概要
ステルス性能(レーダーに探知されにくくする機能)を持つもの。
第5世代戦闘機にはアフターバーナー無しでのスーパーソニッククルーズ(超音速巡航)と共に欠かせない機能である。
(ちなみにアフターバーナーの炎も僅かにレーダー波を反射するという)
「ステルス」の実際
『レーダーに映らない=探知されていない』と認識される事が多いステルス機であるが、
実際には『レーダーに捕らえられてるが、電波の反射が小さすぎて飛行機と認識されない』
というのが正しい。
通常レーダーは「電波を発信して、跳ね返ってきた電波を受信」して、レーダースクリーンに像として表示する。
帰ってきた送信波の量によって対象の位置や大きさを判断するのだが、ステルス機の場合、
発信された「電波を吸収」「レーダーとは別方向に送信波を反射させる」事によって、
受信波の量を少なくする=実際よりも像を小さく見せている。
(=小さい物に見せかけている)
すると飛行機を小さい像(=虫や鳥の群れ、もしくは「ゴースト」という)として認識してしまうため、
無駄を省くため(もしくは性能の限界のため)にレーダーの画面から省かれてしまう。
これがあたかも映らないように見えるのである。
いくらステルス機といえど、レーダーに近づけばそれだけ反射する量も増えるため、いつかは探知されてしまう。
航空機におけるステルスとは『レーダー探知範囲を大幅に縮小できる機能』といえる。
ゴースト
つまり、『航空機の幽霊』という事である。
航空機として探知しているのに、実際には存在しない航空機を表示する事から。
Bistatic Radar
なお、通常の「発信と受信を1台で行うレーダー」に映らないのであって、
バイスタティックレーダーと呼ばれるレーダーでは、
「発信と受信をそれぞれ離れた場所で別に行う」ため、
ステルス機であろうと捉えることは可能となっている。
ただしこのレーダーは技術的困難や、
何よりも「2台必要になるので、レーダー施設が大がかりになる」という短所がある。
PAK-FAやSu-35Sでは機首だけでなく主翼にもレーダーを内蔵することで限定的ながらも可能とする(予定)。
ステルス塗料について
フェライトのようなステルス性を付与することができる炭素系塗料もあるが、
実際のところはないよりはマシ程度のものである。
また飛行後に剥離した部分を塗装し直さなくてはならない為、
(空気との摩擦やらで結構剥がれる。超音速飛行だと尚ひどくなる)
塗料と手間ぶんのコスト高にもなるので、基本的にステルス性能は機体形状が大部分を占める。(それでも塗りなおさないわけには行かず、ステルス機の整備コストの増大を招く事となる)
フェライト塗料自体も、
もともとは日本の巨大つり橋(瀬戸大橋など)が船舶レーダーに巨大な像を映し出し、
「橋の向こう側が判らない」という事態を抑えるために作られたもの(対策)であり、
そもそも戦闘用に開発されたものではない。
ステルス設計の理想
設計思想としては、
- レーダー反射断面積(RCS)を少なくする。
主に主翼(の付け根)がRCSを大きくさせる要因である。
主翼の付け根は胴体と形状が交わる部分のため、レーダー波をよく反射するのである。
これは、機体の機動性向上とは逆行する。
従って前進翼やカナード(前翼)も不利である。
B-2爆撃機のように尾翼を無くした例もある。
- レーダー波を吸収する機体塗装。
- ミサイルなどの兵器を本体の格納庫(ウェポンベイ)に格納する。
・・・などがある。
初期ステレス機
第二次世界大戦の頃から八木アンテナによってレーダー技術が向上し、実用化されたが、
イギリスで物資不足から合板によって作られた戦闘機デ・ハビランド・モスキートが結果的に、
レーダーに探知されにくいことが判明。
これを受け各国でレーダー対策として木製戦闘機の開発が急がれたが、
本格的に実戦使用可能な木製戦闘機はごく一部を除いて開発されないまま終戦となった。
冷戦を通して研究開発が続いてF-117ができたが、
戦果は上がらなかったが、レーダー探知が困難であったと米軍側が記録している。
また北朝鮮は「自国のステレス機」として木製複葉機を現代でも配備している。
主なステルス機
【アメリカ】
・F-117(初の実用ステルス機)
・F-22
・X-32
・F-35
・B-2
・A-12「アベンジャーⅡ」
以下は限定的なステルス性をもつもの
・B-1
【ロシア】
以下はステルス機であるとアナウンスされていない航空機。どちらも試作機の枠を出ておらず、形状から推測するにいたるのみ。フィクションなどではステルス機扱いの場合がある。
【日本】
・F-2(かなり限定的なステルス性であり、F-16に比べればマシという程度のもの)
・心神
【中国】
・J-20