なまくらによって小説家になろうに連載されている小説(ラノベ)作品。『カクヨム』にも掲載されている。
フルタイトルは『108回殺された悪役令嬢 すべてを思い出したので、乙女はルビーでキセキします』となっているが、タグとしては仕様制約上『108回殺された悪役令嬢』が推奨される。
なお以前のフルタイトルは『108回殺された悪役令嬢 すべてを思い出したので、知識チートでひきこもります』だった。
実は一時期「なろう」では描写規定違反(セクシャル系表現)として削除の危機にさらされた事があったため、その部分を改稿しており『カクヨム』掲載分は描写規定遵守改稿前のバージョンである。(そのため規定遵守表現がデフォルトとなった第47話以降の話はカクヨム側には掲載されていない)
2020年8月にエンターブレインより主人公の赤子時代を描いた『BABY編』が上下巻出版され書籍化。挿絵作画(キャラクターデザイン)は鍋島テツヒロ。
同年9月より『電撃大王』にて鳥生ちのり(とりう)の作画によるコミカライズが連載されており、ComicWalker(FLOS COMIC)やpixivコミックにも配信されている。
概説
いわゆる悪役令嬢ループもの作品にあたり、幾度となく悪役令嬢(悪の女王)として死亡しループしている主人公が、その運命から脱するために引きこもりを目指す物語。
設定や物語展開が、かなりヘビーである一方で描写はコメディやギャグに溢れており、時に主人公が自ら「知識チートやルビーのキセキはどこ行った」「これじゃタイトル詐欺」「ジャンルタグ(異世界恋愛)が瀕死」などとツッコむなど読者にしかわからない(逆に言えば登場人物が知っていたら世界観的におかしいハズの)メタネタ・サブカルネタすらもブッ込んでいくため、通常展開時の読み味は軽い。ただし、シリアス時には重い展開や涙腺崩壊が長く続くことも多い。
あえて言うなれば、読み味そのものの感覚としては某少年漫画の総決算的一大ファンタジー漫画の読み味に似たもの(同類)と言える。ただし、その分、作品に対して一定の方向性を求める読者(いわゆる「ギャグはギャグ、シリアスはシリアス、どちらかにまとめるべき。両方を備えると読み味が散り台無しになる」とするタイプの読者)や、設定・世界観の厳密性(中世世界観なら中世として、RPG世界観ならRPGとして、その部分の前提的な約束を遵守してほしい、そこにネタをブッ込まれると世界観が台無しになる、とする考え)を重視する読者からは疑問視をされやすい作品でもある。
あらすじ
ハイドランジア王国を虐げ支配する、悪逆の女王スカーレット・ルビー・ノエル・ハイドランジア。
圧政に耐えかねた民衆が革命の気炎を上げる中、追い詰められた彼女は焦る足取りで階段より足を滑らせ、ものの見事な階段落ちを演じて、あえなく死亡する事となった。
しかし、その死によって女王スカーレットは気付く。自らが「公爵家の令嬢として生まれ、なぜか血で血を洗う王位継承争いに参加させられて女王へと上り詰めた挙句、革命の旗頭『救国の乙女』となった親友アリサに裏切られ、彼女を守る『5人の勇士』の誰かに殺される」という運命をループ転生によって108回も繰り返していた事に。
それを知ったスカーレットは、また再びのループ転生によって新たなる生き直しへと誘われている事を勘付いて「今度の人生では女王になんて絶対ならない! そんなものとは無関係の公爵令嬢として領地に引きこもって生きる!」と誓い、自らの「108回の人生」の記憶を保持したまま過去へとループ転生する事に成功する。
しかし、そんな彼女を待っていたのは生後即日、いきなり実母から殺されかかるというハードモードこの上ない運命であった。さらには、実母から殺されかかったスカーレットを救ったのは、よりにもよって将来において彼女を殺すことになるであろう『5人の勇士』のひとり、暗殺者ブラッド・ストーカーであった。そして、彼を皮切りに『5人の勇士』のうち数名がなぜかスカーレットの側に集ってしまう。
彼らに関わってしまっては、スカーレットの将来の即死フラグが確定する。しかし、そんな未来など知らぬ彼らは何ゆえにか事ある毎にスカーレットに関わってくる。かくて、これまでの「108回」すら生易しいと思えてしまう、平穏な人生を送りたいスカーレットのルナティックでエクストリームかつアドバンスな再びの運命(エクストラ・ステージ)が始まってしまうのであった。
登場人物
- スカーレット・ルビー・ノエル・リンカード
- 本作主人公。のちに悪逆を尽くす悪役令嬢スカーレット・ルビー・ノエル・ハイドランジアとなり処刑上の露と消える運命を背負い、それを108回も繰り返してきた赤髪紅眼のループ転生者。
- しかし、本人は至極真っ当な感性を持つ為政者だった。悪逆の人物評はとある人物による扇動によってもたらされたプロパガンダにして政策や判断を裏目に取られて陥れられ、誤解と悪意によって広められてしまったデマである。しかし自身は108回の人生においては、その事に気づくことは無かった。
- 109回目の人生にして、初めてループの記憶を持ち越す事に成功してからは「女王などにはならず、権力闘争にも加わらず、領地に引きこもってスローライフを目指す」ことを信条としている……のだが、なぜか様々なトラブルが向こうから寄ってくることとなる。寄ってくるトラブルの際たるものが、自らに近づく『5人の勇士』と『救国の乙女』の存在である。
- かつてハイドランジア国および周辺諸国の祖となった統一皇帝である「真祖帝」による「自身と同じ髪と瞳(=赤髪紅瞳)を持つ者こそが自分の後継者である。それが男なら我が帝国を継がせよ。女ならその者を娶った者が帝国を継げ」という遺言のせいで、周辺諸国の四王子(揃いも揃って王子であるという自らの地位を大きく勘違いしているロクデナシども)が、スカーレットを手込めとするべく強姦未遂や拉致誘拐などの強硬手段に出たためにその対処に苦慮する事にもなった。女王即位後は治世に忙殺され、「108回」の人生で一度も恋も男も未経験であった。そのため今回の人生では男装の麗人として生きる羽目に陥る。
- アンノ子ちゃん:スカーレットの中に潜んでいるらしき「108回の人生」の中にはありえない記憶を持っている、もうひとりのスカーレット。ちなみに名前は『所属不明(アンノウン/Unknown)の記憶』である事から。ちなみに彼女の記憶では『五人の勇士』はスカーレットの守護勇士であり、自身を守ってくれる存在として登場している。
- ブラッド・ストーカー/暗殺者ブラッド
- 『五人の勇士』のひとり。あらゆる国家に所属することなく傭兵と暗殺で生業を立たせ、自らの「武」を極めんとする独立系武闘派集団「治外の民」出身の暗殺者。のちに民を束ねる長として暗殺対象のスカーレットと対峙する事となり、互いに一族と国家を挙げて熾烈な戦いを繰り広げる(結果、治外の民はブラッドを残して滅んでしまう)事となる相手。しかし、一族の仇敵でありながら、スカーレットの心中を察し、好敵手ではあるが怨敵ではなく、敬意と共に彼女の命を断つため、ある者からはスカーレットの殺し方がつまらないと評されている。
- しかし「現在」の時間軸ではスカーレットの命の恩人であり、実質上の幼馴染同然の間柄。母親に殺されかけたスカーレットの生への執念に敬意を抱き、彼女を守ると自らに任じて、挙句の果てに護衛メイド少年(※美少女顔で下手なメイドよりよく似合っている)としてリンカード家の守護を担うようになる。
- ちなみにメイド服(特にスカート)に関しては「スースーするけど、その分暗器を隠しやすくて、とっても便利だ」として非常にお気に入りである。あまつさえ一時期は、それが高じて里の男性陣(※ガチムチ武闘派筋肉集団)にメイド服を便利な服として布教しようと企んでさえいた。(一応、未遂に終わった模様だが、本人は引き続き嬉々として着続けている)
- 治外の民の宗家の子でもあり、幼くして、医療技術としても応用の利く高い暗殺・格闘技術を誇る。また尊敬する兄がおり、弟や妹もいる、中間子だったりする。
- 自他の「血の流れ」を操り察する能力を持ち、特に血圧の変化は相手の発言の虚偽や心理状態を察する事が出来、今生の生後間もないスカーレットが周囲の言動や地位を理解していることに最初に気付いた人物となる。以降は彼女と漫才のようなコミュニケーションを取っている。なお、読心レベルで解する事が出来るのはスカーレットのみ。
- セラフィ・オランジュ/風読みセラフィ
- 『五人の勇士』のひとり。世界最速の帆船「ブロンシュ号」を駆り、あらゆる風を読み切って物資や人員・情報を運びきるオランジュ商会の年若き会頭。のちにはその船乗りとしての風の読み切りで反乱軍を動かし情報を束ねて反乱軍の要のひとつとなり、ハイドランジア女王軍を翻弄し疲弊解体へと至らしめた男。
- 一方で「現在」の時間軸では代替わりの隙を突いたライバル商会の悪どい手練手管によって勢いを削られ、財産はブロンシュ号と自らについてきてくれた僅かな古参の船乗りたちのみ、という超零細弱小商会の幼き会頭。とある偶然からスカーレットの父に手を貸す事となり、そのままリンカード家を襲った動乱に巻き込まれ、結果としてブラッドと友誼を結ぶこととなり、共にスカーレットを守ると誓う事に。のちにはスカーレットのビジネスパートナーとなり、彼女の繰り広げる商売に噛む事で商会のかつての勢いを取り戻した上で、さらに大きな勢いを得つつある。
- メアリー/フタリーチナヤ・フストリェーチャ
- リンカード家のメイドにして、スカーレットの乳母。そしてメイド少年となったブラッドにとってのメイド技術の師匠。スカーレットが成長して乳母の仕事が無くなった後は、スカーレット直属の世話係という立場は引き続き保持したまま、お針子メイドとして公爵家の服飾も一手に握っている。
- 本名は「フタリーチナヤ・フストリェーチャ」だが、その発音はハイドランジアの中央の人にとっては難しく、また名前の長さも冗長に感じるため、普段は通名(愛称)として「メアリー」を名乗っている。
- 元はクロウカシス地方の片田舎で乳飲み子を育てていた年若い寡婦であったが、とある犯罪に巻き込まれた事で我が子を失い絶望に呑まれていた所、犯罪者を追ってクロウカシスにやって来たスカーレットの父に支えられ、乳母としてリンカード家に招かれた事情がある。
- スカーレットが生きてきた「108回」の人生の中では、彼女の記憶の中には登場しなかった人物。だが実はスカーレットのどの人生でもスカーレットの乳母である。喪った子の代わりにスカーレットに乳を与える役割と後述の理由によるコーネリアの狂乱を防いだ経緯から実母に見限られたが同然のスカーレットに対して母代わりに愛情を注ぎ、その「108回」全ての人生を貫いてどこまでも彼女の味方であった人物。しかし、ゆえにこそ「108回の人生」においてはスカーレットが物心つく前に陰謀で引き剥がされ、再びまみえる直前に謀殺されてしまっていた。されども、その遺志は死を越えてなお人々に伝播し引き継がれ、スカーレットの「108回の人生」において様々な形でスカーレットをあらゆる局面でその最期の瞬間まで守り続けていた。また「108回の人生」でのスカーレットは、自らの乳母の本名を「しあわせになれる言葉」として記憶していた。
- ちなみに謀殺された時には、新しい命が宿っており、その命が生まれたならばスカーレットが名付け親になっていたはずで、彼女の最大至高の従者として多大な活躍を果たすはずであった。(つまり母子共々に謀殺された事となる)
- コーネリア
- スカーレットの実母。スカーレットを産んだ即日に「女では跡取りにはなれない、こんな子はいらない」と発狂して我が娘を殺そうとするも、スカーレットの抵抗の果てメアリーとブラッドに止められる。
- 実はその発狂は地方育ちのコーネリアを疎んだ義父母および、彼らと手を組んだ夫の妾(になりたがった豪商の娘)によるスカーレットの毒殺(堕胎のための特殊な毒薬。麻薬を含んでいたことが発狂した一因)未遂が原因。原因を突き止めたブラッドによって治療を受け解毒を果たした後は、正気と健康を取り戻す。
- 実は国家辺境を治め、弓術に長けた一族「メルヴィル家」の娘であり、弓を取らせれば一族でも至高の腕前を誇る手練れ。王家騎士団の弓取りたちにとっては伝説の存在として知られる深窓ならぬ深杜の令嬢であった。なお、弓の名手としての血の宿命か、胸当てが必要ない体型で、スカーレットも彼女の遺伝子は「108回」の人生では濃く継いでいる模様。
- 森林を遊び場として生き、領地の人々を守るため弓に生きてきたため、貴族としての(社交界上の)礼法や作法は最低限しか学べておらず、義理の父母からは陰湿な嫌みとイジメの的にされ、そのために多大な屈辱を受けてきた事もあり、ある社交界の場において一晩で対人恐怖症を患う程の辱めを受けた過去が半ばトラウマ化している。そのため、なんとか世継ぎを産むことが妻としての存在意義と盲信した状態にあり、夫との間にすれ違いが生じている。
- スカーレットの「108回の人生」においては、盛られた薬の副作用と自身がスカーレットを手にかけようとしてしまったというショックから、スカーレットを殺害する途中で深刻な心臓発作を起こし、スカーレットを辛うじて殺さずに済ませつつも死に至ってしまう。ただ、彼女の死により娘のスカーレットは二の矢の暗殺(病死のコーネリアの死後間もなく事を起こせば商会の娘の謀殺が疑われるため)を免れると言う、ある意味では皮肉な結果となった。
- ヴェンデル・クリスタル・ノエル・リンカード
- スカーレットの父。当初、妾を囲っていたという触れ込みだったが、実はそれは陰謀によって流された嘘。本当は愛妻家……というか正真正銘の嫁バカ。
- 「馬闘術」と言われる人馬一体の戦闘術を駆使する、一騎当千どころか一騎当億クラスの強者。その無双ぶりは「常勝不敗の公爵」「紅の公爵」として敵味方に広く知られ畏怖される。
- また強さに違わぬ相当の美丈夫であり結婚するまでは社交界においては嫁候補への立候補が乱立する引く手あまたの存在だった。そこに武功による出世も加わり、将来の期待株として彼との縁組を求める名家も多かった。しかし本人はそういった事には全くの無頓着であり、恋人となったコーネリアと、さっさと空気を読まぬ恋愛結婚を決めてしまったために、貴族社会そのものからの怒りを買っていたが、本人たちは全く気付いていなかった。そして、その怒りは社交界における自らの守り方が万全ではなかった愛妻のコーデリアに一気に向くこととなってしまっていた。そういう意味では妻同様にある種の脳筋であり謀略が飛び交う貴族社会には全く向かない人物でもある。ちなみに彼がそうなった一因として、彼の父母バイゴッド夫妻から出涸らしの領土と、彼等に苦しめられた領民のヘイトのスケープゴートとして身の無い侯爵の地位を継承させられ、その再建のために武功を挙げるべく忙殺の苦労をさせられたせいでもある。
- ヴェンデルは彼の赤髪赤眼から、真祖帝の再来と噂されており、先帝の望む絶対王政を覆しかねない存在であったため、疎まれていた。ローゼンタール伯爵夫人が、ロナが、かつて救った幼い少女が、命をかけ、プライドと心まで捨て、泥と血にまみれ、王宮の陰謀から自分を守りぬいたことを、ヴェンデルはまだ知らない。(一部、この文には本作の言葉を引用しております。)
- スカーレットの「108回の人生」においては、妻を失ったショックで一気に老け込み、容姿が別人(精悍な体躯がゲッソリと痩せ落ち、哀しみの慟哭の果てにハゲた。そのため今生のスカーレットは父の姿を見て一瞬誰だか理解できず、そして若き日の父のイケメンぶりに衝撃を受けた)のようになりつつも妻の復讐に生きる魔王と化して、その陰謀に加担した者に執拗なる復讐を敢行していた。ところが最後の最後には亡き妻の幻影という罠にかけられ謀殺される事となった。
- ただスカーレットの「108回の人生」においては上述の復讐のために家を留守がちにしてしまったため、肝心のスカーレットには「お父様は口ではお母様を今でも愛していると言いながら、その実、妾のもとに入り浸っているんだ」と誤解されていた。もっとも幼少期のスカーレットは周囲からその疑惑を何度吹き込まれても父を信じていたのだが、父の死後には父母の愛情の痕跡は何者かに消されてしまったため信じられなくなってしまう。なんにせよヴェンデル自身が幼少期に置かれた環境(後述)のせいで愛情表現が苦手な不器用な父親である事は、スカーレットのどの人生においても共通する。
- ローゼンタール伯爵夫人
- かつてスカーレットの父・ヴェンデルが幼い頃に助けた女性。その出来事で、彼女は身も心も、すべてを捧げるほどの初恋を彼にする。
- 器量の良く、とても優しく心の強い女性。愛する人の愛する女性はヴェンデルを守るほど強い女性か見極めるために、自らの命を使い魔眼を使用する。
- 彼女は昔、裕福な平民の家の息女であり、優しい家族に囲まれ幸せであったが、父親が詐欺にあったことで彼女の生活は一変した。貧民になり、彼女の母は皆をなんとかして養おうとするも、過労で死に、おかしくなった父には、兄弟愛を逆手に取られ、男どもに売られる売春という最悪な事態になった。そこから助け出してくれ、自分は汚くなんかないと、気高い魂を持っていると言ってくれたヴェンデルを心から愛し、狂おしいほどの初恋を彼に捧げる。作者によると、それはもはや崇拝と呼べるものだそうだ。
- ハイドランジア国先帝の愛妾。彼女は貧民街の娼婦から、自らの美貌と性技を駆使し最高級の娼婦まで上り詰めた。それら全てはヴェンデルを影からでも助けるためであった。
- 前述のとおり、彼女は先帝に疎まれていたヴェンデルを助けるために好きでもない男たちに身を開き、帝の妾にまで成り上がった。その過程で彼女はたくさんのライバルたちを蹴落とし、自分に全財産をつぎ込んでくれた男すら切り捨ててきたため、人々からは「宮中の毒サソリ」と呼ばれている。
*****ーーーー色と贅の限りをつくし、ハイドランジア先王を骨抜きにした。
ヴェンデルへの恋心を悟られないよう、笑顔の仮面をかぶり、命がけで先王を魅了した。
そして先王がヴェンデルに過酷な任務を与えようと思いつくたびに、先王を誘惑し、色に溺れさせ、その目をそらし続けてきたのだ。
すべてはヴェンデルのしあわせのために。
ヴェンデルは、紅の公爵は、知らない。
かつて救った幼い少女が、命をかけ、プライドと心まで捨て、泥と血にまみれ、王宮の陰謀から自分を守りぬいたことを。
宮廷の毒サソリ、金と宝石で着飾ったうすぎたない娼婦、そう陰口を叩かれる女が、誰よりも一途な恋心に突き動かされたゆえに、悪女であり続けなければならなかったことを。
先王のそばに控え、居丈高にヴェンデルを見おろすたび、彼の足元にすがりつき、大声で泣きじゃくりたいのを必死にこらえていたことを。出典・108回殺された悪役令嬢
- 前述のコーネリアの悲劇の際、一度は彼女に幻滅し、助けられなかったことを非常に悔やんでいる。
が、後の舞踏会で彼女はなぜコーネリアが怯んだ理由がわかり、どんな人間なのかわかった。コーネリアを、ヴェンデルにふさわしい伴侶として、認めた。
- 二人はもしも、悲しい悲劇が積み重ならなければ、とても良い友人になっていただろう。
- マッツオ・ジェダイト・ノエル・バレンタイン
- ハイドランジア国騎士団・王家親衛隊の隊長。ヴェンデルの救援要請によりコーネリアとスカーレットの守護のため、リンカード家を巡る騒動の渦中に派遣される。
- 騎士ではあるが基本的な戦闘スタイルは「剣」ではなく「拳」であり、ノーリーチのインファイトを最も得意な戦闘スタイルとしている。いちおう騎士としての専用武器は所持しているが、これも剣ではなくインファイトでの保護装備である手甲とフレイル型モーニングスターである。
- スカーレットの「108回の人生」の中で、最後の最期まで王家最後の砦として彼女に付き従った忠臣。彼女の苦難の人生の中で影となり日向となり付き従い、反乱軍からのスカウトにも背を向けて女王の力になり続けた最高の漢。義に厚く、友誼を遵守し、女性に敬意を以て接し、弱きに常に寄り添い、悪しき強きを挫き、道を誤った上部には強く諫言する、騎士の中の騎士。そのため、スカーレットの苦難も優しさも苦悩も知り、あらゆる者が残虐な愚王と罵るスカーレットに対し「誰よりも心優しく誇り高き女王である」と評し、彼女を罵る声に対しては常に疑義と怒りをぶつけ続けた。
- スカーレットの「108回の人生」においては、実はリンカード家を辞したのちのメアリーの婚約者であり、メアリーが謀殺された折に彼女に宿っていた命の実父。メアリーの謀殺によって絶望に沈むも、彼女が生前に遺した「私に何かがあろうとも私の愛はあなたとスカーレット姫さまの中に置いてきています」「もしも私に何かあったなら、スカーレットさまを守って下さい」という遺言に導かれ、スカーレットを終生守護する。
- スカーレットの今生においても、様々な奇縁で彼女と苦難を共にする事となる。
- バイゴッド夫妻
- ヴェンデルの父母であり、スカーレットの祖父母にあたる人物だが、自身の贅沢な生活にしか興味がない浪費家。領民からは重税と贅沢のために土地から追い出したりなどで苦しめ嫌われており、財産を食い潰した挙げ句に領土の切り売りで侯爵の位以外リンカードの家に価値がなくなるや息子のヴェンデルにリンカード家を継承させて母方の裕福な実家に移り住み(その時にリンカード家の財産と呼べる芸術作品や調度品全てを持っていった)、息子のヴェンデルには高い爵位を譲ったと恩着せがましく息子の功績から甘い汁を吸おうとしている悪質な人物。
- その後も贅沢から財産を食い潰し、現在は悪質なシャイロック商会に多額の借金をし、商会が貴族の地位を求める行動に協力する。
- 息子に対しても家族の情は微塵も感じられず、地位もない恋女房と結婚したことを忌々しく感じており、義理の娘コーネリアに対しては息子の留守を狙って陰湿な嫌みやイジメを重ねており、ある社交界ではコーネリアの不作法の揚げ足を取るだけに足らず、居竦んだ彼女を公衆の面前で記載するのも憚る諸行で彼女を一晩で対人恐怖症にするまでに精神を病ませた。その後、コーネリアの懐妊を知ると喜ぶどころか「誇り高き我が家に汚らわしい血が混ざる」と憎悪に狂い、商会の甘言に乗って堕胎の謀略を手引き。結果「108回の人生」では毒を盛られたコーネリアは、早産ながらスカーレットを産むが、その負担で死亡する事となった。
- しかし、コーネリアの毒殺が成らなかったスカーレットの今生では、全てを知り激怒したヴェンデルと後に成長したスカーレットによって因果を含められ相応の落とし前をつけられる事となった。
- アンプロシーヌ
- シャイロック商会の長女であり、バイゴッド夫妻と手を組んでヴェンデルの愛人となり正室の座を目論む毒婦。コーネリアの命を奪った黒幕の一人。
- 実家は自殺に追い込んだ債務者の骨と肉(更に血と涙も混ざっていると言っても過言ではない)で出来ていると言われる悪徳商会。その生まれに相応しく、流行には些細な漏れもなく記憶しながら実家や自分が踏み躙った人々の怨嗟を歯牙にもかけず覚えもしない悪女であり、しかも奸智に長けながら陥れてなお死者にムチを打つが如く追い詰めることに躊躇もない。上記の目論見もヴェンデルへの愛情はなくただシャイロック商会の更なる発展のために彼の地位を得ることが目的。
- しかし、留まることを知らない悪意故に最期は報いとして魔王と化したヴェンデルに愛人として別邸に招かれ(閉じ込められ)て足の腱を切られ、喉を潰されたままに使用人が彼女の被害者遺族達による恨みと嫌がらせに満ちた手厚い介護生活を強いられた。その生活に怯えながらやつれ果て、最期は惨めに発狂して死亡する。なお、この最期はアリサの「108回」で何度見ても飽きないお気に入りの喜劇でありながら、命が散る楽しみもわからないと同時に過剰な悪意を抑えていれば命だけは助かった逃げ道に気付かない彼女の愚鈍さに呆れている。
- 大学者ソロモン
- 『五人の勇士』のひとり。享楽的なマッドサイエンティスト。「108回」の中では、その深淵たる智慧より至る知略と次々に繰り出す怪しげなアイテムや魔法によってハイドランジア女王軍を追い詰めていった。
- 五人の勇士の中で一人だけスカーレットとアリサの(そして自分たちの)ループに気付いている節がある。そして物語序盤にコイントスで、どちらの陣営につくかを占い、そして今生でもアリサの側につく事とした。
- ジュオウダの魔犬使い
- 第1部(BABY編)に登場する中ボス。かつてクロウカシス地方を根城に暴れまわった乳児連続惨殺犯にして暗殺請負人。王国より派遣されたヴェンデルにより捕縛・投獄された過去がある。また捕縛の際に片目を潰されており、ヴェンデルに深い恨みを抱き復讐に燃える。
- 魔犬使いの名の通り、禁断の(蠱毒的な)魔法によって残虐性を強化された「魔犬」を操る。乳児連続惨殺も自らが育てる魔犬を強化する(まず弱いものを殺すことを犬に覚えさせる)事が基本的な目的だった。
- 上述の通り一度はヴェンデルによって投獄されるものの、「お得意様」であったシャイロック商会の手引きにより脱獄。そのままシャイロック商会の庇護の下、敵対していたオランジュ商会の先代会頭の暗殺を請け負い、のちには彼らの依頼と私怨の合致によってコーネリアとスカーレットの惨殺を目論む。
- また、こうした事情からメアリーの子どもの仇であるとともに、セラフィの父の仇でもある。
- スカーレットと彼女を取り巻く人々によって撃退された後は、魔犬に興味を抱いたソロモンに拾われてアリサの元に連れて行かれた。そして悪のカリスマを全開にしたアリサに屈服し、彼女の元で新たなる魔犬軍団の育成を行うようになる。
- 魔犬ガルム
- ジュオウダの魔犬使いが率いる魔犬。魔犬使いいわく、自身の最高傑作。
- 超弩級の図体を誇り、壮絶な残虐性を持ち、しかも何度でも蘇るタフネスを備え、あまつさえ死んだふりなどまで用いて人を欺く知略すら駆使する犬。
- 第1部(BABY編)最凶のラスボス。なんといってもBABY編下巻1冊分の大部分が、このガルムとの戦闘に費やされるというレベルの、ドしつこい魔犬。
- しかし、その実は魔犬使いによって運命と精神を壊され狂わされて、その残虐性をムリヤリ剥き出しにさせられた哀しき悪役でもあった。その始まりは「自らが愛し慕った母親の生血と死肉を魔犬使いによって強引に喰らわされる」という凄惨なもの。
- その生い立ちから「人間そのもの」「愛された子ども」を深く恨み憎んでおり、その憎しみを晴らすために執念深くターゲットとなったスカーレットを狙う。
- 実は魔法による育成で巨体ではあるものの、実際の心臓は年齢相応の仔犬程度のものであるため、力を全開にした場合には長く活動する事ができないという弱点がある。しかし、上述の怒りと恨みと憎しみで、その弱点すら凌駕して幾度なりとも蘇り続けた。
- アリサ・ディアマンディ・ノエル・フォンティーヌ
- スカーレットと対を成す「ヒロイン」にしてハイドランジアを極悪なる女王より解放せんとする「救国の乙女」として運命付けられた金髪蒼瞳の少女。博愛を唱え、あらゆる者に慈悲を説く。「みんな、かわいそう」が口癖。
- スカーレットとは学校の同級生。そして一方的にスカーレットに懐くアホの子。脳味噌がスワップ気味で性にも奔放だったりするが、その奔放ぶりも「博愛」として捉えられている人物。
- しかし、それらの阿呆ぶりは全て演技。その実態はスカーレットたちと同じループ転生者であり、彼女らのループ転生と破滅を仕組んだ張本人。そしてスカーレットに執着し、彼女の魂から生きる力を抜き去って自らのものにせんと企むアルテマルナティックサイコレズ。しかも、そのルナティックぶりが「困難に晒されあがく魂こそ美しい」「なおかつ困難に潰されて絶望に沈むその瞬間こそ命にとって価値があるもの」(上記のアンプロシーヌの顛末を「108回」の中で飽きない喜劇と楽しむほど)とすらのたまうレベルのドS方向に振り切っている。つまり「好きな子はトコトンまでイジメて追い詰めたい(そして殺したい)」タイプであり、しかも独占欲も相当でスカーレットに近づく者は男も女も親も子も友人も許さないという、それはもう徹底したキレっぷりを披露する。その様は、もはやヤンデレとかクレイジーサイコレズなどというレベルではない。(というか、クレイジーサイコレズなど生温い子どものままごととすら言い切れるレベルの破綻者)
- おまけに一度の人生では習得できない技法諸々をループ転生によって習得して、自らのチートに磨きに磨きをかけきっている。人の心理や欲望を巧みにくすぐって操る手練手管は老練の政治家すら容易く巧みに赤子の如く手玉に取れ、治外の民の武術すら定命では決して届かぬクラスまで極めきり、変化術すらも使いこなし、特に自らが執着しているスカーレットには完璧なトレースのレベルで化けきる事ができる。その強さはもはや人間の枠ですらなく、その上で「108回」の中でアリサの勝敗を揺るがさない範疇で細かいミスや後れを取った経験を教訓に取り続けて圧倒的な強者・超越者でありながら油断や出し抜く隙が削られていくことで、ぶっちゃけ勝てる気がしないレベル。あと本性を現すと言葉遣いの端々が何気にエロい。つまり端的にアッサリ言ってしまえば某シリーズに登場するあの人の同類。