ゴーストタウン
ごーすとたうん
ゴーストタウンとは、廃墟の一種である。
概説
何かしらの事情で人が住みつかなくなり、放逐されてしまった町のこと。
ただし完全には無人化しておらず、ごく僅かだが住民がいる場合もある。不便さや危険にもかかわらず住んでいる理由は様々だが「(その町で生まれ育つなどで)土地に愛着(あるいは執着)があり、離れがたい」という理由がほとんどの模様。
廃墟マニアや、ホラースポットとしてやってくるオカルトマニア、肝試し目的で来る子供、溜まり場にする不良など、愛好家も存在する。
ただ多くは何らかの行政的な制限が掛かっており、みだりに近づいたり侵入したりすると罰せられる場合もあるうえ、「建築物は人が住まない(あるいは人の手が入らない)と非常に劣化が早い」という定説もある通り、さして年月を経ていない建物であっても崩落や倒壊が発生し、それらに巻き込まれる危険性があるため、迂闊に近づくことはお勧めしない。
実在する形式
なお、ゴーストタウン化にはいくつかのパターンが存在する。
産業衰退型
産業の衰退・撤退に伴い住む人がいなくなった場所。主に鉱山町において採掘物が枯渇したり、まだ埋蔵資源が豊富にあっても需要の低下や市場での価格競争に敗れた結果、産業として成り立たなくなり放棄された場所が多い。
日本では炭鉱で栄えた街が脱石炭(石油・原子力への移行)でこうなった例が多い。長崎県の端島(軍艦島)がその典型と言える。
交通網もピンチな場合が多いが、同じようにかつて多くの炭鉱で栄えた九州と北海道では事情を分けている。原因はだいたい地元JRの労組。
JR九州は鉄道事業自体で収益を上げるのを早々に放棄し、経営多角化に乗り出した際、労使協調型の労組が人員再配置に協力的だった為これを成功させ上場にまで漕ぎ着けた。
一方JR北海道の労組は戦闘的で鉄道事業従事者を鉄道事業外に再配置することに徹底的に反対したため、事業多角化もできないまま全線赤字となり、そのまま北海道全体の衰退を招いた(とはいっても、JR北海道がそれをやろうとしたところで北海道拓殖銀行が1997年に破綻しており、融資を受けられず行き詰まった可能性は高いが)。
ドーナツ化現象型
僻地型とは真逆のパターンで産業衰退の亜種とも言える。
地方都市の郊外に大型ショッピングモールやロードサイド店舗が虫食いのごとく乱立し車社会化が進んでしまったことが主な原因で、バブル期には栄えていた駅前が郊外商業施設に敗れ、駅前の商業施設が続々と撤退し、これによりシャッター通り化、ゴーストタウン化してしまうという流れが発生する。
お客を呼び戻すにも無料駐車場が無い、駅前ゆえ地価も高い、高齢化した商店主が移住を好まないなどの理由で、再開発もままならないことも多い。
バブル崩壊と東京湾アクアライン開通が立て続けに発生した木更津市が特に顕著で、アクアラインの値下げや高速バスの充実により人口こそ回復している一方かつての中心地だった木更津駅前はテナントが埋まりきらないバブルの遺産の駅ビルとシャッター街だらけの廃墟が並んでいる。
開発型
大規模開発などで放棄されたもの。ダムが多い。
人災型
人為的な環境汚染によって住めなくなった場所。鉱山からの鉱毒による汚染、原子力発電所の核燃料漏れによる放射能汚染など。ウクライナのチェルノブイリ、日本だと福島第一原子力発電所の原発事故によって周辺の町がゴーストタウン化している。
戦災型
戦争の勃発によって、都市そのものが戦場となる危険性から住民が退避し、そのまま放棄された場所。不発弾や毒ガス、地雷などの危険物が撤去されずに放置された場所もあり、戦後の状態次第で復興されずにゴーストタウン化する場合がある。また国家間が緊張状態にある国境付近の都市も、こうしたパターンに類する。
不動産バブル型
大規模なベッドタウンの開発や、不動産投資の過熱によって無計画に建造された場所。
つまり生まれながらのゴーストタウンともいえるタイプ。日本では特に1970年代からバブル期の千葉県や大阪府で特に多く、一部では建築途中で放棄された建売住宅地が廃墟化して無残な姿をさらしている(その後行政によって解体されたものもあるが)。
デフレにもかかわらず都心回帰が進む21世紀に入ると、デベロッパーによるタワーマンション乱立が武蔵小杉などを中心に激増、加えて2013年には東京オリンピックまで決まってしまったことから益々乱立にブーストがかかった。しかし需要と供給を無視したヤケクソ気味なものであったため、かなりの空きも出ている模様。((自国では「不動産の所有」が不可能な中国人投資家が資産を中国国外へ移すために買い漁っている説もあるが、そうであったとしても投資家の本拠地があちらな以上、購入した日本の資産を貸し出していなければ結局空き家であろう(貸そうにも供給過剰なためやはり空き家?))
令和に入ると、相次ぐ台風による二次災害や新型コロナウイルスで一極集中懐疑論も出る中にもかかわらず一極集中の推進は続いており、将来的にいくつかはゴーストタウン化するかもしれない(既になっている建物も?)。
2000年以降の中国でも不動産投資の激化や、無計画な都市開発が乱発され、そうした場所は「鬼城」(幽霊の棲む都市)と呼ばれている。スペインでも住宅バブルが起きた時に大規模なベッドタウンを建造するも、2010年の欧州金融危機によって計画が瓦解し、ゴーストタウンを生みだした。