電波オークション後進国
でんぱおーくしょんこうしんこく
電波オークション制度とは
電波の周波数帯の使用権・利用権を、競争入札(競売、オークション)にかけて決定し、落札した企業に与えるようにするという制度であり、「周波数オークション」とも呼ばれている。
このシステムは海外ではすでに実施の実績が存在し、欧米ではほぼ全ての国が導入し、アジアでも半数以上の国が導入しており、2020年には電波オークション制度の設計や実用化に大きく貢献した、アメリカのスタンフォード大学のポール・ミルグロム教授とロバート・バトラー・ウィルソン教授の2人が、ノーベル経済学賞を受賞している。
日本でも元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏や、日本維新の会の足立康史議員などをはじめ制度を推進する人も多く、実は前世紀から長らく検討され続けているのだが、日本では主にテレビ業界から眉唾の如く嫌がられている制度でもある。
この制度が求められる理由
電波は目に見えないだけで、有限な資源で国民の共有財産である。そこで政府や組織などで適正な利用がされることを目的とし、使用される機材や目的あるいは利用者を決定する必要がある。
これらは審査や届け出が必要となり、さらに適正に利用されているか、あるいは違法な利用がなされていないかの調査も必要となる。
そのための財源として建前上、施設、無線機などの利用者から料金を徴収する。これが電波利用料と呼ばれるものである。
この料金に関してはいくつかの問題が存在しているといわれる。これらは国により異なると思われるが、以下の問題は特に日本国における問題である。
更に日本において、テレビ放送事業は大手の新聞社が独占している状態にある。
現在の日本のテレビ局は、ほぼ全てが新聞社の完全な子会社であり、親会社である新聞社が支配しているという構造となっているため、放送の傾向基本的に新聞社のイデオロギー(政治思想)に左右されている。
新聞社は「日刊新聞紙法」によって株式が譲渡されないようになっているため、決して買収されない仕組みになっており、更にテレビ放送事業は総務省の認可を受けなければできず、テレビ局は総務省官僚の主な天下り先となっていることから、地上波放送事業への新規参入が実質的に不可能になっており、電波の権利のほとんどを既存のメディアが牛耳ってしまっている状態にある。
これらは新聞社の最大の既得権(特定の個人・地域・社会的集団がなんらかの根拠に基づいて得ている権益。いわゆる“特権”の一つ)と言われる。
「電波利用料を取られている」とテレビ局は主張するものの、その額は数十億円程度でアメリカと比較すると10分の1にも満たない。
マスメディアはこうした件を自身のクロスオーナーシップ関係や新聞における押し紙などと同じく自らが所有する利権である面から、この件をタブー視して故意に隠蔽・歪曲・捏造など、放送法を無視した偏向報道を行っている現状も存在する(詳細な内容はこちら)。
そのためこの問題を解消するべく、テレビメディアにおける一定の範囲の電波利用権や電波利用料の決定をオークション、すなわち「より多くの現金を出したものが利用できる」制度にしようという流れが存在するのである。
日本国における状況
日本国においては電波の管理は総務省が現在行っているが、この制度は現在実施されていない。
この行為をはじめとする「電波の自由化」に関しては民主党政権時代にも、上述した足立議員らにより政府は実施の意思があったものの、当時は業界や野党、あるいは与党内などの抵抗の存在が強く、進展しなかった。
しかし、安倍晋三首相が率いる自民党政権が制度の導入を検討していることが2017年9月11日に判明し、特定のテレビ局や通信事業者などに割り当てられた「電波利権」に切り込むことで、電波利用料金の収入増や割り当て選考の透明性確保を図ろうとした。
政府の規制改革推進会議でも、同日に公共用電波の民間開放の拡大を議論していくことが決められ、検討は続けられている。
海外における状況
このシステムはアメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、フランス、大韓民国等で導入されており、先進国の多くが加盟しているOECD(経済協力開発機構)の35ヵ国中34ヵ国が導入しており、欧米ではほぼ全ての国が導入済みで、なんと未導入なのは日本だけである。アジア圏での未導入国は日本を除くと、中国、北朝鮮、カンボジア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、モンゴルの7ヵ国で、いずれもまだ民主化されていないとされる国家である(ミャンマーが2016年に民主化されたとされる)。
こうした状況であることから、日本のメディアは世界と比べ電波や放送にまつわる制度が未発達で時代遅れだとして、世界の常識となりつつある電波オークション制度がいまだに未導入な「後進国」という不名誉な称号を送られることとなってしまっている。