基礎データ
概要
龍造寺家のち鍋島家が藩主を務めた。
幕末には重なる出費などにより大量の借金、破綻した財政などで壊滅的であったが「肥前の妖怪」こと十代藩主鍋島斉正(直正)による怒涛の藩政改革(詳細は後述)により財政再建、近代化を果たし幕末の雄藩薩長土肥の一角を占めることになった。
前史
龍造寺隆信の活躍
隆信は祖父・龍造寺家純、大叔父・龍造寺家門、父・龍造寺周家らが少弐冬尚の家臣馬場頼周の謀略により殺害されていたこともあり、曾祖父の龍造寺家兼から死の直前に後継者に指名され水ヶ江龍造寺家の家督を相続した。隆信自身は本家である村中龍造寺家の龍造寺胤栄の家臣だったが、胤栄の死後、その未亡人を娶り本家の家督も継承する。紆余曲折はあったが九州北部を席巻し「肥前の熊」とあだ名され、最盛期は本拠地の肥前を始め肥後・筑前・筑後・豊前・壱岐・対馬にまで勢力を伸ばし『五州二島の大守』を称した。しかし、隆信は島津家久・有馬鎮貴(晴信)との沖田畷の戦いに敗れ戦死してしまった。
鍋島直茂の活躍
隆信は存命中に嫡男の政家に家督を譲っていたが政家は力量に欠け豊臣秀吉からは度々不興を買ったりした。一方、筆頭家臣の鍋島信生は秀吉からは高く評価され、主君・政家に代わって肥前の国政を担うよう命じられた。信生はのち秀吉から加賀守に任官され諱を直茂とし嫡男の勝茂共々龍造寺氏とは別に所領を受け取った。関ヶ原の戦いの時は勝茂が当初、西軍に付いたりしたが直茂の狡猾とも言える対応もあり改易を免れた。
佐賀藩成立後
龍造寺氏の断絶
直茂が国政を取り仕切ってはいたものの、表向きはあくまでも政家の長男で龍造寺家を継いでいた高房の家臣であり、江戸幕府成立後、高房が佐賀藩初代藩主となった。しかし、高房の大叔父の信周や長信、従弟の後藤茂綱、村中龍造寺の当主である家晴といった龍造寺一門の有力者たちは直茂に心寄せており高房は鍋島父子を疎ましく思っていた。そして1607年に妻である直茂の養女を殺害し自身も自害してしまい、隠居していた政家も高房の後を追うように没した。
鍋島氏による藩主継承
高房と政家が没したことで龍家の嫡流は事実上断絶(龍造寺宗家は政家の次男である村田安良の系統が受け継いだ)したことで改易の可能性が浮上した。江戸に呼び出され幕府から諮問を受けた信周・長信・家晴らの龍造寺一門の長老たちは直茂の藩主への推戴を望むことを伝えた。しかし、当時70歳に迫る高齢だった直茂は辞退し勝茂が藩主になった。こうして龍造寺家から鍋島家への権力委譲はスムーズに行われたのだが、高房の遺児である龍造寺季明(伯庵)が三代将軍徳川家光に直訴して龍造寺復権運動を起こしこれに政家の三男の龍造寺主膳や政家の弟・江上家種の次男である勝山勝種らが加担したが、復権運動は不発に終わった。
高房の自害に始まるこの顛末は「鍋島騒動」と言われ「鍋島化け猫騒動」として後世に脚色され直茂や勝茂は主家を乗っ取った悪役扱いされることになる。
幕末、明治維新期の佐賀藩
後にも先にも佐賀が一番輝いていた時期。先に述べた通り当時の佐賀藩には何万貫もの借金(現在のレートで数億円)の借金が存在し、藩財政は破綻していた。そんな中で現れたのが当時17歳の鍋島斉正である。彼は前藩主として実権を握っていた父親から実権を奪った後、濁流の如く藩政改革、産業革命を断行。妖怪っぷりを発揮していく。
「妖怪」の行った藩政改革、近代化政策一覧(抜粋)
- 3割の役人をリストラ
- 身分が低い藩士でも有能な者は積極的に採用
- 近代的な給料制度の導入
- 行政組織を一本化して無駄を省く
- 重要な事案は合議制で決め、何度も検討を加えられる制度の設立
- 農民保護政策を打ち出す
- 茶、蝋燭、陶器、石炭などの特産品の開発
- 炭鉱開発
- 藩の運営する学校「弘道館」の拡張、藩士の子弟への義務教育制度などの教育改革
- 当時、感染したらほぼ確で死ぬと言われていた天然痘への種痘(今でいうワクチン接種)の開始
- 「精錬方」という科学技術研究所を作り製鉄技術、大砲、蒸気機関、硝子、電信など西洋技術の研究を進める
- 日本初の製鉄所、反射炉、 蒸気機関車の模型、蒸気船製造、蒸気機関を用いた石炭採掘開始
- アームストロング砲製造(諸説あり)
- 近代的な海軍設立
誤解ないように言いますが、全部一人でやりました。もうバグってるだろ。
藩政改革の中でも藩校「弘道館」の拡張により、大隈重信や江藤新平などの佐賀の七賢人を始めとする優れた人材を世に排出。彼らの多くは維新の原動力となった。また佐賀藩の特徴として徹底した情報統制を行い、他の藩とは一線を画したとにかく技術を研鑽するという独自の路線を進んだ。これらの改革により、「薩長土肥」に数えられるようになったのである。
が…。
明治維新後の佐賀藩
佐賀藩は維新後、廃藩置県により長崎県と伊万里県(後の佐賀県)に分割される。
薩長土肥に数えられるようになったものの前述の独自路線、また直正がどちらかといえば戊辰戦争などの動乱でも比較的中立な立場を取ったため明治新政府で佐賀藩出身者は他の三藩と比べあまり重要な地位を得ることができなかった。
1873年には征韓論を発端とする政変で多くの有力な出身者が下野、さらに翌年下野した有力者、江藤新平が島義勇と共に不平士族に担がれるで佐賀の乱を引き起こしてしまう。近代装備の揃った帝国陸軍の前に完敗する。この反乱に危機感を抱いた明治政府は1876年の廃藩置県によって佐賀全県が周辺にある三潴県(福岡県の一部)と長崎県に編入され、佐賀は完全に地図上から名前を消した。
そして1881年、唯一残った有力な出身者の大隈重信が議会制度導入をめぐって多数派だった薩摩藩、長州藩と対立し追放された。
これ以降、佐賀が天下を牛耳ることはなかった…。
ただし根強い県復帰運動により佐賀が消えた7年後である1883年に佐賀が県として復活。そして今日に至っている。
歴代佐賀藩主
藩祖その1…龍造寺隆信(りゅうぞうじ たかのぶ)：水ヶ江龍造寺家初代・家兼の曾孫。水ヶ江家としては4代当主。村中本家としては19代当主。
藩祖その2…鍋島直茂(なべしま なおしげ)：隆信の家臣にして義弟
- 龍造寺家
初代…高房(たかふさ)：龍造寺家21代当主。20代当主政家の長男
- 鍋島家
初代…勝茂(かつしげ)：直茂の長男
二代…光茂(みつしげ)：勝茂の四男・忠直の長男
三代…綱茂(つなしげ)：光茂の長男
四代…吉茂(よししげ)：光茂の次男
五代…宗茂(むねしげ)：光茂の十五男
六代…宗教(むねのり)：宗茂の長男
七代…重茂(しげもち)：宗茂の七男
八代…治茂(はるしげ)：宗茂の十男
九代…斉直(なりなお)：治茂の長男
十代…斉正(なりまさ)：斉直の十七男、のちの直正
十一代…直大(なおひろ)：斉正(直正)の長男
支藩
- 蓮池藩…勝茂の五男・直澄を祖とする。
- 小城藩…勝茂の庶長子・元茂を祖とする。
- 鹿島藩…直茂の次男・忠茂を祖とする。忠茂の長男である二代藩主・正茂は伯父の勝茂と対立し、藩主の座を捨て飛び地の下総国矢作にて旗本となり本家と絶縁した。
親類藩
龍造寺四家
鍋島氏により親類同格として佐賀藩の支配機構に組み込まれた龍造寺一門。
- 諫早鍋島家…村中龍造寺家の家晴(信重)を祖とする。のち諫早姓を名乗る。
- 須古鍋島家…隆信の長弟・信周(周光)を祖とする。
- 多久鍋島家…隆信の次弟・長信を祖とする。のち多久姓を名乗る。
- 武雄鍋島家…隆信の次男・後藤家信を祖とする。
その他
- 川久保鍋島家…隆信終生の敵だった神代勝利の長男・長良を祖とする。
出身者
佐賀七賢人
以下の六人に鍋島直正を入れて七賢人と呼ばれている。
- 江藤新平…初代司法卿として近代日本の司法制度を設立。下野後に佐賀の乱を起こし斬首された。享年41。
- 大隈重信…二度の内閣総理大臣、外務大臣など要職を歴任。また早稲田大学を開校したりもした。
- 副島種臣…外務卿として明治初期の外交、下野後は自由民権運動で活躍。優れた書道家でもある。実兄の枝吉神陽を加えて「八賢人」とされることもある。
- 島義勇…北海道の開拓で活躍、札幌の街の基礎を創る。下野後、江藤と共に佐賀の乱を起こし斬首された。享年53。枝吉・副島の従兄弟でもある。
- 大木喬任…近代日本の教育制度を設立。
- 佐野常民…日本赤十字社を設立。
その他
関連タグ
ゾンビランドサガリベンジ…言わずと知れた佐賀県を舞台としたアニメ。作中で佐賀城を始めとする多数の佐賀藩ゆかりの施設が登場し、聖地となっている。また第8話、9話の「佐賀事変その壱・弐」では明治の佐賀が舞台となり、前述の佐賀県復帰運動が描かれた。
ゆうぎり(ゾンビランドサガ)…同アニメに登場するキャラ。明治に活躍した花魁であり、その後佐賀藩出身の明治政府高官に身請けされ佐賀に移住。その繋がりか佐賀藩出身の偉人とつながりが…？
