最後にひとつ言っておく
『時は加速』する
わたしの能力は……完成したようだ
そしてこれは……おまえたちを始末するための能力ではないし
『最強』になるための力でもない…
この世の人類が真の幸福に導かれるための力なのだ
名を冠するなら『メイド・イン・ヘブン』!!
概要
【破壊力 - B / スピード - ∞(無限大) / 射程距離 - C / 持続力 - A / 精密動作性 - C / 成長性 - A】
漫画『ジョジョの奇妙な冒険 第六部 ストーンオーシャン』に登場するラスボス「エンリコ・プッチ」の最後のスタンド。
緑色の赤ちゃんと融合し、新月の日を待たずしてある特定の重力に位置したことによりC-MOONが進化した。
前半分しかない馬の背中に魔人型のボディがついているようなビジュアルで、所々に時計の意匠が見られるのも特徴。
プッチはこれを【人類を真の幸福へ導く力】と評しており、"世界が一巡した"「新世界」に至らせようとした。
詳しくはエンリコ・プッチを参照。
スタンド名の由来はフレディ・マーキュリーの同名曲からか。
能力
「この世の時間を無限に加速させる」という能力をもつ
メイド・イン・ヘブンによって加速された世界では、人間や生き物以外の全ての物体・現象は加速された時間と同様に時を経るが、生物だけはそれについていく事が出来ず、体感時間で1~2分の間に時計が1時間を刻むなどと言った事が起こる。なお、死亡した場合は生物扱いされなくなるのか、一気に腐敗が進み白骨化する。
(少なくともジョジョ世界の)現在の宇宙は膨張しているが、次第に収束していきやがて「無」となり、また新しい宇宙が生まれ、同じ様な歴史を刻んでいく。これが「一巡」である。
当然ながら宇宙の終わりまで人間の寿命が付いていくなんていうのはどだい無理な話なのだが、これを「人類が生きたまま周りの宇宙の時間を無限大に加速させて、宇宙の終わり→無→新たな宇宙の誕生→新たな現在」まで人類を運ぶというのがプッチ神父の目的である。
スタンドの本体であるプッチ神父だけは例外で、加速された時間についていく事が出来る。
時の加速についていけない人間から見ると姿を追うのも困難なほどとてつもないスピードをもって移動しているように見える。つまり逆にプッチ神父からは他の生物が超スローモーションで動いているように見えている。
このスタンドが加速した状態からの攻撃の殺傷力は恐ろしく、即死級の威力を誇る。
この時を加速させる原理は、「重力」と「時間」の間には特別な関係が有り重力が重いほど時間の進行は遅くなる。神父は全宇宙の「重力」を利用して加速しているらしい(ただし明言されていない)。
メイド・イン・ヘブンの圧倒的な能力により、プッチ神父はエンポリオを除く空条徐倫や空条承太郎ら全ての敵対勢力を葬り去るというかなりの戦果を挙げている。
全宇宙をも巻き込む能力だが、スタンドそのものの攻撃力は中の上程度。
あくまでも「加速した時間についていく」だけでプッチの身体能力が上がるわけではないため、プッチが生身+スタンドでできる範疇を越えたことはできない。ただ、通常倍速とできることが全く変わらないのであれば「加速能力を使用すると運動エネルギー=攻撃力がアップして即死級になる」現象は説明がつかず、運動エネルギーが増えるのなら空気や波がものすごい速度で荒れ狂っていることになり、生物が死滅してしまう。なので加速する前から人を即死させられるくらいの攻撃力があったのかもしれない(パワーCのゴールド・エクスペリエンスが車を何台も吹っ飛ばしたように)。
そして物理現象および自然現象は何一つ変わらずプッチ神父に影響し続けるため、それらに対しては本体である彼とスタンドの純粋な身体的能力だけで対応せざるを得ない。
具体的には生物から離れた物体等なら加速した時間に置かれるらしく、故に飛び道具や投擲武器は通常速度の世界で避ける事と同じ対応をするしかない。作中では徐倫が投げたナイフが顔に命中していた。エンポリオの銃撃は回避していたが、これは徐倫のナイフが視覚外からの不意打ちだった=投げられたナイフはスローにならず、視認できなかったために避ける動作が間に合わなかった一方、エンポリオの銃撃は銃を構えている所を目視していた=引き金を引く瞬間まではスローモーションで見えるために弾道を予測して避けることが容易かったためだと思われる。
また加速時間の中で動くという事は加速についていけない人間よりも有害物質を大量に取り込んでしまうという副作用もあり、これが最終的に敗北に繋がった。奇しくも前の部の中ではそういった空間や肉体に作用するスタンドが多数登場していたので、もしこれらと相対していたら神父にとっては天敵となった可能性もある。
他にも何らかの方法でスピードをそがれてしまった場合も一転して窮地に陥ってしまったり、神父が動ける加速時間にも限界があるようで、作中では最大60倍程度までの加速までなら動くことが可能だが、それ以上の速度には付いていけなくなる模様。どこまでも物質の時間流に「ついていってしまう」のであれば、神父は宇宙が滅ぶまでの何億年、何兆年間もの間待たなければいけない。
このように全く隙の無い完全無欠の能力というわけではない。プッチ神父の言葉通り「最強になるための力」ではないと言えるだろう。
なお、時間を操る能力の一種であるためか、時を止めた世界に入門することも可能で、動く事こそできないが、止まった時の中を視認したり話したりすることは可能。そのためスタープラチナ・ザ・ワールドによる時間停止能力を使っても時が動き出した直後に対応されてしまいやすい。加えて時を止めている間にも時の加速自体を完全に無効化させることはできず、体感的に止めていられる時間が削られてしまう。
また、プッチが緑色の赤ちゃんと融合したばかりで体調不良を訴えていた時に「時を加速させる」能力の前兆は現れていた。スーパーから出た買い物客にプッチが近づいた際、腕時計の針が高速で回転する、指の爪が異様に早く伸びる、買ったばかりの卵からヒヨコが孵る等の異常現象を引き起こした(原作では客が抱えていた赤ん坊の顔が半分おっさんになってしまう惨事も起こしていたが流石にエグい描写の為かアニメでは省かれた)。一連の現象を見て分かる通り、時の加速が生物にまで作用してしまっている為、この時点では「メイド・イン・ヘブン」の能力としては未完成、もしくは制御不能な暴走状態にあったと思われる。
天国へ行く手段
時の加速の延長で宇宙の終焉(特異点)に達した時、すべての生存している生命体が「新世界」の地球へ到着する。
「新世界」へ到着した生命体は、神父が時の加速を始めたケープ・カナベラル以後の出来事をすべて体験・記憶している。
「新世界」では、これから自分に何が起こるかが虫の知らせのように感じることができる。
この出来事を回避しようとしてもそれは運命として固定されているため絶対に不可能である。
例えば、「前の宇宙」で転んで頭を打って死ぬという運命を辿る人がいたとして、その時が来たらなんとなく「自分は転んで死ぬ」という事がわかるが、転んで死ぬ運命を変えることはできない。
しかしプッチ神父の幸福論は「何もわからないまま死ぬのではなく、覚悟を持って死ねるという事は幸福である」というものである。
この幸福論を全人類に押し付ける為に宇宙全体を巻き込んだのだ。「最もドス黒い悪」と言われてもやむなしと言えよう。
ちなみに本体である神父だけは例外であり、その運命を崩す権力を持っている。
なお、「新世界」に到着する前に死亡したものは、新世界では別の人間として存在する。
神父曰く「この能力は最強になるための力ではなく、人類が真の幸福にみちびかれるための力なのだ」と発言している。
余談
作者の荒木飛呂彦曰く、第7部はエンポリオにより一巡が阻止されたことによって再構築された世界が舞台になっているとのことで、事実上6部までの世界は、(承太郎の危惧通り)一人のスタンド使いの力によって滅ぼされてしまう結末を迎えた。また、第8部も第7部と同一の時間軸の物語であることが判明している。
文庫版の後書きによれば、作者は当初このスタンドを「究極のスタンド」「これ以上の能力はない」と捉えていた。「時間が加速し宇宙が無限へと迫っていく」展開は、執筆中の構想では、第6部ひいては『ジョジョの奇妙な冒険』の物語の結末そのものだったそうだ。
しかし、完結直前で「原点に返り、自然から学ぶ新たなジョジョ」=第7部を思いついたことから、宇宙が一巡し新たな世界へたどり着く展開へ変更したとのこと。その為か、シリーズ自体の作風もこの6部から明確に変わっていく事になる。
連載当時は『STAIRWAY TO HEAVEN(ステアウェイトゥヘブン / 天国への階段)』という名前だった(この旧名の方の由来はレッドツェッペリンの同名曲からか)が単行本収録時に現在のものに修正されている。(当時は直近で元レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジの来日公演があったので著作権関係に関して厳しいと噂される氏に配慮したという説があった)
2つの曲にはそれぞれ以下のような特徴があり、どちらもプッチ神父やスタンドとの関係性の深さを感じさせる名曲である。
- レッドツェッペリンの『STAIRWAY TO HEAVEN』は「人の魂が最後に行きつく場所が天国」という曲のイメージがあり、これはDIOが残した「人間の魂・精神の辿り着く場所が天国」という思想に似通ったものがある。また曲全体を通して楽器が少しずつ増えていき、クライマックスで曲が完成するという特徴があり、これも『天国へ行く方法』に通じるものがある。
- フレディ・マーキュリーの『Made In Heaven』の歌詞は「運命」「神の思し召し」といったキーワードがあり、こちらはプッチ神父の思想を体現していると言えるだろう。
よくファンの間では、最強のスタンドという議論をする場で必ずしも名前の上がってくる存在であるが、前述の通り、非自立型スタンド共通の弱点「能力を発動しきる前に本体が死んでは元も子もない」という点は健在。
本編でもエンポリオが土壇場でウェザー・リポートのDISCによって、生物には猛毒である100%純粋な酸素を室内で放出時するのだが、そのことに神父は気づかず加速させ状況を打破させようとするも虚しく敗北してしまう。
そのため老化ガスを放ち周囲の生物を無差別に老化させるザ・グレイトフル・デッドなどのようなスタンドは天敵になりうる。
アメリカで配信されたアニメやゲームでは、大人の事情により名称が『Maiden Heaven(メイデン・ヘブン)』になっており、クイーンの楽曲や本編の内容に則していないと海外ファンからはおおむね不評。(実際どこに乙女=メイデン要素があるのだろう…)
スラングとして
「時間の加速」という能力から、動画媒体での早送り表現・編集をする時に使われる事がある。
関連タグ
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