曖昧さ回避
概要
ユダヤの神秘主義・カバラに置ける思想の1つ。その名はヘブライ語で「皮」「殻」を意味するクリファ(qlipha, קליפה)の複数形に由来し、神聖なるものを覆い隠す「外殻」というニュアンスがある。
図的には聖なるものを包み込む同心円としてイメージされる。
カバラにおいては真実が覆い隠されることで、偶像崇拝などの虚偽を生み出される。一方、果実を覆う「皮」のようなニュアンスもあり、神からの光が散逸するのを抑制する側面もあるとされる。
不純なるものと中間に位置する合計四つのクリフォト概念があり、そのうち3つが不純なクリフォト(Shalosh Kelipot Hatmayot)に該当する。残る一つは「輝くクリフォト(Kelipat Nogah)」と呼ばれる。
魔術思想におけるクリフォト
西洋の非ユダヤ人社会で発達した「ヘルメティック・カバラ」の流れを汲む魔術思想においては生命の樹と対為す概念として「クリフォトの樹」としてシンボル化されており、『逆さまの樹』『逆しまの樹』『邪悪の樹』とも呼称される。
その図形は逆さまの名の通り、生命の樹を逆転したモノ。
様々なオカルティストが理論を構築している為バリエーションは複数存在する。下のグラフは日本で最も知られている「悪魔と悪徳の対応図」の例である。10個の殻球(クリファー)で構成されており、球体1つ1つに対応する悪魔と悪徳が存在している。
また、セフィロトの樹を構成するセフィラーと異なり、クリフォの番号の前には虚数単位を示す『i』が付いている
数字 | 名前 | 意訳 | 悪魔 |
1i | バチカル | 無神論 | サタン |
2i | エーイーリー | 愚鈍 | ベルゼブブ |
3i | シェリダー | 拒絶 | ルキフグス |
4i | アディシェス | 無感動 | アスタロト |
5i | アクゼリュス | 残酷 | アスモデウス |
6i | カイツール | 醜悪 | ベルフェゴール |
7i | ツァーカブ | 色欲 | バール |
8i | ケムダー | 貪欲 | アドラメレク |
9i | アィーアツブス | 不安定 | リリス |
10i | キムラヌート | 物質主義 | ナヘマー |
かつてはウィキペディアでは上の図が「ヘルメティック・カバラ」実践者ウィリアム・G・グレイからのものとして提示されていたが、ライターであり、ケイオスマジック(混沌魔術)流派の魔術師でもある黒野忍氏により、ウィキペディアが名指しされる形で訂正がなされた。
グレイの『The Tree of Evil』の該当ページでは悪魔の名前は記されて居らず、「逆さまの樹」の挿絵もつけられていないとのこと。
上の図における数字順の悪魔は、別の人物スティーヴ・セイヴドウによる「死の樹」における「十地獄の七処」のおける各地獄の対応悪魔(ただしこちらには虚数をあらわす記号がない)と一致している。
フィクション作品での参照
Fateシリーズ:宝具「光殻湛えし虚樹(クリフォー・ライゾォム)」はクリフォトの樹をモチーフにしている。使用者が初登場したシナリオに出る「スト・テュホン」の語は理論にクリフォト概念を盛り込んだ魔術師の一人アレイスター・クロウリーの聖守護天使の別名(Sut-Typhon)が元ネタ。クロウリーの弟子ケネス・グラントが作中においてこの呼称でもって暗示される「外宇宙の存在」と同一視している。
新世紀エヴァンゲリオン:オープニングの冒頭で一瞬だけ映像が流れる。
デビルメイクライ5:地方都市レッドグレイブ市に出現した魔界の大樹として登場。
とある魔術の禁書目録:生命の樹(セフィロト)の逆位置たる邪悪の樹(クリフォト)として言及。これを基に生み出された存在クリファパズル545も登場している。
ベルセルク:超自然的な領域「幽界(かくりよ)」の中でも特に危険な「闇の領域」(クリフォト)として登場。
ウィリアム・G・グレイおよび「悪魔と悪徳の対応図」モチーフ
666〜サタン〜:逆カバラ側の悪魔たち。
Dies irae:ヴィルヘルム・エーレンブルグの聖遺物「闇の賜物(クリフォト・バチカル)」
テイルズオブジアビス:一部のクリフォの名称が、地名に用いられている。
デート・ア・ライブ:反転体時に顕現する“魔王”の名称。