※存在そのものがネタバレのような人物であるため、この記事には『まちカドまぞく』のネタバレがかなり含まれます。閲覧する際はご注意ください。
「ご飯がかわいそうだから食べないの」
概要
那由多誰何とは、『まちカドまぞく』の登場人物。
千代田桜がいなくなった多魔市に住んでいた魔法少女。一人称は「ぼく」で、多魔市と桃の在り方に大きな影響を与えた存在でもある。少なくとも千年以上生きており、「かわいそう」が口癖で、常に他者の悲劇に共感し涙を流すなど、魔法少女にふさわしい優しい心を持った存在である。
シャミ子が追体験した桃の記憶の中(6年前)に初めて登場、何故か桜の家(現桃の家)に住んでいた。
病的なまでの絶食主義者で、1000年以上液体以外を口にしていない。その理由は上記の通り「かわいそう」だから。その為作中では常に水筒を持ち歩いている。
桜が推し進めていた『魔族と魔法少女が一緒に暮らす秘匿された町』の計画を「すてきだよね!」と評価しており、それを狙う不純な考えの魔法少女や、魔法少女を飼ってる大人達に見つかる前に町の全てを引き継ぎたいと考え、桃に桜ヶ丘に住んでいる『魔族の戸籍』を探してくれるように依頼する。
その際数枚のカードを利用しているため、数人の魔族を狩っていると思われる。ポイントカード自体は大量に所持しているようで、必要とあらば上記のようにあっさり複数枚を同時に使って願いを叶えるなど実績と実力を感じさせる描写も為されている(カードの仕様やポイントの付与基準などの詳細は不明だが例として白澤店長が朱紅玉に一時封印された際は12ポイントで満了(願いが叶えられる状態になる)のカードで入ったのは2ポイント)。
桜とも旧知の中であり一緒に遠征して人を助けたりしていた。その際に幼い桃とも面識があり、その境遇に涙しているが、ヨシュアによって記憶を封じられたため桃は覚えていない。
なお作中でシャミ子達闇の者は「まぞく」と平仮名で書かれているが、誰何の台詞中では基本的に「魔族」と漢字で書かれている。
ナビゲーターはイノシシ(ウリ坊)のウリエル。両手両足両耳に枷を付けており「イエスマム!」としか答えないクセの強い姿(シャミ子談)である。
容姿
三つ編みに束ねた銀髪に黒い帽子を被っており、耳は尖っている。
服装は、メイン画像のような「黒いドレス」と、「メッシュのかかったインナーに半袖、手袋を着込んだもの」の2種類が確認できる。
Twitterではその見た目といい、変わった性格といい某同人シューティングゲームのキャラにいそうだという意見がちらほら見られる。
関連項目
【!警告!】 |
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ここから先の項目には、「まちカドまぞく」単行本6巻以降の内容、並に物語の核心に関する重大なネタバレが含まれます。また、残酷・猟奇的な描写やホラー表現とみなされる内容が含まれますので、閲覧の際は十分にご注意ください。 |
正体
桃の入手した「魔族の戸籍」を参考に毎晩どこかへと出かけていく誰何。『時々危ないことあるから』と桃の同行を拒み、その間の遊び相手にとウリエルを託すが、その際にウリエルのクセの強い恰好や言動は誰何に強いられたものであることが明らかになる(「イエスマム」、「ハイ」以外を口にすると電撃が流れる)。
ウリエルの手引きにより公園の桜の下でメタ子と再会する桃であったが、その場に現れた誰何はわざわざカードを消費して桃とメタ子を近くに呼び戻す。
これは「結界の強い魔法の桜に近づけない」=「この町にとって歓迎されていない」という可能性を示していた。
何故かその日からメタ子は「時は来た」としか喋れなくなり、さらには桃が名簿を管理していた黒ずくめのコスプレまぞくを尋ねるも、誰もそのまぞくを覚えておらず、そこには不自然に焦げたイスが残されているのみであった。
以前から誰何の言動に小さな違和感を持っていた桃であったが、これらの出来事を契機に自身も名簿を参考にまぞくを追うも、どこにもまぞく達の姿は無く、周囲の人間達の記憶からも消えていた。
『この町に住んでいるまぞくを封印していますね』
と確信をもって尋ねる桃に、誰何は「心外だ」とでも言うような表情と共に答える。
「最近は魔族だって人間と変わらないんだよ…?」
「封印なんてしてないよ」
「大丈夫 ちゃんと苦しまないように殺してるよ」
「かわいそう」を忌避する心優しき少女は、神代からの長い年月の末に『富む人がいれば貧する人がいる』、『食べる人がいれば食べられる人がいる』、『素敵な出会いがあれば悲しい別れがある』、『始まりがあれば終わりがある』といった必然的に起こりうる「かわいそう」ですら許容できなくなり、『この世全ての「かわいそう」を根絶する』といった目標の為に動いていた(なお具体的な方法について詳細は不明だが、『この世に感情が無かったころまで巻き戻したい』、『具体的には原始海洋って知ってるかな?』と語られている)。
誰何がこの町に来ていた理由はその最終目標をかなえるため魔族を狩りポイントを稼ぐことであり、桃に魔族の戸籍を探させたのもそのためであった。
そして誰何は桃に集めさせたまぞくの情報を元手に密かに町中のまぞくを無差別に討伐していたのである。それも他の魔法少女達のような『封印』ではなく文字通りの『殺害』という形で(常に持ち歩き常飲している液体もそこに由来すると思われる)。
さらにカードの力で手に入れた「記憶を消す能力」で殺したまぞくの周りの人物からそれに関する記憶を消していた。
それ以外にもいろいろな能力を有しているようで、桃との戦闘では槍のようなものを使って戦っていた。
しかし誰何自身悪意を持ってやっているわけでもなければ罪悪感が全くないわけではなく、『自分が魔族を殺して親しい友人を悲しませている』と自覚している上で行動しており、人々から記憶を消しているのも「忘れてしまえば一旦かわいそうじゃなくなる」という善意によるものだった。
魔族についてもエサと見なしつつ、『呑んだ魔族のことは一人たりとも忘れていない』と言い、桃が無駄と思える抵抗をした際はカードを消費したことについて『死なせた魔族に申し訳ないよ』と珍しく不快そうな表情を浮かべていた。
また桃に「まぞくを封印している」と尋ねられ、封印を否定し「殺している」と答えたことについても、封印し生きたまま拘束し続けるような「かわいそう」なことはできず、死によって全てを解放し、自身の目標の糧とするほうがずっと有意義だと考えているからと推測できる。
全ては彼女の狂気に等しいまでの底なしの善意によって引き起こされた凶行だった。
本性を知り激昂し抵抗する桃に体が千切れるほどのダメージを与え追い詰めるも、へそくりとして桜が残していたカードを桃が使用したことによって無力化(コマタイトルによれば『全バフ解除』)され、全ての魔力を消耗して溶けるように肉体が崩壊、露出したコアを破壊され消滅した……
………………かに思えたが…
『たべのこしがあってよかった』
『まだ神は私を見捨てていない』
消滅したと思われた直後、上記の台詞を告げながら影に無数の目玉が浮かんだ人間でも魔法少女でも魔族ですらもない禍々しい姿で復活(曰く、「ご褒美の使い方が上手くない」、「言い回しでけっこう効果が変わる」とのこと。本来カードの力で殺そうとしたのを躊躇して「無力化」に切り替えた為に、決定打に至らなかった可能性も考えられる)。
『痛そうでずっと気になってた』と深手を負わせた桃を治療し、『一からやり直しだ』と告げ何処かへと姿を消した。桃の体に今も残る腹の傷跡はその時のものである。
そして最後には
『そこで覗いてるツノのまぞく、お前はまた来ていつか殺す』
と明言しており、何故か過去の記憶であるにも関わらず、シャミ子の存在を認識しているような意味深な発言を残している。
※なお、「覗いてるツノのまぞく」は一応はリリス説、大穴でヨシュア説もあるが、その前にも「『誰何』の読み方」という桃ではなくシャミ子の疑問に答えるシーンがあることから見て、ほぼ確定と見ていい。反証として、桃が表札を眺めていたから、それにただ答えただけという見方も出来る。僅かだがタイムラグもあった。
桜については、自分のことをよく分かってくれてるらしい。当の本人からは「いや全然わからんよ?」、「きみ変だもん」と返された上に「死ぬほど電話かけてきそうだから」という理由で、連絡先を教えてもらえなかったが。
なおナビゲーターのウリエルについてその後の行方は不明だが、誰何の『桜の木の下に埋まっている桜のへそくりについてたくさんお話して教えてもらった』という発言から、おそらく助けてほしい一心で桃に入れ知恵した為に、誰何に尋問され、情報を吐かされた後に始末されたと思われる。
考察(ネタバレ注意)
今回シャミ子が追体験した桃の過去には長い目で見れば納得できる部分も多く、これまで至るところに散見されていた不自然な部分に今回の事件を照らし合わせると以下のように考察出来る。
- 『世界を救った話』の真相→「かつて世界を救ったことがある」という桃の噂についてクラスメイトが言及した際、桃は「あれはそういう認識になっているのか」とバツが悪そうな顔をしていた。
詳細は不明だが上記の誰何の発言からして、最終的に「この世界から全ての生命を滅ぼして何もかもをまっさらな状態にすること」で世界全ての"かわいそう"を根絶するつもりだったのではと推測できる。
知られざる戦いだったとはいえ、桃は誰何を倒したことで彼女の野望を阻止することができた。さらに彼女の力によって記憶を消されていた町の住民達は世界が脅かされている事実はおろか「大量の死者が出るほどの被害を受けた」という認識すら出来なかったため、結果としてこの事実は「世界を救った」という噂として残る形になったと思われる。
ちなみに一度結界を訪れた際にシャミ子が目撃した「桃が世界を救えなかった世界線」では、生き物どころか文明の名残すらない、文字通りぺんぺん草も生えない真っ白な平原が広がっていた。
- 桃が長年引き摺っていた心の傷→最初にシャミ子が桃の夢に侵入した際、桃は泥沼の中で幼少期の姿で「(守ることが)うまく出来なかった」と泣いていた。上記でもあるように桃が多魔市を訪れ誰何と対峙するまでに相当数のまぞくが彼女の手にかかっており、加えて誰何は桃が来る以前から既に何人か殺めていた(桃曰く、「昔の町には十人に一人の割合でまぞくがいた」らしく、中には「羽の生えた人」や「引きこもりの雪女」、「河童の親子」に「ゾウくらいのサイズの燃える馬に乗った首のない騎士」もいたとのこと)。さらに知らなかったとはいえ結果的に彼女の犯行に加担してしまった。「知り合いはみんないなくなった」、「シャミ子と御家族は唯一の手掛かり」という発言から最終的に町に帰って来てからシャミ子に出会うまで他のまぞくに会えなかったと思われるが、裏をかえせば最悪の場合封印や結界によって難を逃れたシャミ子とごく一部を除くほぼ全てのまぞくが彼女に狩り尽くされた可能性も考えられる。そんな大惨事を止められず、心身共に深く傷ついた桃は、シャミ子に会うまで「姉が守ろうとした町とまぞく達を守れなかった」という後悔にずっと苛まれていたことだろう。
もしかするとあの時のトラウマから逃げたい一心で強くなることに固執した結果が、桃の筋トレ好きにつながっているかもしれない。
- 桜がヨシュアを封印した理由→桜が桃にへそくりとして残した大量のカードはメタ子曰く「ある大まぞくを封印して手に入れたカードをとある目的で使いそれでもなおその量が余った」とのことだった。当時の桃にはその意味すら理解出来なかったが、後にそのカードがヨシュアを封印した際のものだったことが判明した。「喫茶店あすら」の結界を強化した際の「今から天災みたいなやつがくる」という発言と、それから三日後にシャミ子の命を救う為に病院を訪れた時点でコア状態としての姿すら保てないほどに消耗していたことから、結界の強化から桜がシャミ子の命と同化するまでの三日間に誰何に関して何らかのトラブルがあったのは明白であり、さらにシャミ子が回復してから封印されたヨシュア(とごせん像)が見つかった経緯からおそらくその三日の間に彼は封印されたと考えられる。作中でリリスは自分の直系であるはずのヨシュアについて何も知らなかった描写があるが、上記の彼女の犯行の手口からして「彼を守る為に誰何に殺される寸前で封印した」と考えれば、誰何との戦いに巻き込まれ、リリスや家族の記憶に何らかの影響があったとしても不自然ではない(事実、二日酔い気味だったとはいえ彼の所持品で伝説級のアイテムである『ナントカの杖』の正式名称を一族揃って度忘れしているのも単なる偶然とは言い難い)。
- 桃が見た『動かないコア』→通常、魔法少女達は魔力を消耗すると、肉体を保てなくなり『コア』の状態になる。桜の行方を探していた際、桃は『以前見たのが水晶状で動かないものだった』為に、リコに指摘されるまでコアを『無生物型の動かないもの』として見ていたが、実はその『動かないコア』の正体が誰何のものであることが判明した。
- 消えたばんだ荘の住民達→シャミ子達が住むアパートは清子曰く「昔はけっこう人がいてにぎわっていたはずなのにいつの間にかみんな引っ越していた」らしく、物語開始時点で桃達が引っ越して来るまでアパートにはシャミ子達しか住んでいなかった。清子が住民達についてはっきりと覚えていないことと後に彼女に消されたとされる前の住民が登場したことから、「吉田家以外の住民(まぞく)が彼女に皆殺しにされた可能性」も考えられる。
- 彼女が魔法少女を恐れるわけ→近年、ある少女が桃達以外の魔法少女に対して異様に怯える描写が多くなっている。その少女は上記の「黒ずくめのコスプレまぞく」が誰何に殺害される際に残した分身なのだが、その際に記憶は引き継げなかった為、結果として本能的に刻まれた「魔法少女(誰何)に殺される」という恐怖とまぞく由来の才能だけが彼女に残ったと思われる。尚、桃はその「コスプレまぞく」に関して何故か記憶にノイズがかかって不明瞭な描写があったが、これは誰何が彼女を殺害した際に彼女に関する記憶を消した影響によるものと考えられる。