概要
作中にも現世、いわゆる"天国"にあたる尸魂界と並んで地獄は存在するが、原作およびテレビアニメ版では初期に"門"が出現した以外は登場も言及もなく、ストーリーも尸魂界、現世、そして虚や破面が普段住んでいる虚圏の3つの世界で展開された。
ただし、原作初期からその存在が仄めかされていただけにそれなりの構想はあったらしく、2010年公開の映画『地獄篇』では主な舞台となり、原作最終話後を描いた2021年掲載の読み切り版『獄頣鳴鳴篇』でも言及されている。
なお原作およびメディアミクス版(アニメ・映画)共通して、各地の宗教や神話、他作品で定番の閻魔大王的なキャラクターは(現時点では)いない。
原作における設定
時期によって設定がだいぶ異なるので、以下発表順に分けて解説する。
初期(死神代行篇)
死神代行篇にて、生前殺人鬼だった虚・シュリーカーを倒した後に巨大な門、および番人・クシャナーダ(の腕と顔)が登場。シュリーカーを刀(?)で突き刺し、連行していった。
虚(および虚が変質した破面)は死神に倒されると、虚になってからの罪は斬魄刀により浄化されるが、生前の罪に関しては浄化されず、大罪を犯した極悪人は地獄に堕ちることになる。複数の魂魄が融合している大虚や破面の場合は主導権を握っている魂魄の生前の罪によって地獄に堕ちることになると思われる。地獄に堕ちたザエルアポロ・グランツやアーロニーロ・アルルエリの死亡の際の描写や地獄に来た際の描写から、普通の虚のように番人に刺されて連行される事はないらしい。
この時はいわばもう一つの"あの世"とされ、現世に対する天国(尸魂界)と地獄、というような位置づけだった。
また朽木ルキアの説明によると、死神から監視はされているが管理下には置かれておらず、また関与を厳しく禁じられているため、地獄の詳細を知る者は少ないということだった。
なお、生前の罪業で判断される為、極悪人の整が魂葬または成仏した場合も地獄に行くと推察されるが、虚のように連行されるのかは不明。
原作終盤(千年血戦篇)以降
最終章・千年血戦篇にて、これまで舞台となった現世・尸魂界・虚圏をまとめた用語「三界」が登場。
作中世界の魂魄やいわゆる輪廻転生のバランスはこの三界の均衡で成り立っているとされ、地獄の位置づけがやや不明瞭になった。
この流れを汲むスピンオフ小説『Can't Fear Your Own World』でも「三界の均衡」がメインテーマとなっているが、五大貴族のうち未登場の一族の始祖が三界創世の動機として「後に地獄と呼ばれる孔をふさぐ、蓋となる世界を求めた」という形で言及はされている。
その後、連載終了後から数年が経った後に特別読切『獄頤鳴鳴篇』において、地獄の役割が「生前に罪を犯した魂を収監する」だけではないことが判明した。
それは、護廷十三隊の隊長達を死後捕える事。
本来、尸魂界の住人が死ぬとその肉体は霊子へと分解されて尸魂界の大地へと還元するのだが、隊長を務めたレベルの死神の場合、その肉体を構成する霊子一つ一つの霊圧濃度が高すぎて、還元することが出来ないのである。
なおこの濃度の違いについては、原作初期に「○等霊威」という用語で示唆はされていた。
また敵として映画の序章と同様に堕ちた後のザエルアポロが登場したが、「クシャナーダ」「咎人」といった単語は登場せず、彼の口から千里眼を持つ「獄吏」という立場が明らかになり、虚に似た「餓鬼」を引き連れている。
そして終盤、原作初期のシュリーカーと同じ構図でザエルアポロを貫いた刀は…
つまり地獄は死んだ隊長達の霊子で構成されているという叫谷と酷似した世界と思われ、この仕組みが前述の「三界が"蓋"となって抑える"孔"」としての役割に関わってくるものと考察されている。
クシャナーダの正体は死亡した隊長格が生前所持していた斬魄刀なのかもしれない(なお、シュリーカーを倒したクシャナーダは黒縄天譴明王を髣髴とさせるデザインをしている)。
アニメ版(劇場版BLEACH)における設定
劇場版作品の一つ、『劇場版BLEACH 地獄篇』では前述の地獄の門の中の世界が全編にわたって舞台となった。
現世で大罪を犯した極悪人の堕ちるもう一つの「あの世」。
※虚や破面は死神に倒されると、虚/破面になってからの罪は償われるが、生前の罪に関しては一切ノータッチ。その判断を下す所謂「閻魔大王」的な人がいるのかどうかは不明。
護廷十三隊のような行政機関は(劇中では)登場せず、クシャナーダの圧倒的な暴力が支配する無法地帯となっている。
内部は猛毒の瘴気が充満しており、生物ならば死にかねず、整や死神でも正気を保っていられないという。瘴気だけに。
また、この瘴気は潜在能力解放の作用もあるため、その影響で、一護は意思に反して虚化・完全虚化している。
階層
- 地獄の門
原作2巻で初登場した、巨大な骸骨が象られた門扉。ここからクシャナーダは亡者を捕らえ、地獄に堕とす。
朱蓮たちはこの門を破壊し、瘴気を一気に現世に流し込み、その気に乗じて現世に脱走するつもりだった。瘴気が全て流出すれば、やがて地球(現世)総てが地獄となる。
クシャナーダが開けた場合は地獄の門が出現するが、咎人が開けた場合は黒腔のような穴の形で現世と繋がる。
一護達はコクトーの案内で地獄に来たため、当初は後者の形で地獄に潜入した(中盤からは前者の形になるが)。
穴の開け方や穴の中の構造は作中の描写が一切ないため不明。
- 第1階層
地獄の門、あるいは強引に現世から抉じ開けた孔から侵入した場合、最初にここに辿り着く。
血のように赤いどんよりした空の下、虚圏を思わせる白い柱が無数に立ち並び、その隙間を青い道路が走っている。
ここにいる咎人は下の階層からの脱走者であり、クシャナーダとの戦いで心が折れ、廃人と化して嘆き続けているいわば「負け犬」。ひとたびクシャナーダが現れれば、泣き叫び、逃げ惑うばかり。いずれ殺され下の階層に堕とされてしまうのだ。
- 第2階層
第1階層から開いた地割れの奥底にある。
菫色の空が広がり、全体が鏡のような濃紺の毒水で覆われている。その中にポツンポツンと蓮の花のような形の巨大な岩が浮かび、クシャナーダの遺骨が納められている。
- 第3階層
第2階層の海を抜けた底にある。
周囲は岩場がゴロゴロしている荒れ地が広がっており、強酸の湖や滝が点在している。その先には広大な砂漠が広がっているが、その砂の原料はクシャナーダに殺され続けて形を失った咎人の成れの果てである。
その砂漠の果てに存在するマグマが燃え滾る窯の中で、地獄で死んだ咎人は業火に焼かれながら再び肉体を得る。朱蓮たちはここに居を構え、一護を待ち受ける。
- 最下層
砂漠の下に存在する、分厚い雷雲の下に隠された真の最下層。ここにはクシャナーダの巣がある。
第3階層の窯から吹き出すマグマが湧き出ている火山脈で、最終決戦の場となった。地獄に堕ちた者はここで腐るのを待ち、咎人となって第3階層の窯から再び生を受け、そして死んでいく。