変身した女性(CV:山口奈々)
バビル2世(2001年のアニメ)
フェレス(桐島涼子)(CV:日野由利加)
主題歌
バビル2世(1973年)
オープニングテーマ
「バビル2世」
作詞 - 東映一 / 作曲・編曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 水木一郎、コロムビアゆりかご会
エンディングテーマ
「正義の超能力少年」
作詞・作曲・編曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 水木一郎
バビル2世(2001年)
オープニングテーマ
「Never Die」
作詞・作曲・歌 - Lapis Lazuli
エンディングテーマ
「landscape」
作詞・作曲 - 上田起士 / 歌 - etre
余談
バビル2世とヨミの超能力は、完全に互角であり、二人が本気で戦えば共倒れになってしまう。そのため、二人は仲間、部下や作戦を使ってできるだけ直接対決しないというスタンスを取っている。また超能力で消耗した身体を温存しなければならないなど、パワーを無尽蔵に使える訳でもなかった。
このためにバビル2世は単純なバトル漫画ではなく、駆け引きの要素が強い作品となった。
後年、荒木飛呂彦は超能力、知略で戦う少年漫画という路線、バビル2世(髪型、学生服など)から魔少年ビーティーの主人公BTとジョジョの奇妙な冒険の空条承太郎のキャラクターのデザインに影響を受けたとコメントしている。
また、ジョジョの空条承太郎に関しては、バビル2世の「『学生服』という日常の象徴的な姿で、『砂漠』という非日常的な過酷な場所に立っている」というビジュアルから、「ガクラン姿の承太郎が、神秘と砂漠の国であるエジプトに向かう」シチュを連想したとの事。
関連動画
外部リンク
関連タグ
ルナティックナイト……『バビル2世』をネタにした美衣暁原作の漫画・アニメ。
スターダストクルセイダース……ジョジョの奇妙な冒険第3部。前述の通りバビル2世のリスペクトに溢れている。
V:黒豹、鷹、ゴーレムをしもべとするエモボーイ。構想段階ではあまり意識していなかったらしいが、後に社内外問わず「バビル二世に似てる」とツッコミが相次いだ。