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魔術師、還らずの編集履歴

2021-09-11 20:32:52 バージョン

魔術師、還らず

まじゅつしかえらず

その時、一つの星が銀河の中で瞬いて消えた。その時、一つの時代­が終わりを告げた。

概要

銀河英雄伝説」小説第8巻の第五章、並びにOVA版第82話のタイトル。


イゼルローン軍の最高司令官ヤン・ウェンリー銀河帝国皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラムとの和平交渉会談に向かう途中、地球教のテロリストに攻撃され、凶弾に倒れた後に、ナレーターが言ったセリフでもある。


宇宙暦800年6月1日2時55分。ヤン・ウェンリーの時は、33歳で停止した…

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やれやれ…ミラクル・ヤンが、血まみれヤンになってしまった…


・・・銀河の歴史が、また一ページ・・・


悲劇の発端

事の発端は宇宙暦800年/新帝国暦2年4月から5月にかけて行われた会戦、通称『回廊の戦い』に始まる。


新銀河帝国皇帝ラインハルト自由惑星同盟を併呑し、完全に滅亡させて全宇宙の統一を果たしたもののイゼルローン要塞に立て籠もったヤン・ウェンリー一派を討伐するために15万を超す大軍を率いて出兵する。

ヤンもラインハルトと講和を行うためにも3万にも満たない寡兵を率いて迎え撃とうとしていた。


だがこの会戦の裏側ではラインハルトとヤンの和平を阻止しようとする地球教が暗躍しており、手始めとして手薄になったハイネセンの精神病院に幽閉されていた元同盟軍のアンドリュー・フォークを拉致・洗脳し、ヤン暗殺のための準備を整えていた……。


悲劇の全容

回廊の戦いの終結後、ラインハルトはヤンと直接会見を行いたいと声明を発し、これを受託したヤンは激戦後の一時の休息を挟むと彼らが身を置いていたエル・ファシル独立政府の首脳陣と共に巡航艦一隻のみで回廊の出入り口で待機しているラインハルトの元へと向かう。


ところがその道中、帝国軍から「アンドリュー・フォークがヤンを暗殺しようとこちらに向かってきている」という通信が入り、直後にはフォークが強奪した武装商船がヤン達を襲撃する。

そこへ救助に現れた帝国軍の駆逐艦はフォークの武装商船を撃沈し、ヤンをラインハルトの元へ案内する前に直接挨拶をしたいと申し出たため、ヤンはそれを受託する。

……これこそが、地球教の仕組んだ罠であった。


実は救助に現れた帝国軍は軍内部に根を張っていた地球教徒の一団で彼らこそがヤンを暗殺するための本命の刺客であり、フォークはヤンを油断させるための餌として利用された単なるに過ぎなかったのである。


巡航艦に乗り移ってきた地球教徒たちはエル・ファシルの首脳陣を始め、随行してきたパトリチェフブルームハルトを次々に殺害し、彼らと共に決死の抵抗をしたスーン・スールまでもが重傷を負う。


ヤンを保護するために駆け付けたユリアンらローゼンリッターは地球教徒たちを排除しながらヤンを捜すものの、艦内を一人彷徨っていたヤンは不運にも地球教徒の一人に遭遇。そのまま射殺されてしまうのであった。



ちなみにヤンの死因は、左大腿部の動脈損傷による出血多量であった。

人間の足部は血管系その他が集中しており、現実でも致命傷になり得るものである。作中では装備や設備さえ整っていれば応急処置が可能な技術が確立されていたが、ユリアンらが駆けつけるのが遅れたため「時すでに遅く」絶命に至った。


重要なのでもう一度書くが、ヤン・ウェンリーはを撃たれた『だけ』で死亡したのである。


評価

田中芳樹架空戦記作品、そのほぼ全てが『戦争の不条理』と『人の』をテーマにしており、それゆえに重要な登場人物が計画的に葬られる「皆殺しの田中」は「銀英伝」作中でもある意味では予定調和ではあった。


だが、ヤン・ウェンリーの異名『不敗の魔術師』の絶対さは当時のファンの間でも半ば確信に近い領域にまで達しており、そんな希代の英雄あっけない最後を迎えたことで茫然自失絶望という最恐のコンボに至ったというファンの報告例は今なお後を絶たない。

OVA版に至っては、次回予告においてあの『城之内死す』に匹敵するネタバレをかましているため、作中だけでなくアニメ業界随一のトラウマ回としても名を馳せてしまっている。


同時に、銀河帝国の皇帝ラインハルト英雄の滾るようであった命の火が燃え尽きる暗喩自由惑星同盟ヨブ・トリューニヒト因果応報さながらの末路のような劇的な最後ではなく、

「銀英伝」もう一つのトラウマであり序盤の悲劇であるキルヒアイスの死亡シーンに匹敵する通り魔的な最期であったため、( 物語の進行上必要と考察されていても )その差分の違い様に疑問を抱くファンも少ない。


こんな衝撃的すぎる結末の反動ゆえ、作品完結から30年以上が経過し、昭和から令和へ移り変わった現代に於いてなお『不敗の魔術師』の死の意義が議論の対象とされ続けている。






そして…

そして後代、他作品における『皆殺しの田中』においても幾人かのキャラクターたちがその散り様とそこに至るまでの展開に疑問符が投げかけられる結果となっている。




関連タグ

ヤン・ウェンリー ユリアン・ミンツ

テロリズム

トラウマ回 みんなのトラウマ

フレデリカ・グリーンヒル-ヤンの妻。ユリアンらの帰還後、周りの様子から薄々夫の死に気付いていた。夫の死後、イゼルローン共和政府の代表となる。

ボリス・コーネフ-ヤンの暗殺計画をイゼルローンに知らせたフェザーン商人。彼がこの計画を知らせることが出来たのは、ヤンが出発した三日後。せめて、あと一日早ければユリアン達はヤンの救出に成功していたかもしれない。

ラインハルト・フォン・ローエングラム-ヤンと対極に立つ常勝の天才。これまで、多くの訃報を聞いたラインハルトにとって、ヤンの死は親友キルヒアイスの死にも並ぶ喪失感をもたらした。

「何故、誰も余のために行き続けないのか!?」-ヤンの訃報を聞いたラインハルトの言葉。この言葉だけで、ヤンがラインハルトにとって大きな存在であったかを窺わせる。生涯の好敵手であり、同時に互いに強く惹かれあったからこそヤンの死は大きなものであった。


地球教-ヤン暗殺の実行犯。アンドリュー・フォークという愚者を操り、ヤンを油断させてラインハルトの仕業と演出して暗殺をした。


夢、見果てたり-ヤンの生涯の好敵手、ラインハルトもまたヤンの死から僅か一年余りでヴァルハラへ旅立つことになる。

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