凶暴に暴れ回るツルク星人の前にMACの攻撃は一溜りもなかった。
その頃、ゲンはツルク星人の二段攻撃を破るべく、
滝を敵に見立て三段攻撃をマスターしようと懸命になっていた。
だが、流れ落ちる滝を斬ることは可能であろうか?
がんばれゲン!がんばれレオ!!
さあ、みんなで見よう!!!
放送日
1974年5月3日
登場怪獣
奇怪宇宙人ツルク星人
前話のあらすじ
深夜、東京の街に次々と起きた奇怪な事件。
人間が真っ二つにされ、必ずウルトラマンレオの彫られた金属片が落ちていた。
ダンはそれが、ツルク星人の仕業だと見破ったのだが、
星人を倒すには三段攻撃しかないとゲンに特訓を命じた。
しかしその最中、巨大化して現れた星人の前に東京は全滅するかに見えた。
堪らずゲンは、ウルトラマンレオに変身した!だが…
STORY
カラータイマーが明滅し、ツルク星人の一撃にレオは海中に没した。
レオの敗北に悔しがるトオル。ダンも茫然とする。
大量の泡が立ち、やがてそれらは収まり水面は静かに波打つ…
トオル「カオル!父さんを殺したのは、アイツなんだ!」
カオル「じゃあウルトラマンレオじゃなかったのね!」
ツルク星人は邪魔者を討ち取ったとばかりに勝ち誇り、意気揚々と暴れ回る。だが、そんなことは許さない男がここにいた。
ダン「むざむざ負けてなるものか…見てろ!」
ウルトラセブンのテーマが流れる中、ダンは搭乗したマッキー3号のミサイルで星人に集中砲火し、目論見通り星人は3号に狙いを定める。
マッキー3号は電線地帯の上空で静止し、星人の攻撃を見計らって離脱。誤って電線に触れてしまった星人に高電圧が流れる。苦しむ星人の姿にトオルがはしゃぐ。
トオル「いいぞ、死んでしまえ!父さんの仇だ」
星人を追い払うことに成功したダンだったが、その顔は暗いままだった。
その後、MACやスポーツクラブの面々が海岸にてゲンの捜索を行うが、ゲンの名をいくら呼んでもそれに返ってくる声はない。
彼方に燃える夕陽を見つめながら、ダンはゲンに思いを馳せ、無力感を胸にその場を後にした。
その後、MACの隊員達も任務につくためか基地に帰還し、残ったスポーツクラブの面々だけでゲンを探し続けるものの、一向に見つかる気配は無い。まだ幼いカオルの体力も限界だった。しかしトオルは…
猛「どう?」
百子「ううん…」
カオル「お姉ちゃん、もうあたし歩けない…」
百子「しっかりして…!」
猛「もう3時だ…君たちの気持ちもわかるけど、できる限りのことはやったんだ、帰ろう」
トオル「やだ!僕は帰らない、おおとりさんは生きてるかもしれないじゃないか!」
猛「僕だってそう思いたい、しかしな…!」
トオル「僕の周りの人が皆いなくなるなんて、僕は、僕は…!」
猛「…もう一度だけ探してみよう!」
その頃MAC本部では、浮かない面持ちのダンが席に座り込んでいた。白川隊員に明るくなり次第パトロールを強化すると報告され、星人は必ずまた来る、厳重にやれと伝える。
ナレーション「ダンは、失った右脚と変身能力に変わって、自分の手となり足となり、一緒に命を懸けて戦ってくれた唯一人の男、ゲンのことを思うと堪らなかった…」
今度ツルク星人が現れれば、自分が死ぬ番だと覚悟を決めるダン。ふと、飾ってあった花の花びらが舞い落ちる。ダンの脳裏にゲンと語り合った時の会話がよぎる。新たな故郷の地球で喜びに満ち溢れていたゲンの笑い声が…
その時、突然一報が入る。受話器を取ったダンは、驚愕に顔を強ばらせた…!?
ダン「はいこちらMAC本部…なに!?
ゲンが生きていたんですね…わかりました、すぐ向かいます!あいつ…!」
ゲンはスポーツクラブの仲間達の必死の捜索の甲斐あって、生きて保護されていた。明け方の街をゲンの自宅へ急ぐダンの杖の音が鳴り響いていた。
ゲンは大村も加えたスポーツクラブの面々に看病を受け、元気を取り戻し、意識が回復。直後にダンもそこに駆けつけた。ダンはすぐさま、ゲンに一緒に来いと言い出す。
百子に引き止められ、トオルとカオルに非難されても、ダンの心は変わらない。その決意に満ちた眼差しに、ゲンも起き上がり、稽古着を持って同行。
ダンがゲンを連れてきたのは滝壺だった。ダンはゲンを叱り付ける。
ダン「何故変身した…何故変身したと聞いているんだ」
ゲン「MACが全滅しそうだったんですよ!」
ダン「余計な事を言うな!MACには私がいるんだ、何故私の言う事を聞かない!星人はもうすぐ戻ってくる、今度は電気ショックなど通用しないだろう…この貴重な時間をお前は無駄に過ごしてしまったんだ!何かといえばウルトラマンレオに変身するお前の心を許せない…変身する前に必要な事をお前は忘れてる!」
ゲン「変身前にする事?」
ダン「技の完成だ、この滝の水を斬れ!」
ゲン「えっ、この水を?」
ダン「やるんだ、お前ならできる!この水をヤツの手刀だと思え」
するとダンのマックシーバーに連絡が。東京JR地区にツルク星人が現れたのだ。
ダン「了解、すぐ私も行く!いいか、その技を覚えるまで来るな」
ゲン「MACは!?」
ダン「余計な事を考えるな!早く練習しろ」
ゲン「はいっ!」
(Aパート終了)
美しい地球を守るため、熱い瞳見交わしマッキー2号と3号が空に飛んで行く。ビルを一刀両断し暴れるツルク星人に一斉射撃を開始した。ゲンも滝に打たれながら、必死に訓練に励む。次第に2号は2機に分離、ダンの乗った3号と共に3機での攻撃に移る。地上からもマックロディーが攻撃をかけていた。
マックロディーから降りた赤石はダンの命令通りパニック状態の市民に落ち着いて避難するよう呼びかける。一方トオルは、父のみならずレオまでツルク星人が殺してしまったと憤る。するとツルク星人は、両手の剣を併せてスパークさせると、なんとそれに触れた鉄骨ビルを溶かし始めた。
ナレーション「ツルク星人は、丁度バッテリーに充電する様に、電気ショックの電流を身体の中に溜め込んでしまっていた!」
復讐心に駆られて星人へ突っ込んで行くトオルと、それを食い止める猛。百子とカオルも引き止めようと呼び続ける中、段々とトオルと猛に近付くツルク星人。二人を助けるべくダンは、ここでついにあの技を使う事に。
ナレーション「トオルと猛のピンチを見て、最後の切り札・ウルトラ念力の体勢に入った!」
念力を受けてふらつく星人。やがてバリアの様なものに閉じ込められたツルク星人は姿を消した。星人を撃退しつつも激しい疲労に襲われるダン。
ナレーション「ウルトラ念力に全精力を使い果たしたダンは、薄れた意識の中で敵に向かうゲンの姿に最後の望みを託した。ウルトラ念力では、敵を倒すことはできないのだ」
ゲンは特訓に励んでいたが、星人を倒す技を編み出せないことに激しく嘆き、叫ぶ。
ゲン「できない…!俺には出来ない!!ちくしょう…!!俺には出来ない…出来ない!できないっ…!!」
そうしてふとゲンが振り向いた次の刹那、ダンの杖が投げ込まれる。空中でそれを掴んだゲンの前には、著しく体力を消耗したダンの姿があった。
ゲン「隊長!」
ダンはゲンに近づくが、倒れてしまう。慌てて手を貸そうとするゲンだがダンに拒まれる。
ダン「ゲン、俺は!うっ…」
ゲン「隊長!隊長、しっかりして下さい!!大丈夫ですか!?隊長…!またウルトラ念力を!」
ダン「うるさいっ…!」
ゲン「あれを使うと命が縮むんでしょう、やめて下さい!!」
ダン「バカヤローッ!!!」
ゲンにビンタを食らわすダン。いくら気遣われても今のダンは嬉しくなどないのだ。
ダン「人のことなどどうでもいい、お前は何故俺の言われた事をやらん!?」
ゲン「僕には出来ないっ!!」
ダン「お前がやらずに誰がやる!お前の涙で…ヤツが倒せるか?この地球が救えるか!?皆必死に生きているのに…挫ける自分を恥ずかしいと思わんか!!やるんだ…もう一度やるんだ!!!」
ダンに厳しくも勇気付けられたゲンは強く頷き、練習を再開。だがツルク星人も復活し、ダンは行かねばならなくなる。去りゆくダンは最後にゲンにアドバイスを残した。
ダン「川の流れは絶える事なく終わりのないものだ、流れが目で見えなければ水を斬ることは出来ない!いいか、流れに目標を見つけるんだ!」
ゲン「流れに目標を!?」
ダン「そうだ!早く掴んでくれ、それまで私が星人を食い止めておく!」
ゲン「はい!!」
マッキー3号と戦いを繰り広げるツルク星人。マックロディーで駆けつけたダンもマックガンで単身攻撃。
ダン「来るなら来い!」
ツルク星人はダンを標的とし、徐々に迫り来る。懸命に剣撃を避けつつも、ダンは追い詰められてしまった。
その時ゲンは、滝を流れる"ある存在"に目をつける。
ゲン「これだ…桜の花びらだ!流れに目標があったぞ!!」
ゲンは桜の花びらを目印に手刀を放ち、間髪入れずに蹴りを叩き込む。滝の流れは文字通り、一瞬だけ真っ二つに切り裂かれた。
ゲン「やったぁぁぁぁぁ!!…レオッ!!!」
誰かが行かねばならぬ時が遂に来た。ゲンはレオとなって荒れ狂うツルク星人の前に立ち塞がる。レオは戦いの構えを取り、その前身を、そして両腕を赤く輝かせる。
カオル「お兄ちゃん、またウルトラマンレオよ!」
トオル「うん、レオは生き返ったんだ!!」
既に一度負けた時のレオではない。巧みに攻撃を躱し、受け止め、鋭い打撃や投げ技を打ち込む。心身共に成長したレオにとって、ツルク星人など最早相手にならなかった。
技が悉く効かないばかりか、目まぐるしく動き回って襲い来るレオの前にフラフラになるツルク星人。その時レオは、特訓した手刀でツルク星人の両腕を斬り落とした。
そして続け様にキックを放つ三段攻撃により、両手を失ってバランスを崩した星人は仰向けに倒れ、もがく。
しかし、星人の胸に斬り裂かれた二本の両腕が落下。同時に激しい電気ショックがツルク星人に走る。
幾多の命を奪った通り魔に引導を渡したのは、他ならぬ星人自身の剣だった。
悪魔の様なツルク星人との戦いは終わった。百子はアパートを引っ越し、トオル、カオルを引き取ることに決めたという。ゲンは二人に遊びに行くと約束し、兄妹は大喜び。猛に呼ばれて三人は帰って行った。
ダン「お前が彼らに喜びを与えたんだ…!行こうか」
ゲン「はい!!」
笑顔で帰る二人を祝福するかの様に、桜の花が風に乗って舞っていた。
余談
ツルク星人は終始巨大化後の姿であり、等身大の姿は登場しない。
本話以降、4話連続でサブタイに「男」とつく。
MACのマーチが流れた唯一の話でもある。
滝を斬るシーンは真冬に撮影され、真夏竜氏は肺炎を起こしかけた。
ダンとツルク星人が戦ったロケ地は『ウルトラマン』第32話、『帰ってきたウルトラマン』第14話、最終回、『ウルトラマンA』第18話、『ウルトラマンタロウ』最終回、『ウルトラマン80』第12話、『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティスTHE FINAL BATTLE』、『ウルトラマンマックス』のDASHの基地、『ウルトラマンオーブ』最終回など多く使用されたお台場晴海埠頭である。ちなみにダンを演じた森次晃嗣氏は『マックス』第19話にゲスト出演しており、DASHの基地を訪れている。
『ウルトラマンメビウス』第34話にて、ゲンはヒビノ・ミライにダンの教えと同様の台詞を語り、この時のものと思われる道着を渡している。