SEKIRO
せきろ
隻腕の狼、戦国に忍ぶ。
概要
架空の戦国末期を舞台に隻腕の忍者の活躍を描く和風アクションゲーム。
フロムソフトウェアの過去作である『ダークソウル』シリーズと『天誅』シリーズを組み合わせたようなゲームデザインとなっており、攻撃を弾いたりすることで敵の『体幹』を打ち崩して致命の一撃を叩き込む『忍殺』システムと、死んでも一定のデメリットと引き換えにその場で蘇ることができる『回生』システムが最大の特徴となっている。
フロム伝統の高難易度の死にゲーだが、過去作と比較しても強烈な難度の高さを誇っているのも特徴の一つである。
制作陣の殺意を練り固めたかの如き敵の強さやステージ設計など、とにかく初見では死にまくることは当たり前。ボス戦はもちろんのこと、雑魚敵相手でも一瞬の気の緩みが死に繋がりかねない。
さらに完全ソロプレイ用ゲームのため、『ダークソウル』や『ブラッドボーン』のように、協力プレイでの攻略ができないことも難度に拍車をかけている。
かなり人を選ぶゲームではあるが、それだけに強力なボスキャラを死闘の末に倒したり、華麗に忍殺をキメた際の達成感と爽快感は格別。常に緊張感MAXな駆け引きの高さ、アクロバティックなスタイリッシュ・ニンジャアクション、美しいグラフィックなど多くの点で魅力的な作品でもある。
世界観や設定は直接明かされることのない仄めかす程度の説明(フレーバーテキスト)に留められており、理解にはフロム脳が必要となるのもいつも通り。
ただ、ストーリーそのものに関しては従来のフロム作品に比較して分かりやすく、エンディングや、それに至るまでの道筋なども、他作品に比較してすっきりとした終わりや、救いの有る内容で構成されている。
話の内容そのものは従来作同様に決して軽いものではないのだが、特にこの作品と比べると、穏やかやな性格や気さくな性格のNPCが多く、悲劇的であっても理不尽な内容が少ないなど、ストーリーにおけるストレスの軽さが段違いである。
そのため、難易度は上級者向け、ストーリーは初心者向けのフロム作品と言える。
また、ゲームシステムや制作陣的にはSOULSシリーズ系の、舞台となる和風世界の関係上「九怨」や「O・TO・GIシリーズ」、「義経英雄伝」などとの過去作の小ネタ系の繋がりが有るのが察せる。
「日本ゲーム大賞2018フューチャー部門」、「gamescom award 2018 Best of Action Game」、「gamescom award 2018 Best of gamescom」、「The Game Awards 2019 」(=GOTY2019)などなど、受賞歴多数の傑作である。
なお「せきろ」の発音は、公式トレーラー動画のナレーションによれば、先頭の「せ」にアクセントをつける頭高型が正しいようである(例えば「みどり」と同じ)。
世界観
ダークソウルが炎、Bloodborneが血液をテーマとしているのに対して、本作では水をテーマとしている設定が各所で目立つ。
戦国時代の日本を舞台としており、ステージの各所に血なまぐさい戦争を感じさせる反面、建物は武家屋敷、城郭、城下町、寺院、神社、寝殿造りなど、様々な日本建築に、紅葉、すすき、雪、桜などの日本の四季を感じさせる自然にを組み合わせることで、とにかく美しい日本の原風景をゲーム内に再現している。
そんな美しい風景とは裏腹に、フロムソフトウェアらしく、人体実験や薬物によって強化された改造人間など、おどろおどろしい設定も随所に感じられる。
また、桜竜をはじめとして、和風ファンタジー的な側面が強く押し出されている反面、不死の研究や特殊な病気、義手忍具をはじめとする高度な絡繰り技術などが存在している。
ファンからは全体的にはBloodborneと世界観がつながっているのでは?と指摘されることも多いが、コズミックホラーの要素が強い同作よりも、和風ファンタジーとしての側面の方が強く押し出されているのが、本作の作品の特徴。
また、本筋となるストーリーのバックに蟲と竜の対決と言うバックボーンがあることと、不死者に憑いている蟲がムカデの様な形状をしていることから、藤原秀郷による蜈蚣退治の伝説が、本作のストーリーのモデルになっているのでは?と考察されることも多い。
あらすじ
雪深い峠を越えた先にある戦国大名、剣聖と唄われる葦名一心が一代で国盗りで興した葦名の国。
しかしその葦名に内府軍が迫り、一心も病床に伏して今や亡国の鍔際にある。
一心の孫、葦名弦一郎は、葦名を守るため、家臣・平田氏の養子として預けられていた竜胤の御子を連れ去った。目的は御子の持つ、特別な力を使い内府軍を退けることだった。
一方、数十年前、一心の国盗りので大忍び、梟に拾われた幼い子供は、狼と呼ばれる忍者に成長していた。
狼は、御子に仕える忍であり、主を守ることが忍の掟。また奪われようとも必ず取り戻さなければならぬ。
掟は絶対。
これは、孤独な主従の物語である。
登場人物
CV.浪川大輔
左腕を無くしてからは、隻狼(せきろ)と呼ばれる寡黙な忍。
国盗りで大忍び、梟に拾われ、忍者として育てられた。物語の冒頭で葦名弦一郎に主である竜胤の御子を奪われてしまう。それ以来、彼の目的は、掟に従い御子を取り戻すことである。
また失った腕に代わって忍義手を身に着けている。これが本作のゲームのアクションの鍵となる。様々な義手忍具を操り、敵を倒したり、攻撃を防いだりする。
CV.佐藤美由希
葦名の重臣、平田氏に預けられた天涯孤独の少年。狼の仕える主。
葦名弦一郎に連れ去らわれ、彼の計画に協力することを強いられている。
特別な能力、竜胤の力を持つ。しかしそれは異形異類、世の理に反する力として彼自身が忌み、また遠ざけられて来た異端の力である。葦名は古い土地であり、このような異能の痕跡が各地に残っている。
CV.津田健次郎
葦名の国主、一心の孫。ただし正統な血筋ではない。
強力な外敵の侵攻に対し、異端の力を手にしようと計画している。葦名を救いたいという強い思いで動いており、御子を連れ去った張本人。
CV.浦山迅
狼を助け、忍義手を仕込んだ片腕の怪老。
ただひたすら仏像を彫り続けている世捨て人。
CV.伊藤静
稀代の薬師、道玄の弟子。
狼を助けるが、その目的は不明。
荒れ寺の仏師とは古い仲のようだ。
CV.土師孝也
主を持たぬ、はぐれ者の大忍び。狼の義父であり、彼の育ての親。
平田屋敷襲撃で命を落とし、狼に御子を救うように言付ける。
葦名一心(いっしん)
CV.金尾哲夫
剣聖と誉れ高い、一代で葦名の国を興した戦国大名。
しかし今や病床にあり、敵の攻勢を留め得ない。
鬼庭刑部雅孝。大手門を護っている。
人馬一体となって戦いを挑んでくる騎馬武者。
CV.宮寺智子
梟が狼にあてがった忍び技の師の一人。平田屋敷のボス。
クナイと幻術を駆使する老齢のくノ一。
死ねない男。
荒れ寺におり、狼の戦闘訓練の相手をしてくれる。
道順
捨て牢にいる薬師。
人を死なずに変える変若の澱の製法を道玄の書庫から持ち出した。
何やら怪しい研究を行っており、師の道策に応えるため、狼に話を持ちかける。
平田屋敷襲撃の折り、九郎救出に駆け付けた葦名の侍。
狼に協力する。息子らしい野上伊之助という人物も登場する。
黒傘のムジナ
仙峯寺を護る『らっぱ衆』を捨てた抜け忍。入り用なのか狼に取引を持ちかける。
ムジナから買える金城鉄壁(鉄扇)は義手忍具・仕込み傘の作成に必要。
小太郎
仙峯寺に続く道すがらにうずくまっている大男。
記憶が曖昧なのか、言葉を詰まらせながらも『真白いお花』を探している。
仙峯寺の即身仏
金剛山仙峯寺の本堂にいる即身仏(のハズだが、生きている)の僧正。
ミイラ化している上に全身を蟲が走り回っており、尋常な姿ではない。これは蟲憑きと呼ばれる。仙峯寺はその門を閉ざし怪しげな研究に耽っており、これは恐らくその成果の一つ。
奥の院に隠れてしまった変若の御子を気に掛けている。
仙峯寺の奥の院に隠れた御子。
竜胤の御子ではなく、仙峯寺の僧侶たちが人為的に作り出した。狼に協力してくれる。
柿が好き。お米は大事と存じます。
丈(たける)
先代の竜胤の御子。名前のみ登場。
かつて葦名に匿われ、人返りを果たすために不死断ちを求めた。
彼が残した書物を頼りに狼と九朗は不死断ちを進めていく。
巴(ともえ)
丈の従者であった女武者にして弦一郎の師匠。名前のみ登場。
一心が立会いの最中に見惚れる程の美貌と雷すら操る化生の剣を修めている。
モブキャラ
一人一人に名前があるわけではないが、各地に出現するキャラクターたち。
供養衆
葦名のいたる場所で死者を弔っている者たち。
死者の冥福のため品を売っている。…ご供養、如何かね?
葦名一心お抱えの忍衆、彼らの置く薄桃色の狼煙は狼も度々道しるべとして辿ることになる。
落ち谷と呼ばれる葦名の深い渓谷にある鉄砲砦のタタラ衆。
内府が最も信用する忍集団、度々葦名城を襲撃しにやってくる。
葦名と敵対する中央政府、葦名を滅ぼし竜胤を手に入れようとする。
野盗
三年前の平手屋敷に登場する。
単に平手屋敷を襲撃したわけではなく、後にある陰謀が隠されていたことが明らかになる。
用語
戦国末期をモデルにした架空の日本、その山深い北国にある雪の降り積もる場所。
本作の舞台であり、葦名城を中心に幾つかのステージが展開される。
雪国であることに加えて、切り立った谷や険しい山々に囲まれており、その谷の底には巨大な白蛇が生息している。
葦名流
剣聖、葦名一心の興した武術の流派。
狼もスキルとして習得できる。
葦名無心流
葦名一心が生涯をかけて追い求めた剣術。
ほぼ存在そのものが葦名流の最終奥義とも言え、条件を満たせば狼もスキルとして修得できる。
酒
本作では四種類の酒が登場する。どぶろく、猿酒、葦名の酒、竜泉がそれである。ゲームの攻略そのものには何ら関係ないが、一心、エマ、仏師の三人にはそれぞれ酒をふるまうことができ、彼らが酒を飲むことで聞くことのできる話があり、ストーリーの考察やキャラクターのバックボーンを知る上では欠かせないアイテムである。
葦名城
城下、本城、水手曲輪、などの城郭と周辺の名残り墓、白蛇の社などの地域で構成されている。
また、谷あいには巨大な白蛇が生息し、『水』を通じて様々な場所から影響を受けている。
仙峯上人が開いた寺。
通じる道は閉ざされ、怪しげな研究を繰り返しており、蟲憑きと呼ばれる高僧たちが境内に陣取っている。
仙峯寺の僧侶たちが修得している拳法。仙峯寺で戦うことになる僧侶の殆どが、この拳法を駆使する徒手格闘の達人である。
この拳法は、狼もスキル習得できる。
変若の御子
仙峯寺が作り出した異能の人間。
具体的にどのような目的で、どんな能力があるのかは不明。
かつて何人かいたらしいが今はただ一人、奥の院に生き残りがいるのみである。
葦名の深い渓谷。
鉄砲砦、菩薩谷などからなる。
落ち谷で戦うことになるボス。外見は巨大な白い猿だが、セキロにおける最大のみんなのトラウマ。
葦名城の井戸を潜り、身投げ場から飛び込むことで入れる地域。
毒だまり、隠し森、水生村などからなる。
不死の力を持つ変若水(おちみず)が流れ出る場所。
葦名の奥地にあり、竜胤の御子に関係する土地のようだ。
本作を象徴するボスキャラ。
ストーリー全体での関り方は然程ではないが、強さ、ビジュアル、正体など、様々な印象的な要素から人気が高く、ある意味では本作に最も影響を与えているキャラクター。
葦名の各地を彷徨う首のない侍たち。
それは、非業の死を遂げた英雄の成れの果て。
システム
世界観的にはダークソウルやBloodborneなどの過去作品との繋がりが指摘されているが、ゲーム性はそれらの作品とは大きく違っている。
基本的には、デモンズソウルの頃から継承されていたソウルシリーズにおなじみの要素の幾つかがオミットされる形になっており、ゲームシステムそのものが簡略化されている傾向にある。
オミットされた要素
- ロールプレイ要素
ロールプレイ要素の強かったダークソウルやBloodborneとは違い、キャラクターメイキングができず、プレイヤーはあくまでも主人公である狼のストーリーを体験することになる。
そして最大の特徴として、ステータスの振り分けが排除されており、レベルアップと言う概念が存在しない。極論、一部の必須スキルを除けばスキルを覚えなくてもラスボスにすら勝てる仕様になっている。キャラクターの操作に関しても、複雑なコマンド入力は一切存在せず、ジェスチャー機能も廃止されている。その他のアクション機能に関しても極力簡略化されており、ボタン一つで攻撃も防御も回避もできる様に設計されている。
- 耐久度とスタミナ
武器の耐久度とプレイキャラクターのスタミナと言う、一種の縛り要素もオミットされている。
特にメインウェポンである日本刀の楔丸は、強化もできず装備の切り替えもできない代わりに、破壊されるどころか傷一つつけることもできないという、ある種破格の性能を持っている。
一方で、義手忍具や不死斬りと言ったメイン以外の武器に関しては使用回数そのものに制限がかけられており、無制限に武器を使い続けることはできない。と言う要素自体は受け継がれている。
以上のように、従来のソウルシリーズと違い、戦略性を低くして、アクション性を高めたゲーム設計となっている。
その代わりに、プレイヤーのリアルなスキルが要求され、雑魚敵と戦うことにすら油断が許されない。
従来のフロム作品はおろか、近年のゲームソフトの流れからも完全に逆行している。
当初は、オンライン要素も完全に排除されていたが、2020年10月29日に無料アップデートを行い、ダークソウルシリーズにも使用されていた一部のオンライン要素が復活した。
それでも完全ソロプレイ特化、かつプレイヤースキルのみが物を言うゲームシステムとなっている。
本作のメインとなるゲームシステム
主にアクション性を高めるゲームシステムを多数搭載しており、特に体幹と忍殺は本作のゲームシステムの中核をなしているだけでなく、アクションゲームそのものに新しいシステムを確立したと高い評価を受けている。
- 体幹と忍殺
本作の戦闘においてキモとなるシステム。
主人公・隻狼の攻撃は基本的に貧弱であり、敵の多くは防御に長けているため、通常攻撃だけで倒すのは容易なことではない。
そこで敵を攻撃したり、タイミング良く弾きを決める等して敵の「体幹ゲージ」を溜めていき、これを満タンにすることでガードを打ち崩して、致命の一撃となる「忍殺」攻撃を叩き込むことが重要となる(体幹ゲージを溜めることを、俗に「体幹を削る」という)。特にボスキャラを始めとする一部の強敵は複数回の忍殺を必要とする。
また、敵に発見されていない状態からならば、体幹を削らずとも忍殺攻撃を打ち込むことが可能である。ゆえに道中は正面突破は避け、可能な限り見つからないようにニンジャらしくステルス行動を心がけることが基本となる。
しかし、体幹ゲージは隻狼にも設定されており、これが満タンにされると逆にこちらが致命打を浴びせられる羽目になる。特に敵に攻撃を弾かれた場合、大きく体幹を削られてしまうので、何も考えずにがむしゃらに攻撃するのは禁物。ガードの多用のし過ぎにも注意し、回避できる攻撃はなるべく回避に努めなければならない。
一方、体幹の回復が非常に早い、あるいは弾きのチャンスが少ない敵も存在し、体幹よりもHPを削り切ることを意識した立ち回りが有効な場合もある。
- 義手忍具
隻狼の左腕の義手に仕込まれた様々なギミックを使用したアクション。
『天誅』でお馴染みの鉤縄を始め、手裏剣や仕込み武器のような暗器の類まで用意されている。鉤縄以外の義手忍具の発動には、「形代」と呼ばれる消費アイテムが必要となる。
- 危険攻撃
一部の強敵はガード不能の強力な危険攻撃を行う。
この際、「危」マークが表示され、敵の危険攻撃に合わせてジャンプやステップ、忍具などを使って的確な回避を行うことが要求される。
その危険攻撃がどのアクションで回避可能かどうかは、プレイヤー自身が敵の予備動作を観察して判断しなければならないが、上手く回避することに成功すれば、カウンターによって相手の体幹を大きく削ることのできるチャンスが得られる。
- 回生
HPが尽きて死亡してしまっても、竜胤の力によって規定回数だけその場でHP半減状態で復活する回生が可能である。
また、大抵の場合、敵はこちらを倒したと思って背を向けるため、上手くやればそのまま背後から騙し討ち的に忍殺をぶちかますこともできる。
回生には回生ゲージを消費する必要があり、これはチェックポイントである「鬼仏像」で回復できる他、敵を倒したりすることでも溜めることができる。
ただし、ゲージを使い切るなどして回生できない状態で死亡した場合、スキルポイントや所持金が半減するデスペナルティが発生する。回生できる状態であっても、死亡状態で時間が経ち過ぎるとやはりそのまま死んでしまい、ペナルティが発生する。
一定確率でペナルティが免除される「冥助」と呼ばれる救済システムが発動するが、これも死亡回数が増加した場合、竜胤の呪いによってNPC達が確率で「竜咳」という病に罹っていき、特効薬となるあるアイテムを使用するまで冥助の発生確率が低下していく。
- 残影
2020年のアップデートにより搭載されたオンライン要素。
ダークソウルシリーズにおける血痕とメッセージの機能を組み合わせたシステムで、プレイヤーの行動を記録してメッセージを添付した上で世界中に発信できる機能。
あくまでも攻略の手助けとして使用するのみで、基本的にはソロプレイに特化した本作のコンセプトを崩壊させずにオンラインを楽しめる要素なっている。