ザエルアポロ・グランツ
ざえるあぽろぐらんつ
「天才、と言って貰おうか」
「鑑賞会は強制参加だよ」
冒頭ポエム
世界一嫌いだと言ってくれ(原作31巻)
概要
藍染惣右介率いる十刃の一人。虚圏内では、“最高の研究者”や、“あらゆる霊性兵器開発のスペシャリスト”として知られているマッドサイエンティスト。
グリムジョーの従属官であるイールフォルト・グランツの弟だが、兄を「カス」呼ばわりするに飽き足らず『情報収集の為の録霊蟲(ろくれいちゅう)を運搬する箱』とまで蔑んでいる。
上記の言動からも判るが、自分以外のものは基本的に「研究対象」として見下している。
眼鏡のように見えるものは仮面の名残であり、レンズは入っていない。
登場した当初は、藍染の尋問に平身低頭して答える謙虚な姿勢を見せていたが、阿散井恋次や石田雨竜と交戦する頃には、冷酷無慈悲なマッドサイエンティストとしての本性を余さず発揮する。
雨竜が『希少種の生き残り』だと知るや狂気的な笑みを浮かべて歓喜したり、恋次の捨て身の戦法によって傷を負わされた際には、改造した部下を平然と貪り食って回復するなどした。
それを見た雨竜からは「バケモノ」と評されるが、当のザエルアポロは「天才、と言って貰おうか」と返している。
そして着替えを終え、帰刃『邪淫妃』の能力によって恋次と雨竜、ペッシェ、ドンドチャッカの4人を弄ぶが、尸魂界からの援軍として涅マユリが現れ、マッドサイエンティスト同士の対決となる。
彼の能力は雨竜の身体に仕込んでおいた監視用の菌を通してマユリに対策を立てられており、涅ネムを触手で捕らえて人質にするが、直後にマユリが発動した卍解『金色疋殺地蔵』に喰われる。
しかし、捕らえていたネムに「受胎告知」を使って復活、更に自分を喰った金色疋殺地蔵を操ってマユリを襲わせるが、金色疋殺地蔵はマユリ本人に攻撃すると自爆するようになっており、ダメージを与えられなかった。
更に、ネムの体内に仕込んであった「超人薬」を接種してしまい、1秒が100年にも感じられる感覚に陥ってしまう。肉体の動きが感覚に追い付かなくなったザエルアポロは、心臓に刀が刺さるまでの数秒間を、何百年にも感じる苦痛を味わいながら死亡した。以降、原作での出番はない。
アニメではアーロニーロと共に地獄に落ちていた事実が判明。地獄の住人である朱蓮と戦闘になるも敗北。その後の動向は不明だったが……。
最終章・千年血戦篇では、ネムを喪ったマユリの見た幻影として現れ、かつて科学者として「完璧」を厭悪していたにもかかわらず、ネムを「完璧」だと思い始めていたマユリの怠慢と矛盾を嘲笑う。
このザエルアポロは彼本人ではなく、あくまでマユリの見た幻影に過ぎなかったが、マユリはこの幻影をきっかけにネムの死を嘆くのをやめ、自ら進化する魂魄を新たに作り直そうと決意する。
帰刃:『邪淫妃(フォルニカラス)』
解号は「啜れ」。
帰刃の際には刀を飲み込む。
帰刃すると、首から下が触手に覆われてドレスのような服に変化し、背中に四本の羽が生える。眼鏡が飾りに変化し、道化師のメイクのような仮面紋が現れる。
- 2体の巨人を従える
服に接続された2体の巨人を操る。巨人は普段は服の中に収納されている。
- 相手のクローンを生み出す
身体から血液のような液体を噴き出し、触れた相手にそっくりなクローンを作り出す。クローンは目元の模様と髪質の違いで区別できる。また、体色や服装も自分の意志で変えられる。
- 「球体幕(テロン・バロン)」
羽で自身の全身を包む防御技。
- 「人形芝居(テアトロ・デ・ティテレ)」
羽で相手を包んで、相手の人形を作り出す。人形の中には内臓や腱のパーツが入っており、パーツを破壊するとそれに応じた相手の内臓も潰される。
『ドラえもん』の秘密道具「のろいのカメラ」が元ネタと思われる。
- 「受胎告知(ガブリエール)」
相手に自分を孕ませる能力。ザエルアポロが最も自慢にしている能力。自身が死亡した時に備えてのバックアップ用の技で、予め相手のへそに触手を挿して内臓に卵を産んでおく。そして、自身が死亡した際に自動発動する。その能力は母体のすべてを吸収して成長し、口から這い出し生誕の時を迎える。技の発動後、母体は干からびた遺体になり、ザエルアポロ曰く「干からびたベーコン」。能力解説しながら成長していく描写は狂気そのもの。記憶は本体からそのまま引き継がれている模様。そのため、生誕とされるもののザエルアポロの子供でも分身でもなく、実質的にはザエルアポロ本人が蘇生しているのと大差ない。
そのままの設定だと流石に倫理的にマズかったからか、アニメ版では大人の事情で相手の毛穴から侵入し、口から出た煙の中で細胞分裂をしつつ霊圧を吸収する設定に変更されている。その為、アニメ版では母体(ネム)は干からびたベーコンにはならなかった。ザエルアポロ曰く「蝶が孵化した後の繭」。ちなみにやられている時のネムがものすごくエロく描かれている。
- 相手を操る技
自分を食べた敵を操る能力。
ザエルアポロが改造した虚を破面化させた者達。多数存在し、全員が胴体に縦三本のラインが入った服を着ている。ザエルアポロ自身の回復薬を兼ねており、負傷しても従属官を齧り(アニメ版では規制が入り光球に変えて飲み込む形に変更)回復する。
- ルミーナ、ベローナ、メダゼピ
名前が判明している従属官。メダゼピは雨竜の矢で戦死、ルミーナは回復薬としてザエルアポロに食われ、ベローナは帰刃後は登場していない。
詳細はリンク先を参照。
過去(小説版ネタバレ)
実は元第0十刃(セロ・エスパーダ)で、ヴァストローデ級の大虚であった過去が明かされる。全盛期の実力は完全虚化した一護と同格とされ、現在の実力を遥かに超える最強の虚であった。
生前は残虐な人体実験を繰り返していた錬金術師で、将軍である兄から敗残兵を送られては実験の材料にしていた。
ある日、工房の地下が死体で埋め尽くしかけた頃、彼らが殺した何百何千もの人間の魂が、虚と化して彼等を工房ごと押し潰し殺害する。兄弟は共に魂魄と化すが、現状を瞬時に理解し狂喜しながら兄の喉を噛み切り、魂を啜り取り込み、自らも虚と化して自分達を殺した虚を全て喰らい尽した。
その後は虚圏に行き、他の虚を喰らい続けた結果、人の姿を取り戻しヴァストローデ級となる。普段は冷静沈着な学者であったが、戦闘になると精神が必要以上に昂り、相手を粉々になるまで破壊し尽くす戦闘狂の一面を有していた。
しかし、科学者であるザエルアポロは最強の力には執着しておらず、かねてからの夢である「完璧な生命」を得る為に最初に食らった兄を体外へと分離させる。これにより大幅に弱体化して、十刃の座を追われたが、前述の「受胎告知」を獲得して念願を叶えた。
余談
リアルタイムでの戦闘期間はなんと一年にも及ぶ。
間にアーロニーロ戦、ウルキオラ戦、グリムジョー戦、ノイトラ戦、ゾマリ戦などが挟まっているとはいえ、それでも物凄い長さであった(それらを除いてザエルアポロ戦のみで数えても約4ヶ月の長さはある)。
「やったか!?→やってない」の演出が何度もあることもあり、一部では「ザエルアポロ戦は、ザエルアポロの強さではなく、いつ終わるんだよという意味で絶望感があるバトル」などと皮肉を言われるほど。
これまでも幾度となく存在感を出していたが、連載完結後に発表された続編において、地獄の獄吏として復活する衝撃的な再登場を果たした。
体に有った筈の穴は体の外に出ている等、デザインが大きく変わっており、地獄の鎖を用いた攻撃を行うと戦闘スタイルも変化している。
かつて戦った恋次の前に現れるが、雨竜やマユリがいない事態に若干不満を漏らしている。
千里眼を有しているようであり、初対面である阿散井苺花を彼の娘であると見抜き、娘ごと恋次を殺そうとする。間に入った黒幕一護と交戦。
ザエルアポロ「殺すぞ黒崎一護ォ!!!」
一護「誰だてめーは?」
※破面篇を読み返すと分かるが、一護とザエルアポロは一度も本篇で会っていない。そのため、ここが初対面である。
戦闘中、一護に地獄についての真実を伝え精神的な揺さぶりをかけるが、突如地獄の門から現れた巨大な双魚理によって胸を貫かれ、再び地獄へと連れ戻される。彼の告げた衝撃的な真実と意味深な言葉は、新たな章の幕開けを予感させている。