「感情じゃなく理性で人間の定義に線を引けよ 錬金術師 こいつらが人間とよべるものに還る術はもうないんだから」 ───原作
「人間ってほんと愚かだよねぇ。無駄なことに命かけちゃったりしてさ」 ───FA
注意・誘導
●原作及びアニメ2009年版(FA)→エンヴィー(鋼の錬金術師) 【CV:高山みなみ】
●アニメ2003年版→エンヴィー(旧鋼) 【CV:山口眞弓】
概要
ウロボロスの組織の一員で、『七つの大罪』の『嫉妬』の名前を冠している。
中性的な容姿・服装をしており性別は不明。
作中で言及されないだけでなく、公式設定として性別が非公開にされているが、肉体的に特殊なのかジェンダーの問題なのかは定かではない。
自分の容姿を「かわいい」と称したり、登場済みのホムンクルスの男性陣が皆色めき立っている中に1人だけ参加しないなど、感性は男性寄りでは無さそうな描写はある。
原作では口調がかなり乱暴になる事はあっても所謂男口調・女口調は使用しないため、性別不明に拍車が掛かっている。
それもあってか、一人称には「このエンヴィー」という独特な言い回しを使う。
バリーに評される通りエドと同年代くらいの小柄で華奢な子供のような見た目だが、俳優を起用する実写などのコンテンツでは現在全て成人男性の俳優が演じている。
一見すると明るく剽軽で、人懐っこいようにも見えるが、その性格はラストから「仲間内で一番えげつない」と称されるほどに残忍で狡猾。どこまでも人間という存在を「ゴミ虫」「虫けら」と見下しており、人間同士が争い合う様を嬉々として観察している。
その一方で、危機的状況を脱する為にエドの要請を憎まれ口を叩きながらも受け入れて共闘する時や、その後エルリック兄弟をラースと面会させる前に「お前ら汚いんだよ」と言いながらわざわざ2人にシャワーを浴びさせるなど、それなりに律義な一面も見せている(「FA」版の担当声優である高山みなみの発言より)。
良く言えば純粋、悪く言えば幼稚な側面もあり、人の悪意を読んだり男女の恋愛関係について察するのは苦手な模様。
「三文芝居」にあっさり騙されたり、ラストや大総統や金歯医者は理解していたマスタングとホークアイの関係について全く気づいていなかった。
大総統になる前のラースに恋愛相談をされた際には「とにかく褒めろ」という口説くにはあまりにシンプルな提案をしている。
ホムンクルスの中では特に感情が豊かで、かなり饒舌。
人が決して触れてほしくない所に敢えて触れたり他人の神経を逆撫でする事を好んだりと、やはり評される通り性格が悪い。
普段は飄々とした体を装っているが、自身の容姿に関して触れられると激昂したり、自分が見下されていると感じると怒って冷静さを失い、それが仇となって窮地に陥る事も。
巧みな変身能力を有しており、年齢・性別を問わず、犬や馬などの動物、上腕のみを蛇、果ては鎌などの無機物にも変身出来る。
変身対象にほぼ制限はないが、肉体の状態まで完璧にトレースする能力や、遺伝子情報を基に肉体をコピーする能力と違いあくまでエンヴィーが得た情報に左右されるため、変身時に微細なミスが出ることもあれば、本人しかできない言動や知り得ない情報の提示を求められると応えられずに露見することもある。
故に実質的には変身ではなく変形と言った方が正確か。
実際に、マース・ヒューズを殺害する際、マリア・ロスに変身したが、彼女の左目に泣き黒子があるのを知らずに変身したため、偽者だと見破られている。
とはいえ本人の演技力さえ確かなら、情報収集、詐術、精神攻撃と十分に応用の利く能力であり、前述のヒューズもロスから最愛の妻に姿を変えられた為に、躊躇した隙を突かれて殺された。彼のみならず作中で数多くの人物が彼の変身能力に翻弄され、彼が他者になりすますことで物語が大きく動くこともあった。
前述の通り小柄で細身な体型だが、実際の体重はかなり重いもので、当人の正体が巨体であることを示唆している。
作中の多くの人物の人生を狂わせたイシュヴァールの内乱を引き起こした実行犯であり、公には「アメストリス軍将校がイシュヴァール人の子供を誤って射殺した」ことが内乱勃発の原因として伝わっていたが、実際には「実在するアメストリス軍将校に化けたエンヴィーが故意にイシュヴァール人の子供を射殺した」というのが真相である。
その上エンヴィーが化けた将校は、実際はイシュヴァールへの軍事介入に反対していた穏健派の人物であり、これを邪魔と見做した黒幕達に冤罪を着せられた上に言い訳すらできないまま軍法会議で裁かれ、処刑されてしまった。
言動の悪辣さ・残忍さ、罪状の大きさから言っても作中でも五指に入る悪役。しかし中性的な雰囲気や存在の重要性から人気投票ではホムンクルス達の中で唯一毎回TOP10入り(第1回目:9位、第2回目:5位、第3回目:6位、第4回目:6位)しており、人気自体は高い(他に10位以内に入ったホムンクルスは第4回7位のグリードのみ)。
正体
原作とそれに沿った2009年アニメ(FA)と、2003年アニメで差異がある。
原作漫画及びアニメ2009年アニメ版FAにおける正体と結末
巨大な恐竜のような体の表面に無数の人の顔や体が生えたグロテスクな怪物であり、長い黒髪とホムンクルス特有の基盤模様以外に面影はほとんどない。
核である賢者の石の残量が1になると哺乳類の胚のような姿になる。
この状態ではまともに行動できなくなり、大きさもエドの掌ほどにまで小さくなる。
しかし、他人の肉体を乗っ取って吸収し、直接賢者の石の残量に還元することで元の大きさに戻ることが出来る。
怪物姿の際も、胚のような姿の際も、体色は爬虫類のような緑色をしている。
最終決戦の際、偶然遭遇したロイ・マスタング達に自分がヒューズを殺したことを明かす。
更には彼の死を愚弄し、ヒューズの最愛の妻グレイシアの姿で殺害の手口を暴露しながら嘲笑しマスタングを挑発したことで、本人を含めたほぼ全員からの怒りを買うことになり、大佐からの凄まじい炎の猛攻で半死半生にまで一方的に追い詰められる。
往生際悪くヒューズに変身してマスタングを油断させようとしたり、マスタング本人に変身してホークアイを欺こうとしたりしたが、それらの卑劣な策も通用せず、遂には体を燃やし尽くされる。
本体が残ったところをマスタングにとどめを刺されかけるが、憎しみに囚われる彼を案じたエド達に止められる。
それでも懲りずにエド、スカー、マスタング、ホークアイを十八番の口車で誘導し同士討ちを狙うも既に憎しみを捨てていた4人には通用せず、逆に「人間を嫌っている一方でその人間を羨み、嫉妬していた」という自身の本質を「クソの中でも更にクソみたいなガキ」のエドに理解されてしまい、涙を流しながら自ら賢者の石を剥がして自害する。
その際初めてエドのことを「鋼のおチビさん」ではなく本名の「エドワード・エルリック」と呼びながら消滅していった。
その最期を見届けたマスタングは「自死か…卑怯者め」とやるせなさそうに呟いている。
一見ではエドとマスタングの絆と覚悟によって裁かれ、絶望のあまりに命を絶ったように思える結末。
実際にFAではその解釈で物語は描かれている。
これに関しては腹の中でのセリフの違いが顕著であり、FAのエンヴィーは己の嫉妬心には気づいてすらいなかったという設定なので、末路も変わっているのだ。
しかし原作では屈辱だけではなく理解者を得た喜びも同じく、もしくはそれ以上に深く感じており、「クソガキなんかに理解されてむかつく、それなのにどこか嬉しくなってしまい、結果長年の嫉妬心が解消してしまった」というのが公式の解答。
己を理解してくれたエドを認めて尊敬したからこそ、今際の際に名前を呼ぶ事を選んだ。
つまりはグリードやラースと同じく、己の生まれ持った罪と向き合って解決し、満足して逝った組に入るのである。
2003年版アニメ及び劇場版における正体と結末
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旧鋼(2003年版) FULLMETALALCHEMIST(2009年版)