概要
『ポケットモンスター ルビー・サファイア・エメラルド』に登場する廃船「すてられぶね」は、『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』では「シーキンセツ」という名称に差し替えられている。
船の名称が変更されただけではなく、船の内部構造や配置されているトレーナーなどが変更されており、廃船の雰囲気はそのままに施設としては別物となっている。
製品版発売前から名前だけは明かされていた施設で、『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア 特別体験版』でランダムに出てくるマボロシのばしょにいる研究員から聞く事が出来る。
『ダイキンセツホールディングス』というかつて存在した大企業の海底資源採掘所であったが、とある事情により閉鎖。直ちに解体されるはずだったものの、周辺の環境調査の結果、独自の生態系が形成されていることが判明。取り壊しを中止して自然保護区になったという、数奇な経歴を持っている。
マップはだいぶ違うが進み方はすてられぶねとほぼ同じで、鍵を使って部屋を順々に探索していったり、浸水した部分をダイビングで潜って探索していく。
「たんちき」ももちろんあり、メガストーンも落ちているようだ。
※以下、ネタバレ注意のためスクロール
シーキンセツの中に入って、入口のすぐ左隣にある看板を調べると『明るく楽しい職場をつくるシーキンセツ10のメッセージ』なるものを読む事ができる。
その内容は以下のようなもの。
- 朝のアイサツ腹から声を
- 職場にポケモン持ちこむべからず
- 遅刻厳禁 残業上等
- 安全確認に身体を張れ
- チームワークで連帯責任
- 上司の命には絶対服従
- 守れ品質 捨てよ理性
- 崇めよ讃えよ創業者
- 休みたがりません定年までは
- 考えるな 働け
……ド初っ端からこれである。
と言うか、ポケモンが必要な世界で「ポケモンを持ち込むべからず」と言うのもかなり不思議な話ではあるが…。
後述のセンパイとコウハイが閉じ篭っていた部屋の書類棚では社歌の歌詞カードが収められているが、歌詞の内容もよく見ていくと「休日出勤 上等さ」「労働組合 厳禁だ」「残業手当 返上だ」というおぞましいもの。「同業他社を 駆逐せよ」なんて過激なものも。
その社歌は以下のようなもの。
- 晩照らす 108番水道 目覚めよそびえる 我らがとりで 未来のホウエン創るため 休日出勤上等さ 掘りぬけ取り出せ エネルギィ あぁ シーキンセツ シーキンセツ シーキンセツ
- 日差しもまぶしき 108番水道 まばゆく輝く 我らがとりで 滅私奉公心に刻め 労働組合厳禁だ 掘りぬけ取り出せ エネルギィ あぁ シーキンセツ シーキンセツ シーキンセツ
- 宵闇包む 108番水道 今夜も眠らぬ 我らがとりで 同業他社を駆逐せよ 残業手当返上だ 掘りぬけ取り出せ エネルギィ あぁ シーキンセツ シーキンセツ シーキンセツ
しかし、こんなものはまだ序の口にすぎない。施設内の各所に打ち捨てられている書類などを読むと、企業体制にとどまらない数々のどす黒さがプレイヤーに襲いかかってくる。
(以下、記事の内容には筆者の考察を含む)
上記の10のメッセージと社歌は実はただのブラックすぎる企業ということを示すためだけのものではない。
実は上記の10のメッセージと社歌のいくつかは第二次世界大戦または太平洋戦争中に使われたスラングのパロディである。
- 休みたがりません定年までは=欲しがりません勝つまでは
- 崇めよ讃えよ創業者=産めよ増やせよ
- 休日出勤上等=月月火水木金金
- 掘ぬけ取り出せ=(アメリカに)追いつき追い越せ
- 考えるな 働け=考えるな、感じろ
デボンコーポレーションの暗部
ツワブキ・ダイゴの父(ツワブキ・ムクゲ社長)が経営する大企業、デボンコーポレーション。
本社では研究員たちがポケモンにまつわる装置の研究について述べていたり、ポケモンの化石を復元してくれたりと、ポケモンに親しい企業である印象が強い。
しかし、ここシーキンセツのある場所に残された書類に、このような記述が残されている。
(この書類はゲーム中では一部が読めなくなっている。だが、『オメガルビー』と『アルファサファイア』で読めなくなっている箇所が異なり、照合することでほぼ全文を読む事ができる。以降の記述は『オメガルビー』のものと『アルファサファイア』のものを照合したものである。)
■デボン 内偵経過 報告
新エネルギー開発は 事実と 判明
ポケモンの 生体エネ…ギーを 利用した
それは ムゲンダイエナジーと 呼称 される
『デボン 内偵』という記述から、ダイキンセツホールディングスは、デボンコーポレーションに産業スパイを送り込んでいた事がうかがえる。
さらに、後半の記述は「ポケモンの生体エネルギーを利用した」「ムゲンダイエナジー」と読む事が出来る。
そして、トクサネシティの宇宙センターにあるロケットの模型には、
世界で 初めて
打ち上げに 成功した ロケット
デボンコーポレーションの 提供による
∞エナジーに よって
第2宇宙速度を 超えて
宇宙へ 到達する事が 可能となった
という解説が添えられている。
この2つを照らし合わせると、デボンコーポレーションは過去に、ポケモンの生体エネルギーを利用したエネルギーを開発し、それを動力源としたロケットを開発していたことになる。
ポケモンの生体エネルギーを利用する、というのは、ポケモンシリーズにおいてメディアを問わず悪役がしばしば行っている行為であるが、それを主人公に味方する企業が行っていたというのである。
この∞エナジーについては、「エピソードデルタ」にて、開発を行った人物や現在における扱いが明らかになる。
様々な登場人物の暗い過去
このシーキンセツでは、作中に登場する様々な人物の過去が断片的ながら明らかになる。
そしてそのほとんどが、何かしら暗い一面を背負ったものである。
クスノキ館長
カイナシティで、科学博物館や造船所を運営しているクスノキ館長。
彼はかつてシーキンセツで働いていたようで、シーキンセツの中で、
第8突撃 掘削班 イ組 班長 クスノキ
と書かれた社員証を見る事が出来る。
また、別の場所に置かれているノートには、
いよいよ 閉鎖の 日が 決まった
路頭に 迷う オレたちを 誘ってくれた
クスノキには いくら 感謝しても 足りない
オレも 今まで 汚れ仕事を してきた
ツガちゃんも 生まれ変わることが できる
彼の 事業を 支えていく……
それが オレ達が できる
唯一の 恩返しだ
という記述があり、シーキンセツが閉鎖された際、シーキンセツの労働者達はクスノキの造船所に引き抜かれ、再就職を果たした事がうかがえる。
ツガ
クスノキ造船所の設計士を勤めているツガ。イベントでほんの僅かに出番があるだけの彼だが、シーキンセツでは彼の過去についても触れられている。
先述の∞エナジーについて触れた書類の続きには、
■テ……ン 動向調査 報告
ニューキンセツプロジェクト 中止に 向けた
一連の 行動は 事実と 判明
我がグループへの 反逆者 として
早急な 処理を 進言 する
以上
第…工作班 ヲ組 班長 ツガ
という記述が存在する。
先述のノートの『今まで 汚れ仕事を してきた』という記述、そして先述の∞エナジーに関する書類とこの書類がひとまとめになっていることを合わせると、彼はシーキンセツ内で社員を監視したり、他社に産業スパイとして出向する仕事に就いていたものと思われる。
テッセン
キンセツシティジムリーダーのテッセン。彼もまた、かつてシーキンセツの従業員、それも社運をかけたプロジェクトを任される程の重役に就いていたことがほのめかされている。
シーキンセツのある場所に放置されている『ルチアに似たおねえさん(ルチアの母にしてミクリの姉かもしれない)が表紙のよれよれになった雑誌』(恐らく週刊誌か?)には、以下のような記事が載っている。
ついに ニューキンセツ プロジェクトの 中止が 正式に 決定!!
これに 伴い シーキンセツの 閉鎖は いよいよ 決定的に!!
同社に 勤務する 社員からは
すでに 不安の声が あがっている!!
この 問題に 関して
ダイキンセツホールディングス 役員は
未だ 黙秘を 貫いている 模様!
これに 対して 同グループの
ニューキンセツ プロジェクト 責任者
テッセン氏は こう コメント している……
雑誌は千切れていてこれ以上読む事はできない。
また、その雑誌と同じ本棚に置かれた手帳にも、以下のような記述がある。
ニューキンセツ プロジェクトの 中止が
与えた ダメージは 致命的だ
おれは 経営陣の 一人として
多くの 責任と 負債を 負う
(中略)自然・ポケモン・環境保護
立派な 理想だ 実に 結構
テッセンは 立派 素晴らしいんだろうさ
だが おれが 守る 組織と 現実は
あいつの 理想が ぶっ壊していった
だけど おれには なにも できない
おれは なんの 力もない 男だ
雑誌と手帳の記述を合わせると、テッセンは自然破壊につながりかねないニューキンセツの開発を止めるために、ダイキンセツホールディングスに対して何らかの形で反旗を翻したと考えられる。
その結果、自然は守られたものの、シーキンセツの閉鎖を招き、多くの労働者の仕事を奪う事にも繋がった、という、何とも後味の悪いエピソードが浮かび上がってくる(ただ、シーキンセツの労働環境やクスノキ館長の計らいも考えると、シーキンセツの閉鎖が労働者を不幸にしたか、というのはまた事情が異なるかもしれない)。
先述のツガの報告書に書かれた『我がグループへの 反逆者』というのも、名前が『テ……ン』と記されていることから、テッセンのことと考えて間違いないだろう。
また、文章の口癖から手帳の持ち主でありそのテッセンとぶつかったとされる重役と思しき人物がキンセツヒルズ内で確認できる。さらにストーリーを進めていくとその人物は『ポケットモンスター X・Y』でもよく目にしたあの人物の正体である事が判明する。
ソライシ博士
ハジツゲタウンのイベントで助けることになるソライシ博士。
彼自身はシーキンセツに直接関わりは無いが、彼の父親がシーキンセツで働いていた事が明かされている。
そしてシーキンセツで過去が明かされているキャラクターのうち、彼とその父親のエピソードはダントツで暗い。
シーキンセツの中に、ブリキの缶に入った手紙が置いてある部屋がある。
その手紙は『ソライシ タカオ』という少年が、シーキンセツに単身赴任する父親に宛てた物。
その父親の名前は、同じ部屋にある給料支払明細書と、別の部屋にある始末書から『ソライシ ライゾウ』であることが分かる。
手紙は全部で7枚あり、最初の手紙は当たり障りのない近況報告に絵を添えたものであるが、途中から父親が休みに帰ってこない事を寂しがったり、父親の身体を心配したり、父親から貰った望遠鏡で星を見ていることや、母親が『おともだちと あそびに いって』いることを報告するようになっていく。
4枚目の手紙で、タカオ少年は「せっかく父親からもらったコモルーを友達のソルロックと交換してしまった」ことをわざわざ書いている。(※)5枚目で父親に会って遊びに行けたことを喜ぶが、母親が一緒に来なかったことや、父親と母親が喧嘩していることを寂しがるようになる。その手紙で、タカオ少年は『おとなになったら ほしの はかせに なりたいです』とも語っている。
そして、6枚目の手紙で、タカオ少年はこうつづる。
またいつか おとうちゃんと あえるのを
ずっとずっと たのしみに しています
あたらしい おうちにも おとうちゃんが
くれた ぼうえんきょうを もっていきます
(中略)ぼくは ほしと おとうちゃんの ことが
ずっとずっと だいすきです
その写真に添えられた写真(7枚目の手紙)には『望遠鏡を 持った 男の子と つまらなさそうにした おばさん』が写っている。
母親が『おともだちと あそびに いって』いたこと、母親が父親と息子が遊びに行った時に同行しなかったこと、母親と父親が喧嘩したこと、そして最終的に『あたらしい おうち』に行った事を考えると、タカオ少年――もとい、今のソライシ博士の父親は、妻に不倫された末、三行半を突き付けられ不倫相手と再婚された可能性が高い。
また、6枚目の手紙の最後には、「ネーコちゃんを おとうちゃんに あげます」とある。
隣の棚には「せいふくを きた エネコの グッズ」が並んでいるのだが、
それを見ているエリートトレーナーは「流行り物だったのかもしれないが、何故職場に」と疑問を呈している。
家族などから贈られてきたものを集めて置いていたと考えれば説明がつくため、
その名前も踏まえると「ネーコちゃん」は恐らくエネコドールもしくはその類であると考えられる。
さらにキンセツシティ屋上でシーキンセツに勤めていたという老人がこう述べている。
昔 シーキンセツに 勤めていたが
今も 忘れられぬ ことが ある
もはや 名さえ 浮かばぬ ある部下
不注意な 男で 大きなミスを
起こし オレは 解雇を 命じた
男が 去り しばらく 過ぎたころ
彼あてに 荷物が 届いた
差出人の 名は 家族
恐らく 単身 働く 彼を
案じ 品を 送ったのだろう
ただ 荷物が 送られた 日付は
彼が 去った 日 よりも ずっと後
真実を 知らぬ 家族……
真実を 告げぬ 男……
なんとも 遣る瀬無い 思い出だ
家族が荷物を送ったと述べている事(後述するかなめいしの件も照らし合わせれば不注意な男の部分も)からこの男はライゾウの事で間違いないだろう。彼の供述が正しければ、ライゾウは早い段階で仕事をクビになっており、このエネコグッズが職場に届いたのは彼が既にクビになったずっと後という事になる。つまり職場に並んだエネコグッズは行方をくらましたライゾウに届けられる事がないまま、もぬけの殻となった職場にそのまま置かれた可能性が高い。
そして、彼の物語はここでは終わらない。
シーキンセツ最奥部にある倉庫にたどり着いた時、そこにあるお宝を探していたこわいおじさんの後に続いて、ひとりの老人が現れる。
こわいおじさんに『ライゾウのオジキ』と呼ばれるその老人は、倉庫中に散らばる財宝には目もくれず、倉庫の中に場違いに置いてあるエネコドールに歩み寄り、こう言うのだった。
『おお…… タカオ……
こんな 所で 寂しかったろう……
済まなかったなあ…… さあ 一緒に 帰ろうなあ……』
なお、船乗り場でたんちきを渡した後、カイナの造船所2階にいる元シーキンセツ社員であったハンノキに話しかけると、彼のことと思われる『シーキンセツ時代の部下』の話を聞く事ができる。
『随分と出世したみたい』と館長は語っているが、彼をオジキと呼んでいた男がこわいおじさんであった事を考えると、真っ当な形での出世では無いのかもしれない。
もし本当に堅気でないのなら、夢を叶え幸せな家庭と職場を築いている(※)息子とは正反対の道を歩んだと言う事になり、よりシーキンセツの暗さを助長している。
そもそもタカオは死んでいるわけではないにもかかわらず、何故息子に会いに行かず、人形を我が息子のように大事にしているのか?
理由としては息子のタカオ(ソライシ博士)からは大人になるにつれ上記の考察に近い現実を知る事となった、もしくは仕事をクビになってから息子と再会するがあまりに変わり果てたライゾウの姿を見て絶望した事を理由に愛想を尽かされた事が考えられる。(コモルーの件も、「実は心のどこかでタカオ自身も既に父親を見限っていた」と考えれば嫌に辻褄が合うように思える。)
ただしソライシ博士は父親について何かを知っている様子もそれを語ろうとする素振りもなく、元シーキンセツの社員もその後の彼を全く知らない様子からクビになってからずっと家族にすら会ってない可能性もあり、単に息子に合わせる顔がないだけなのかもしれない。
また、これはあって欲しくない最悪の状況だが、彼が精神を病んでエネコの人形を息子と誤認している可能性も考えられる。
※…ちなみに理由はコモルーは隕石に似ているがボーマンダに進化して興味をなくした、ソルロックの方がかっこいいという理不尽なもの。
天体が好きなタカオらしい理由ではあるものの、ご存知の通りコモルーは600族で設定も性能も強いボーマンダに進化できるポケモンであり、作中でも四天王のゲンジや流星の民などごく一部の強いNPCトレーナーしか使って来ない。職場にポケモンを持ち込めないブラック企業からそんな貴重な強いポケモンを息子に送る、このためにどれだけ苦労して想いをこめたかは想像に難くないだろう。
タカオ自身に悪気は全くないが、父親からすれば「自分の気持ちを踏み躙られた」も同然である。
ちなみにボーマンダもりゅうせいぐんという隕石の技を覚えるが、それでは満足できなかったのだろうか…
下ネタ
シーキンセツの部屋にあるベッドの下には、雑誌が落ちている事がある。そしてその雑誌の中には『特選! 世界の おとなのおねえさん!』というどう考えてもエロ本としか思えないタイトルの物がある。
更に、別の部屋にある『マットレスから 変な 臭いがする』ベッドの下には『モーレツ! 世界の やまおとこ!』なる雑誌が落ちている。アッー!
極めつけは、初期状態では鍵のかかったある部屋の中にいるセンパイとコウハイ。センパイ側に話かけると『カギをかけてたのに!』と言いつつ、別の部屋の鍵を渡してくれる。
その先輩は『このコに 教えてた ところなの! トレーナーの 厳しさって やつ!』と主張するのだが、コウハイの方はというと、話しかけても『……ぽっ』と言うだけである。
先述のとおり、この部屋に鍵をかけていたのはセンパイである。そしてその部屋にはセンパイとコウハイ以外は誰もいない。
彼女たちは、廃墟の中に密室を作って、2人きりで何をしていたのか……?
ホラー
ほんの僅かではあるが、ポケモン恒例のホラーイベントも存在。
フシギしまい
まずはとある部屋にいるトレーナー、フシギしまいのネブとセン。
おねえさまはわたしだけのおねえさま!なんどきたってわたさないんだもん!
止めて…… ネブちゃんに触れないで……
一見姉が大好きな妹と他人を妹に近づけせまいとする過保護な姉のような発言だが、
二度目の戦いでその意味は一変する。
おねえさまと ネブはね えいえんに ここで いっしょ なんだからね!!
無理……あたし ネブちゃんから……ここから 離れられない……
……つまりはそういうことである。
かなめいしの在処
また、ある部屋に入ると、入った早々『なんだか どこかから 見られてるような 気がする……』と表示される。
その部屋にある本棚を調べると、汚れたファイルの中に挟まった紙を見る事ができる。
その内容は以下の通り。
始末書
わたくし …ライシ …イゾ…は
ク……ネ炭鉱 より 寄贈さ…た
かなめいしを 紛… してしま……た
※全部を埋めると…
わたくし ソライシ・ライゾウは
クロガネ炭鉱 より 寄贈された
かなめいしを 紛失 してしまいました
…になる。
始末書と書かれている事からもこれがソライシ博士の項目でも述べた元シーキンセツ社員の言うライゾウをリストラするに至った原因の「大きなミス」である事は間違いなさそうである。
読み終ると、再び表示される『なんだか どこかから 見られてるような 気がする……』の文字。
ここで、その場から動かずにメニューを表示。
そして、そのメニューを閉じると……
主人公の背後に、紛失してしまったはずのかなめいしが、いつの間にか鎮座している。
そして……
もちろん、そこで姿を見せるかなめいしの真の姿(ミカルゲ)は捕獲することが可能である。
もたもたしていると「おきみやげ」で自爆されるので、早めに眠らせるかクイックボールを投げつけてやるべきであろう。なお、倒してしまっても殿堂入りすれば復活する。
因みにホウエン図鑑の段階では未収録のポケモンの為、タイミングによっては捕獲した際に図鑑に詳細情報が記載されず「ホウエン地方では未確認のポケモンです」と表示される恐怖の「おきみやげ」を残してくる。
ちなみにカイナにいるハンノキの話によるとハンノキはライゾウからかなめいしを紛失した事を未だに引きずっていて何度も謝罪されたらしい。おそらくハンノキとライゾウは同じ班だった事が推測される。
ライゾウが「不注意な男」だったのは間違いはないだろうが、上述の悲劇の最大の元凶であるかなめいしに関してはそもそもその不注意が関係ない可能性もある。ただの寄贈品の石ではなく「意思を持ったゴーストポケモン」であるからして、こいつが勝手に動いてどこかに隠れたところ、鈍臭く要領も悪かった人物が真っ先にスケープゴートにされたのかもしれない。これに対しライゾウが反抗した様子は特になかったが、
- 既に信用されておらず言い分が聞き入れられなかった
- 未だに引きずって謝罪するあたり、ライゾウ自身も自分のせいだと思い込んでいた
- もはや反論する気力もないほど疲弊しきっていた
のいずれか、もしくはその全てが考えられる。
また、ミカルゲは同作の舞台となっているホウエン地方ではなくシンオウ地方のポケモンである。「かなめいしがポケモンである」ことを社員たちが知らなかったことは想像に難くない。ホウエン地方にもミカルゲが生息していれば、また結末は違ったのだろうか。(なお、リメイク元ではミカルゲは当然のことだがシーキンセツも存在しないため特に問題は起こっていない。)
なんとも胸糞の悪い個体である。
倉庫の財宝
シーキンセツには以前から財宝が隠されていると噂され、それを目的に沢山のトレーナーが訪れている。
その財宝の正体とはきんのたま4個に、でかいきんのたま8個というとんでもない量の換金アイテムの数々(合計売価にして10万円分)であった。他にはゴージャスボール1個とわざマシン13「れいとうビーム」、そしてメガストーンの一つスピアナイトも落ちている。
財宝を探していたこわいおじさんもそれを見るなり驚いていたが、彼はあくまでもオジキであるライゾウの為だけに探していたらしく、ライゾウがエネコドールだけを持って去っていくと、自分は財宝に一切手を付ける事無く、全部主人公に譲ってくれる。
こわいおじさんでも、意外に筋の通った人物なのかもしれない。
これだけのきんのたまを誰が隠したのだろうか…?
シーキンセツの元社員とも考えられるし、過去に出世していた時期のライゾウが真っ当ではない方法で稼いだ金を換金してエネコドールと共に保管していた可能性もある。
しかし、その他に発言内容から『オメガルビー・アルファサファイア 特別体験版』に出てきたある登場人物が候補に浮かぶ。
おじさん いっぱい もってきたぞ! きんのたまを! ホウエンに!
まだまだ たまは たーんと あるぞー よーし どんどん くばるぞー
わざわざ「いっぱい持ってきた」「たーんとある」とまるでどこかできんのたまが沢山もらえる事を示唆するようなセリフを言ってるのである。もしかしてこのきんのたまの持ち主って…
ただし、シーキンセツの倉庫に入るにはなみのりとダイビング、そして倉庫のカギが必要である。さらに建物の老朽化により一度カギをカギ穴に入れると抜けなくなってしまうため、カギは使えない。誰かが廃墟内に忍び込み、財宝を隠し跡を濁さず帰るのは相当難しい。謎は深まるばかりである…
尤も、この類の人物は過去作でクリア後に解禁される高レベルの野生ポケモンとエリートトレーナーがうじゃうじゃいるリゾートエリアに平気で突っ立っていたという事例があるため強ち不可能ではなさそうなのがこの謎の怖いところである。
その他
シーキンセツの中にはしろいハーブが落ちている。
これ単体ではどうという事の無い要素だが、かつてブラック企業だった廃墟の中に落ちているハーブともなると、邪推してしまうプレイヤーもいるようだ。そうでなくとも『職場にポケモン持ちこむべからず』というシーキンセツの社則に照らし合わせれば、労働のストレスから人間がポケモンの薬を服用していた可能性も出てくる(しろいハーブを生身の人間が服用した場合に起こる人体への副作用などは不明)。さらにあるベッドの下には「必見! リストラに おびえる キミへ!」という雑誌もあった事からも当時の社員のメンタルが非常に不安定だった事も想像に難くなく、精神安定剤感覚で服用をしていても全くおかしくはない。
また、ある部屋のキャビネットにある資料にはこういう記述もある。
シーキンセツ 社…報 389号
今…の 勤労……ーガン は
…1貯蔵班 ハンノ…の 作品
自然 汚すな! 作業着 汚せ!
なお 受賞者 ハン…… には
ゴツ……メット&ド…イドンを 授与する
では 社員…同 このスロ……ンを
胸に …月も 労働に ……むべし
※文字数や文章の繋がりから判断するに、
シーキンセツ 社日報 389号
今月の 勤労スローガン は
第1貯蔵班 ハンノキの 作品
自然 汚すな! 作業着 汚せ!
なお 受賞者 ハンノキ には
では 社員一同 このスローガンを
胸に 今月も 労働に はげむべし
が妥当なところだろう。
この記述からシーキンセツにて毎月スローガンの取り決めがあり、その受賞者には報酬として強力なポケモンとそのどうぐがプレゼントされたようだ。
さらにこの受賞者はハンノキだという事も分かる。
シーキンセツはいつの時代のものか?
そもそもシーキンセツとは何年前の施設なのか、これについても描写が抽象的で議論の種になりやすい。
特定のカギは当時のタカオ(ソライシ博士)の年齢がライゾウにあてた手紙の文体から大体幼稚園~小学生ぐらいと推定出来る事、施設内にあったテッセンの反逆確認を記録したマル秘ファイルに自分(主人公・12歳)が生まれるよりずっと前の日付が書いてあった事。
さらにソライシ博士は現在40歳である事が流星の滝にてソライシ博士救出後テレビナビで確認できる。この事から少なくともシーキンセツは3~40年前の施設だと見積もれる。
そして、さらに施設内には一つだけ時代を特定できるものが存在する。
2画面の 古い ゲーム機が ある
自分のとは どこか 違うみたい……
キーとなるのは「2画面の 古い ゲーム機」。
ここで言う2画面のゲーム機とは3~40年前という時代背景からしてゲーム&ウオッチ マルチスクリーンの事だろう。これが発売されたのは1982年、本編の年号が2014年と仮定すると32年前と時期的にもぴったり合致する。
よってシーキンセツは1980年前後の施設だと考えられる。
元ネタとの一致性
すてられぶね同様シーキンセツの元ネタは長崎県にある端島、いわゆる軍艦島である。言わずと知れた保護活動が行われ、観光客が来訪する廃墟である。もうこの地点でシーキンセツとリンクしている。
他にも
- 労働環境が過酷(シーキンセツについては上記の通りだが、軍艦島でも過酷な労働が行われ(強制労働・連行であるかは議論・見解が分かれている)、日本人や中国人捕虜、集団移入してきた朝鮮人が過酷な労働環境に置かれた。)
- 造船所と関わりがある(軍艦島は経営する三菱が長崎市に造船所を保有していた。そちらは強制連行された人々からは専らホワイトだと言われていたとのこと。シーキンセツは上記の通り元従業員のクスノキが造船所を経営している。あいにく、クスノキ造船所の労働環境は不明だが…)
- 人工島(軍艦島は小さい島を埋め立ててできた。シーキンセツは完全な人工島)
- エネルギー発掘施設(軍艦島は以前は炭鉱、シーキンセツは以前は海底資源発掘施設)
- 経営していた企業が両者とも大企業(軍艦島は三菱、シーキンセツはダイキンセツホールディングス)
リメイク元のすてられぶねは座礁船に人が普通に侵入していた為「おかしいのでは?」と言われていたが、リメイクと同時に再現度をあげて風刺を多く盛り込み同時に不可解さやストーリーとの絡みを増やす神業をやってのけた。
伝説のポケモン
シーキンセツには伝説のポケモンもいる。
実は『オメガルビー』ではホウオウが、『アルファサファイア』ではルギアと戦うことが出来る。
グラードン・カイオーガイベント後に見つかる「たんちき」をクスノキ館長に届けた後、お礼の品として「とうめいなスズ/うみなりのスズ」をもらうことが出来る。
「スズ」を持って再びここを訪れると不思議な輪っかがどこからか現れ、それを調べると伝説のポケモンが現れる。
※ちなみに、オメガルビーでは甲板に、アルファサファイアではシーキンセツ最深部に不思議な輪っかが現れる。
ホウオウかルギアが廃墟に居座る形となるのだが、特にルギアで大型船で黒いと言えばダーク・ルギアを連想させる。ホウオウは黒い人間が嫌いなことで有名。
余談
クスノキ館長が「とうめいなスズ/うみなりのスズ」を持っていた理由はジョウト地方の舞子家系に生まれた後輩にもらったからである。
男性である後輩は舞子になれないため、シーキンセツに出稼ぎに来ていた。
ちなみに、その後輩は当時お守りとしてとうめいなスズ(またはうみなりのスズ)を持っていたため、スズが鳴る度にシーキンセツで謎の光が起きていたのだ。
「並行世界」でのデボンコーポレーション
『オメガルビー・アルファサファイア』では黒い設定を付け加えられたデボンコーポレーション。
だが『ルビー・サファイア・エメラルド』には一切そのような臭いは存在していない。
当時のデボンコーポレーションは、元々山から石を切りだしたり砂鉄から鉄材を作る為に設立された地域密着の慎ましい会社であった。やがて材料だけではなく工業製品を作るようになった。
その中にはモンスターボールやポケナビなどのお世話になる道具も含む。
またダイゴの父親であるムクゲ社長は『ルビー・サファイア・エメラルド』のエントリーコールにおいて「カナシダトンネル」の工事を中止した理由として、あの辺りに生息しているポケモン(ゴニョニョ)を保護するためであると語っている。
「まあ にんげんの べんりさ よりは ポケモンが しずかに くらせる
そのほうが だいじな ことだからね!」
『オメガルビー・アルファサファイア』においてもカナシダトンネルの工事は中止されており、NPCのセリフから『ルビー・サファイア』と同じ理由で工事が中止になった事が分かる。つまり『オメガルビー・アルファサファイア』のムクゲ社長もゴニョニョを初めとしたポケモンを愛する気持ちは強いはずである。
そもそもリメイク前はシーキンセツは存在せず、「すてられぶね」でしかなかった。
あくまで「メガシンカが存在している並行世界」であるゆえに歪みが生じてしまったのだろう。
∞エネルギー誕生の理由
エピソードデルタにおいてムクゲはこう告げている。
「まず 話は 3000年前に さかのぼる
遠い地方で 大きな 戦争が あった
その 戦争はね ある男の 造りだした 兵器によって 終わりを むかえたんだ
そんな すさまじい 兵器の エネルギー源は 何だったのか?
きみには わかるかい? ……それはね ポケモンの 生体エネルギー だったんだよ
ポケモンたちの 犠牲によって 得られる エネルギー―――
そんなもの とんでもない と言う 人々も 多いだろう
でもね 先代の 社長である わしの じいさんは こう思った
『この エネルギーを 活用して 人々や ポケモンの 暮らしを 豊かに できないものか』……と
そうして 開発したのが 我が デボンコーポレーションの 誇る ∞エナジー でね
∞エナジーの おかげで デボンは ホウエンの トップ企業 となり 今の 規模にまで 成長したんだよ」
増田氏によると『ポケットモンスター X・Y』と『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』は非常に強い関わりがあるらしい事から
- 遠い地方=カロス地方
- ある男=超古代文明の王
であると予想される。彼が愛するポケモンを救うため発動させた最終兵器が∞エネルギーの原点なのだろう。
またその時に「メガシンカ」という概念が生まれた事を匂わせる記述もあり、超古代文明の王が最終兵器を使用した段階で並行世界が生み出されたとも仮定できる。
つまり超古代文明の王が最終兵器を起動しなければムクゲ社長の祖父(ダイゴの曽祖父)が∞エネルギーに手出しする事はなかったのである。
彼自身は数千年も愛する者と離れ離れになって彷徨い続けるというあまりにも過酷な罰を受け、そして罪の意識を抱えていた。
全ては運命が食い違ってしまった悲劇なのかもしれない。
なお、∞エネルギーとの関連性は不明だが、『ポケットモンスターソード・シールド』には莫大な量のエネルギーを司り、∞の名を冠した伝説のポケモン、ムゲンダイナが登場する。
さいごに
ねえ シーキンセツを みて ホウエンちほうは ひどいところだと おもったかい?
でも そんなことは ないんだよ ホウエンって ほんとうは もっと……
……いや きみなら そんなことは もう とっくに きがついて いるよね
シーキンセツで描かれている事はあくまで一部分、あるいは過ぎ去った過去でしかない。
何を信じるのかは貴方次第だ。やったぜ。