曖昧さ回避
概要
原油から精製される化石燃料の一種であるケロシンを、ストーブやランプ用に調整した石油製品。ケロシンは"軽油より軽くガソリンより重い"とされるが、主成分の炭化水素の炭素数は軽油に重なり、ガソリンよりは軽油に近い性質を持つ。
ガソリンよりも引火しにくく安全性が高い上に軽油より揮発性が高いため、暖房器具(石油ストーブやセントラルヒーティングなど)の燃料としておなじみ。また、工業用や産業用途として機械の洗浄や溶剤にも用いられる事がある。
なお、石油製品は"LPG(プロパンガス)<ナフサ(ガソリン)<ケロシン(灯油)≦軽油<重油<アスファルト"の順に重質化する。
ガソリンは灯油よりも揮発性が高いことから、灯油ストーブにガソリンを誤給油すると燃焼しているうちにガソリンが揮発し、ストーブが炎上・爆発することがあるので非常に危険。軽油を誤給油した場合は炎上することはないが、灯油より重質成分が多いので不完全燃焼で大量の黒煙を出し、一酸化炭素を発生させる恐れがある。
ジェット燃料としてのケロシン
ケロシンは気圧差に左右されにくい特性を生かしてジェットエンジン向きの燃料として調整され、飛行機の燃料にも用いられている。ジェット燃料は基本的に精製度の高いケロシン(≒灯油)だが、ワイドカット系と呼ばれる物はナフサ(ガソリン)を混ぜている。
余談
ポリタンク
なお、給油時にポリタンク(携行缶、一斗缶)へ入れる事から世間では"灯油=ポリタンク"というイメージが強い。
使われるポリタンクは青と赤があるが、これは基本的には地域性による。中部地方から西と北海道では染料が安く大量生産に向く青色のタンクが、東海地方から東北地方では警戒色による注意喚起として赤色のタンクが使われることが多い。
灯油のポリタンクは不透明のタンクである事以外には規定はないが、白色と緑色は使ってはいけない。白色は非常時用の確保飲料水、緑色は軽油のポリタンクとして定められているためである。
法律上の規定
ストーブの燃料として冬場には日常的に使用されるので忘れられがちだが、灯油は消防法で規定される乙種第4類(引火性液体)第2石油類に該当する危険物である。運搬・保管にはこの法律に規定される設備・器具(保管場所と規格容器)が必要だが、規定の量を超える運用を実行する場合は危険物取扱者の国家資格も加わる。
各国の事例
アメリカ合衆国
アメリカには北東部家庭用ヒーティングオイル備蓄が存在し、アメリカ北東部でヒーティングオイルを使用する約530万世帯の家庭の為に備蓄している。これは民間の石油企業が供給の途絶・寒い冬による一時的な需要の増加に対処する為の十分な余裕を確保する一方で、価格の上昇とそれによる供給力の増強を抑制してしまうほどの過剰な量とはならないように意図したものであった。
2000年7月にクリントン大統領がリチャードソンエネルギー長官に対し、アメリカ北東部に200万バレル(約31万7975キロリットル)の備蓄を創設するように指示した事に始まる。2012年10月にアメリカ東部の大部分が被災したハリケーン・サンディが発生したのを受けて、同年11月に連邦政府は200万ガロン(約757万824リットル)をニューヨーク州とニュージャージー州に開放した。