概要
長崎県長崎市に所在する無人島。正式名称は「端島」(はしま)。
かつては島自体が炭坑の町であり、南北に約480メートル、東西に約160メートルしかない小さい島に5000人以上の人々が住み着いていた。この島出身の人物として、歌手の岡崎律子、俳優兼声優の石森達幸がいる。また、ゲームSIREN2の舞台「夜見島」のモデルとしても有名である。
行政区域の変遷
江戸時代は幕府領の高浜村に属していたが、江戸幕府と佐賀藩の間で起きた境界をめぐる争論(後述)の結果、1773年(安永2年)に「幕府領・佐賀領とも端島に干渉しない」とされ、帰属先は定められていない。
1889年(明治22年)4月1日の町村制施行に伴い、長崎県西彼杵郡高浜村端島名となる。
1955年(昭和30年)4月1日に高浜村の一部が同じ西彼杵郡の3村(野母村・脇岬村・樺島村)と合併して同郡野母崎町が発足するが、この際に端島は高浜村から分離されて高島町に編入され、長崎県西彼杵郡高島町端島となった。
2005年(平成17年)1月4日、市町村合併に伴い高島町が長崎市に編入され、以後は長崎県長崎市高島町(たかしままち)字端島となっている。
歴史
19世紀前期の江戸時代から石炭(海底炭)の採掘が行われていた。石炭の発見は一般には1810年(文化7年)のこととされるが、『佐嘉領より到来之細書答覚』によれば、1760年(宝暦10年)に佐賀藩深堀領の蚊焼村と幕府領の野母村・高浜村が端島・中ノ島・下二子島(後に埋め立てにより高島の一部に編入)・三ツ瀬の領有をめぐって争論になった記録がある。なお、当時は幕府領では『初島』、佐賀領では『端島』とそれぞれ書かれていた。
激しい潮風による被害と、水がない島であることから、当時の生産規模は細々としたものだった。本格的な開発が進んだのは島が三菱に譲渡された1890年(明治23年)からで、九州本島から水が送られ、多くの人が住みついた。
石炭の採掘量やそこで働く労働者や家族も増加し、1916年(大正5年)には日本初の鉄筋コンクリート造のアパートが建てられた。昭和初期には小さな島にいくつもの高層アパートが屹立するようになり、その姿は海から見るとまるで軍艦のように見え、「軍艦島」と呼ばれた。島内には病院・商店街・映画館・寺院なども設置してあり、一つの都市を形成していた。極端な人口密度から緑の少ない島であり、アパートの屋上には日本初の空中庭園や屋上菜園が設置されていた。ちなみに寺院は禅寺であったが、他の宗派の人の法要等も受け持っていたという。
一方で戦前は納屋制度と呼ばれる従業員(鉱員)を職場に縛り付ける雇用体制を取っていたことが問題となった。大正期までには段階的に廃止されたものの、その後も鉱員と職員の格差は戦後も残り続け、特に住宅問題は深刻であったとされる。
1960年代以降、日本のエネルギー政策が石炭から石油に移行するにつれ、島は急速に衰退。1974年に炭鉱は閉山し、住民も島を離れることとなり無人島と化した。なお、閉山は石炭が枯渇したからではなく、数百トン(以上)がまだ残っているとのこと。
その後、建物の老朽化による倒壊の危険もあり長期に渡って島の立ち入りが禁止されていたが、立ち入り区域を制限した上で、2005年に報道関係者、2009年に一般人の観光目的の上陸を許可している。ただし一般人の立ち入りは南部の整備されたほんの一区画(ドルフィン桟橋側の炭鉱部)のみであり、肝心の建物群に立ち入ることはできない。(報道陣などには長崎市の特別許可で取材することが可能。)
野母崎総合運動公園の海岸からも見る事ができ、遠方ではあるが本当に海に浮かぶ戦艦のように見える。
2009年に「九州・山口の近代化産業遺産群」の一部として、世界遺産の暫定リストに登録され、2015年7月5日に正式に登録された。
しかし、2019年7月に基準値を越えるアスベストが検出され、再び立ち入り禁止となったものの、後にアスベストではなく石膏(せっこう)と塩化ナトリウムであることが判明したため、8月10日に立ち入り禁止が解除された。
現況
島内に残された、大正期から昭和初期、戦中、戦後、高度経済成長期の各時代の建物は、日本産業の近代化と近代建築史の記憶をとどめる遺跡となっている。
しかし、いずれも激しい潮風により風化が進んでおり、崩落したテラスや階段も多いので、立ち入り許可地区以外への進入は非常に危険。建物内部には当時の家具などが残されているところもあるが、その多くは既に朽ち果て、近年は人が住んだ時代の面影も薄れつつある。
なお、近くに中ノ島という島があり、開発が進む前の端島の面影をとどめている。この島は、かつては島民の公園兼火葬場・墓地として使われていた。
写真などで有名な風景に65号棟及び、67号棟、日給社宅間の階段などがある。
長崎県の外洋にある島である事や台風の通り道になりやすい所にある為、観光ツアー用の桟橋が台風被害で破損しやすい。
この島をモデルにした作品
映画・バトルロワイアルⅡの舞台「戦艦島」のモデルとなった。ただし、この当時は島への上陸は一切許可されていない為、映画の中に登場する建物は西海市にある別の炭坑住宅群でロケが行われた。浜から次々と上陸するシーンがあるが、実際の端島は本来の島をコンクリートの防波堤で囲むように覆われている為浜にあたるのは実在しない。なお、夕方の島の遠景は端島そのものである。
その他にも漫画『モンタージュ』及びその実写ドラマや実写映画『進撃の巨人』にも舞台・ロケ地の一部として使用されている。ゲーム『ポケモンシリーズ』の『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』に登場する「シーキンセツ」のモデルになっている。ゲーム『スプラトゥーン』『スプラトゥーン3』に登場する「ネギトロ炭鉱」も軍艦島をモデルにしたと言われている。
2024年10月クールの日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』は1955年の軍艦島を舞台の一つとしている。
余談
最盛期の1960年には面積が0.063平方キロの小さな島に5,267人の人口があり、東京をも凌ぐ世界一の人口密度を誇っていた...とよく言われるが、端島と東京23区といった、面積が極端に違う範囲の人口密度を比較するのはあまり意味がない(人口密度は面積が狭いほど極端な値をとりがちなため。「それなら九龍城砦の方が人口密度が高かった」とも言えてしまう)。
石川県にある見附島も通称が軍艦島である。こちらも島が軍艦のように見えることからそう呼ばれている。
関連イラスト
pixivにおいても、その風景を描写したイラストは少なくない。
関連タグ
長崎県 島 無人島 廃墟 炭鉱 ゴーストタウン 九龍城砦 昭和レトロ
戦艦土佐 - 軍艦島と呼ばれるようになった由来の戦艦。ワシントン軍縮条約の一環で廃艦となり、自沈処分された。
夕張市(北海道):端島と同じく三菱が所有する炭坑で栄えた町であり、こちらは全盛期には運炭を主目的とする鉄道路線が市内全域に敷設されていた。
B'z - 2009年発売のシングル「MY LONELY TOWN」のPVはここで撮られた。
SCP-4182:「サイト-5」のモデル。但しこちらの所在は架空の位置。